前回のレオロジーを深く知る(その6)物質の三態とその由来に続けて解説します。
1.2.3 粒子間に働く力は
図 6: ポテンシャルの微分で力を導出
このとき、ポテンシャルが極小値となるところ(r≒1.12σ)において、二粒子間に働く力が 0 となっています。2 つの粒子の互いの距離がこの値になるところが安定な位置であり、ポテンシャルの井戸と呼ばれます。この力は、粒子間の距離に応じて変化し、粒子の安定な配置を維持します。粒子間の力は、近接時には斥力が働き、離れすぎると引力が働くことで、粒子間の距離が安定な値に保たれます。このポテンシャルから導かれる力は、粒子の安定な配置をもたらし、固体の特性を維持する役割を果たします。
1.2.4 多体問題として考えると
結晶のモデルでは、粒子の相互作用は二体間に限るわけではなく、多数の粒子が相互作用を生じています。この多体問題をきちんと解くことは大変なのですが、簡略化して安定状態を考えることもそれほど的外れではありません。多体の相互作用を簡略化して、二体間の相互作用の単純な重ね合わせに基づくと仮定しましょう。このとき、多体の粒子が二体間相互作用の安定距離の近傍で摂動することになります。
図 7: 二粒子間に働く力
図 8: 多体での安定状態
1.3 固体のミクロなイメージ
二体間のポテンシャルを用いることで、結晶モデルとして固体を形成する粒子の振る舞いの理解が少しだけ進みました。ここでは、分子動力学シミュレーションという方法を使って、もう少し直感的なイメージを膨らましてみましょう。なお、分子動力学シミュレーションの説明は以下にまとめた程度に控え、詳細は割愛します。
1.3.1 分子動力学シミュレーションとは
• 粒子の描像で物理現象をシミュレートする方法
• それぞれの粒子の運動は、ニュートン力学にしたがって算出する。
• 系の温度が粒子の揺動となる。
• 粒子の間に適切なポテンシャル(今回は、LJポテンシャル)を設定する。
1.3.2 固体のシミュレーション
粒子間相互作用としてLJポテンシャルを設定して、系を十分に低温にして分子動力学シミュレーションを行った結果を図 9 に示しました。これは、固体における粒子の振る舞いをシミュレートしたことになります。
• シミュレーション温度:T=0.1(十分に低温な状態に相当)
• 面心立方になるように、初期の粒子を配置。
• 分子動力学シミュレーションを実施。
図 9: 固体の分子動力学シミュレーション
• 動的な運動を見ても、粒...
このシミュレーションの結果から、十分に低温とした場合には粒子の運動は抑制され、ポテンシャルの井戸の底に対応する場所でわずかに摂動していることが確認できます。
次回に続きます。
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