レオロジーを深く知る(その4)簡単な数学と物理的事項

 

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第2章 簡単な数学と物理的事項

第2章では「レオロジーをはじめる前に」として、レオロジーの理解に向けて必要な下準備を進めていきます。数学および物理の基本的な考え方に焦点を当て、読者がついていけるように心がけます。以下に、この章で取り扱う要点を簡潔にまとめてみました。

【この章で取り上げる内容】

• 数学的な事項の確認
 – 「関数」の基本的な理解
 – 事象をシンプルに考えるときに欠かせない「線型性」
• 物理的な視点に必要になること
 – 物理モデルと線型性
 – 物理モデルを理解するための「量」「次元」「単位」

 

1. 数学的な事項の確認から

具体的なレオロジーの議論に入る前に、今後の話に不可欠な数学の基本を振り返っていきましょう。それほど難しい内容ではありません。中学から高校の基礎的な事柄に戻り、レオロジー理解に欠かせない基本を再確認していただくことが目的です。具体的には、「関数と線型性」に焦点を当て、分かりやすく説明しますので、少しずつイメージを明確にしていくようにしましょう。

 

1.1 関数について

1.1.1 直感的理解

関数の概念を直感的に把握しましょう。関数は、変数xyがあり、入力xを与えるとそれに基づいて出力yが得られるというルールです。関数は入力を変換する装置であり、入力と出力の関係性を示しています。

図1. 関数のイメージ

一般に、関数は英語の function の頭文字を使って fで表され、使用する変数がカッコの中に示されます。

 

1.1.2 関数と写像

関数は、数の集合に値を対応させる一種の写像と見なすこともできます。定義域と呼ばれる左の集合から値域となる右の集合への射影が、関数の本質です。

図2. 関数と写像

 

1.1.3 グラフとは

グラフは、入力と出力の関係を平面図に示したもので、その関係を視覚的に理解しやすくしたものです。具体的には、入力xに対応して決まる出力の点を平面上にプロットし、それを連続的に線で結んだものがグラフです。

図3. 関数とグラフ

 

図2 に示した集合間の写像を 2 次元のグラフに表すと、図 3 のようになります。グラフに表した関数の形を見ることで、入力と出力との関係を直感的に理解できます。

 

1.2 線型という意味を理解しよう

1.2.1 線型とは?

線型性を直感的にイメージすると、グラフに表した時に原点を通る直線として現れる性質です。数学的に正確に説明すると、関数などの演算 fが以下の 2 つの性質を満たす場合、 fは線型性を持つと言います。線型性を表す性質は以下の通りです。

• 加法性:任意の x, y に対して

• 斉次性:任意の x, a に対して

線型性を示す関数は多く存在し、代表的なものは以下のような一次方程式です。

これは、入力が倍になると出力も倍になる比例の関係を表しています。また、加法性は小学校の応用問題である旅人算にも応用されます。

 

1.2.2 線型性の意味

線型性が成立することで何が嬉しいのでしょうか。小学校レベルの簡単な問題を考えてみましょう。「水道の栓を開けて、浴槽に水を溜めています。5 分間流して 100L の水が溜まりました。

 

このとき、1 分間流したときには何 L 溜まっていたでしょう?」と聞かれたとすると、比例の関係から 1 分 ×100L/5 分=20L と答えることができ、これは、過去を推定していることになります。同様に、「10 分では、何 L 溜まるでしょう?」では、未来のことを予測できます。

 

また、「浴槽に 2 つの蛇口から水を溜めていきます。A という蛇口からは 1 分間で 20 L、B という蛇口からは 5 分間で 150 L の水を貯めることができます。両方の蛇口から同時に水を溜めたとき、10 ...

分間では何 L の水が溜まるでしょう?」というような問題でも、加法性と斉次性を利用すれば簡単に解くことができます。

 

すなわち、線型性が成立する(と仮定する)ことで、事象を重ね合わせながら過去や未来の値を決めることが容易になります。線型性の意味をまとめると以下のようになります。

• 比例の関係を利用して、
 – 過去を推定。
 – 未来を予測。
• 加法性と斉次性を利用して、
 – 事象を重ね合わせて、推定や予測。

 

次回に続きます。

 

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