せっかく、データ集計したり分析したり、予測モデルを作って予測値をアウトプットしても、現場で活用されないことは多々あります。現場でのデータ活用の可能性の高め方は、色々なやり方があります。その中で、私が最重要だと感じている1つのやり方を説明します。今回は、「データ活用の可能性を高めるたった1つのこと」というお話しをします。
前回と前々回からの続きの話題になります。
【目次】
1.系統図法で問題を課題化し解決策を考える流れ
(1)何を見せればいいのか?
(2)どう動けばいいのか示さないと活用されない
2.「解決策」(アクション)とのつながりは最重要!
(1)ダメなケース
(2)良いケース
1.系統図法で問題を課題化し解決策を考える流れ
前回と前々回の復習です。前々回は、「データ分析上必須な2つのロジカルシンキング」というお話をさせて頂きました。この中で、系統図法で問題を課題化し解決策を考える流れを紹介しました。以下です。
【1】お困りごと(問題)の設定
【2】問題の要因(原因)の洗い出し
【3】原因(要因)の課題化
【4】課題の解決策の案出
【5】解決策のデータ活用の可能性検討
前回のお話しは【1】に関するものが中心で、【3】にも若干触れました。今回は【5】です。
この【5】の「解決策のデータ活用の可能性検討」は、非常に重要です。ここをクリアできないと、現場でデータ活用されることはありません。
(1)何を見せればいいのか?
先ほどお話ししましたが、データ集計したり分析したり、予測モデルを作って予測値をアウトプットしても、現場で活用されないことは多々あります。集計結果や分析結果、予測結果などのアウトプットを見せても、現場で見向きもされないの原因の1つは、見せているものとその手段が不適切なことです。
単なる集計結果を見せて大きな成果を上げることもあれば、ディープラーニングだの状態空間モデルだの小難しい数理モデルの結果を見せても全く成果のでないこともあります。データサイエンス技術の難易度と成果の大小は、必ずしも比例しません。それが現実です。
(2)どう動けばいいのか示さないと活用されない
結局のところ、現場が動けるようなアウトプットなのか、ということになります。集計結果や分析結果、予測結果などのアウトプットを見せたとき、次のような反応が返ってきたら、現場の動けるようなアウトプットではないということです。
「でっ?」
声に出てなくても、態度で示されたら終了です。相手の反応を見れば分かるので、活用されどうかどうかは瞬時に分かることでしょう。
2.「解決策」(アクション)とのつながりは最重要!
データから生成する「課題解決に役立つ情報」(予測値や集計値など)は、単に役立ちそうな情報を列挙すればいいというものではありません。その情報を使いどのようなアクションをとればいいのかまで考える必要があります。
新聞の折込チラシを配布しているある小売チェーンの例です。今までは例年通り昨年の同時期と同じ枚数だけチラシを配布しています。販促担当者は、チラシを増やすべきか減らすべきか、そして何枚にすべきか悩んでいました。そこでデータを活用し、チラシの枚数を決められないだろうかと考えました。
「解決策」(アクション)は「チラシのROIが最大になる枚数にする」です。
ここでは、チラシのROIは「チラシROI=(チラシによる増分売上―チラシ費用)÷チラシ費用」とします。
(1)ダメなケース
この企業では、社内の経営企画部門の中にデータサイエンス推進室が設立されたこともあり、データ分析の依頼をしました。出てきたのは、チラシと売上の時系列の推移を表したグラフや、平均値や分散といった統計的な指標、チラシと売上の関係性を見える化した散布図や相関係数という統計的な指標などでした。
実際、これだけではアクションを起こせませんでした。「課題解決に役立つ情報」(予測値や集計値など)と「解決策」(アクション)のつながりが明確でないためです。アクションの起こせない情報は、そもそも「課題解決に役立つ情報」(予測値や集計値など)とは...