◆ データ文化を醸成するための第一歩
データ文化のある会社もあれば、無い会社もあります。またデータ文化のある部署もあれば、無い部署もあります。少なくとも、データ文化が無い場所でデータ分析、ビッグデータ活用、データサイエンスと叫んだところで何も起こりません。しかし昨今、デジタルトランスフォーメーション、Society5.0、Connected Industriesと叫ばれる中「データ文化が無いからできません」では済まない時代に突入しました。
もちろん恩恵だけ受け取るという受け身でもいいのですが、その中で積極的に生きるという選択も素敵だと思います。積極的に生きる決意をした企業では、多くの場合スマート〇〇という表現がされているようです。とはいえ「千里の道も一歩から」という故事もあるように、データ文化が無い場所でどのようにしてデータ文化を根付かせる活動をすればいいのでしょうか。今回は「データ文化を醸成するための第一歩」というお話しをします。
1、データ分析への過剰な期待
データ分析の世界にデータマイニングというものがあります。「データをマイニング(採掘)する」ということで、データから新たな知見を獲得しようというデータ分析です。従来のデータ分析が統計学ベースの、仮説検証型だったのに対し、データマイニングは仮説発見型のデータ分析といわれています。「データを分析するぞ」と言ったとき、データ文化の無い会社や部署などでは、いきなり仮設発見型のデータマイニングを夢見ることが少なくありません。要するにデータ文化が無いがため、データ分析に対し過剰な期待を掛けてしまうのです。
2、無関心の壁
データ文化の無い会社や部署などでは、過剰な期待も起こりやすいですが、逆に無関心な状態も起こりやすいわけです。世間がどんなにビッグデータ、データサイエンス、AIと騒いでいても、我関せずと無関心でいるのです。データ分析を活用する現場で、この状態が起こるとデータ分析・活用は実現しません。面白いことに「我が社はデジタルトランス・フォーメーションするぞ」と叫んでいる経営の現場で、データ文化に無関心の場合もあります。
自分たちの経営の現場や担当している事業部門が、昔ながらの経験や勘のほか、度胸や過度なFace To Face(例:全員参加型の定例会がやたらと多いなど)がベースなのにも関わらず、デジタルトランス・フォーメーションなど実現できるわけありません。このようなケースは厄介です。表向き関心がありそうで、実は無関心であるという状態だからです。データ分析への過剰な期待の裏には、実はこの無関心の壁があるのだと思います。
多少なりとも関心があって調べれば、データマイニング的な仮説検証型のデータ分析が、非常に難解なことが分かるからです。要は「いきなりデータ分析を実現するぞ」といった感じで軽々しく口に出せません。もっと、地に足の着いた発言が発せられると思います。
3、発見前に確認レベルのデータ分析を
では「データ文化が無いと何もできないのか」というとそういうわけでもありません。できることはあります。私は幸運にも、新卒でデータ分析の専門部署に配属されました。諸先輩のやり口を見て、なるほどと感じた方法を今から紹介します。
データ文化の無い部署に対し、いきなり高度な何かをするのではなく、集計レベル(専門用語を使えば、記述統計・推測統計レベル)のデータ分析を実施します。それもデータマイニング的な仮説発見型の分析ではなく、仮説検証型のデータ分析です。多くの人が、もしかしてそうではないかと思っていることをデータを使い検証していくのです。
4、何回訪問すれば受注できる?
例えば、法人営業の活動の中心は訪問になるかと思います。なぜならば、訪問すればするほど受注しやすくなるという言い伝えがあるからです。言い伝えというか現場の営業の人は肌感覚として、このようなことは知っています。しかし多くの現場の営業パーソンは、何回訪問すればいいのかまでは分かっていません。ヒアリングすると2~3回で上手くいくときもあれば、10回以上訪問しても受注できないことがある、などあいまいな回答が返ってきます。これをデータを使って検証するのです。これが確認レベルのデータ分析です。例えば、3ヶ月で8回訪問すると受注率が80%を超えるが、それ以上訪問しても受注率は大きく...