中小製造業のDXへの取り組み(その1)

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【中小製造業のDXへの取り組み 連載へのリンク】

1、中小製造業の2つの事業パターン

2、受託製造サービス業へ脱皮する

3、経済産業省DX Selection 2022

今回は、3回の連載で、経済産業省DX Selection 2022 優良企業事例の分析からDXの方向性を解説します。

 

1.中小製造業の2つの事業パターン

中小製造業について、以下の4象限マップに当てはめ以下のように分類してみます。

 

DX

 

①大ロット、連続生産型企業

 ・人:限りなく省人化(無人化)を図る
 ・設備:24時間自動運転を行い、稼働率を最大限高める
 ・生産方法:平準化生産により在庫のムダ、作りすぎのムダを無くし効率的な生産を行う
 ・IOT:設備稼働データ取得、リアルタイム異常検知を行い、設備機械の安定動作に努める

 

②小ロット、間欠生産型企業

 ・人:熟練技能の高度化を図り、ニッチな顧客ニーズに応える
 ・モノ:多種多様・特殊加工などの要求に対応する
 ・設備:汎用機械を駆使してあらゆる加工方法に対応する
 ・生産方法:納期遵守、突発受注にも対応できる柔軟な生産体制を敷く   
 ・IOT:リアルタイム生産指示、生産進捗・納期管理などを目的とした現場情報を収集し、小ロット多品種に追従できる生産体制を敷く

 

2.DX「変革」 2つの方向性

DXとは、デジタル技術の活用によりビジネスモデルを変革し、企業にとって安定して利益が上がる仕組みを作ることです。

 

DXは、事業を見直すことによって、企業の競争力を維持または強化するという「変革」を達成します。そのための手段が、デジタル技術、ITの導入です。デジタル技術IT導入が目的、ゴールであってはならないのです。

 

また、デジタル技術導入で業務を効率化する業務改善活動とは全く次元が異なることを理解する必要があります。1項の分類から、中小製造業のDXの方向性を次のように分類します。

 

【DXの方向性1】

徹底した自働化、無人化工場実現により飛躍的に生産性を向上させるビジネスモデルを構築する。その手段として

・ロボット導入による人の作業の排除
・AI機能搭載検査機による検査の自働化
・IOTによる機械の稼働状況の監視と、停止時間の最小化による稼働率向上

 

【DXの方向性2】

熟練技能を武器に、新たな顧客獲得、付加価値の高い製品・サービスの提供を行うビジネスモデルを構築する。その手段として

・固有技術で差別化を図り、顧客の多種多様な要望に応えられる特殊技術を磨く
・突発受注対応、短納期対応可能な生産管理システム導入
・管理業務効率化、(IOT/IT導入)による生産性向上
・暗黙知の熟練技能を形式知化し、若手人材への継承を行う

 

中小製造業の多くが、小ロット、間欠生産企業が占めているため、方向性2のDX化を検討していく必要があります。しかし、現状は大手上場企業や、方向性1のDX化が先行しており、方向性2のDX化は進んでいません。

 

3.小ロット間欠生産を行っている受注加工工場の弱みと強み

まず方向性2の企業のDX化に当たり、その現状を整理します。

 

最初に、弱みとして

・ロット当たり数量が少なく、急な依頼がくる
・納期に追われている
・製品設計は客先指定のため変更できない
・様々な形状のワークがある

など、受注に当たっての厳しい条件があります。また

・進捗が把握できない、直前になって納期遅れが発覚する
・熟練者の経験・カンに頼っている
・基本的に人手が足りない
・工場が狭い、(機械やモノで埋まっている)

など、管理不備の問題、経営資源不足の問題も挙げられます。

 

一方強みとして

・様々な部品加工に対応できる
・その製品、その加工、生産に特化しているためノウハウが多い
・短納期対応ができる
・社長や現場長の判断で動きやすい、(判断が早い)

など、優れた熟練技能と、きめ細かい対応を得意としています。

 

4.小ロット生産工場のDX化の課題

以上のような中小製造業の現状を捉えた場合に、DX化に当たって、課題となる項目を整理すると、以下のようになります。

 

現場部門として

・段取替えが多いため、自動化システムの段替えに人手が取られ、生産性は上がらない
・手作業やカンによる作業が多く、自動化が難しい
・システムやソフトウェアの知識がなく、また人材育成する時間が取れない
・製品形状や工程を変更できないため、自動化システムの適用が難しい

などの、製造工程上、人材上の課題が上げられます。

 

また、間接部門として

・多品種少量生産に適した生産管理システムがない
・EXCEL、紙ベースの管理が行われている、(受注、生産指示、外注指示 納期管理)な...

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【中小製造業のDXへの取り組み 連載へのリンク】

1、中小製造業の2つの事業パターン

2、受託製造サービス業へ脱皮する

3、経済産業省DX Selection 2022

今回は、3回の連載で、経済産業省DX Selection 2022 優良企業事例の分析からDXの方向性を解説します。

 

1.中小製造業の2つの事業パターン

中小製造業について、以下の4象限マップに当てはめ以下のように分類してみます。

 

DX

 

①大ロット、連続生産型企業

 ・人:限りなく省人化(無人化)を図る
 ・設備:24時間自動運転を行い、稼働率を最大限高める
 ・生産方法:平準化生産により在庫のムダ、作りすぎのムダを無くし効率的な生産を行う
 ・IOT:設備稼働データ取得、リアルタイム異常検知を行い、設備機械の安定動作に努める

 

②小ロット、間欠生産型企業

 ・人:熟練技能の高度化を図り、ニッチな顧客ニーズに応える
 ・モノ:多種多様・特殊加工などの要求に対応する
 ・設備:汎用機械を駆使してあらゆる加工方法に対応する
 ・生産方法:納期遵守、突発受注にも対応できる柔軟な生産体制を敷く   
 ・IOT:リアルタイム生産指示、生産進捗・納期管理などを目的とした現場情報を収集し、小ロット多品種に追従できる生産体制を敷く

 

2.DX「変革」 2つの方向性

DXとは、デジタル技術の活用によりビジネスモデルを変革し、企業にとって安定して利益が上がる仕組みを作ることです。

 

DXは、事業を見直すことによって、企業の競争力を維持または強化するという「変革」を達成します。そのための手段が、デジタル技術、ITの導入です。デジタル技術IT導入が目的、ゴールであってはならないのです。

 

また、デジタル技術導入で業務を効率化する業務改善活動とは全く次元が異なることを理解する必要があります。1項の分類から、中小製造業のDXの方向性を次のように分類します。

 

【DXの方向性1】

徹底した自働化、無人化工場実現により飛躍的に生産性を向上させるビジネスモデルを構築する。その手段として

・ロボット導入による人の作業の排除
・AI機能搭載検査機による検査の自働化
・IOTによる機械の稼働状況の監視と、停止時間の最小化による稼働率向上

 

【DXの方向性2】

熟練技能を武器に、新たな顧客獲得、付加価値の高い製品・サービスの提供を行うビジネスモデルを構築する。その手段として

・固有技術で差別化を図り、顧客の多種多様な要望に応えられる特殊技術を磨く
・突発受注対応、短納期対応可能な生産管理システム導入
・管理業務効率化、(IOT/IT導入)による生産性向上
・暗黙知の熟練技能を形式知化し、若手人材への継承を行う

 

中小製造業の多くが、小ロット、間欠生産企業が占めているため、方向性2のDX化を検討していく必要があります。しかし、現状は大手上場企業や、方向性1のDX化が先行しており、方向性2のDX化は進んでいません。

 

3.小ロット間欠生産を行っている受注加工工場の弱みと強み

まず方向性2の企業のDX化に当たり、その現状を整理します。

 

最初に、弱みとして

・ロット当たり数量が少なく、急な依頼がくる
・納期に追われている
・製品設計は客先指定のため変更できない
・様々な形状のワークがある

など、受注に当たっての厳しい条件があります。また

・進捗が把握できない、直前になって納期遅れが発覚する
・熟練者の経験・カンに頼っている
・基本的に人手が足りない
・工場が狭い、(機械やモノで埋まっている)

など、管理不備の問題、経営資源不足の問題も挙げられます。

 

一方強みとして

・様々な部品加工に対応できる
・その製品、その加工、生産に特化しているためノウハウが多い
・短納期対応ができる
・社長や現場長の判断で動きやすい、(判断が早い)

など、優れた熟練技能と、きめ細かい対応を得意としています。

 

4.小ロット生産工場のDX化の課題

以上のような中小製造業の現状を捉えた場合に、DX化に当たって、課題となる項目を整理すると、以下のようになります。

 

現場部門として

・段取替えが多いため、自動化システムの段替えに人手が取られ、生産性は上がらない
・手作業やカンによる作業が多く、自動化が難しい
・システムやソフトウェアの知識がなく、また人材育成する時間が取れない
・製品形状や工程を変更できないため、自動化システムの適用が難しい

などの、製造工程上、人材上の課題が上げられます。

 

また、間接部門として

・多品種少量生産に適した生産管理システムがない
・EXCEL、紙ベースの管理が行われている、(受注、生産指示、外注指示 納期管理)など
・生産の実態がリアルタイムでつかめない、(遅れ、仕掛かり在庫、不良)

など工程管理、生産管理上の課題が上げられます。

 

また経営を見ると

・機器・システム導入の目的、達成目標、得たい効果を明確にしていない(DXビジョンが描けない)
・機器・システムは高額で、導入しても償却ができない、(費用対効果)
・経営陣が自社の現場での課題を把握できていない
・自社の要求仕様を明確にできないため、ITシステム等導入後にトラブルとなる

など、DX化に当たって、何が課題なのか、またどのようにDX化を進めていけば良いのか、方向性がつかめないという実態が浮かび上がってきます。では、人材、資金など経営資源の乏しい中小製造業が下請け体質から脱皮しDX化を遂げるにはどうすれば良いか検討していきます。

 

次回は、5.受託製造サービス業へ脱皮する。から解説を続けます。

 

 

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この記事の著者

濱田 金男

製造業に従事して50年、新製品開発設計から製造技術、品質管理、海外生産まで、あらゆる業務に従事した経験を基に、現場目線で業務改革・経営改革・意識改革支援に取り組んでいます。

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