1. はじめに
中小企業が抱える喫緊の課題の最後は「熟練社員退職で技術知識の喪失」に対する解決手段です。一般的には、定年延長制度があるのですが、定年を迎える社員の立場、事情、希望と待遇の点で一律には行かず、持てる技術・知識を生かす形の受け入れが難しいのが現状です。この課題に対する解決手段が、次項でご説明する「FSF制度」ですが、それが成立するための前提条件も合わせてご説明しますので参考にして頂ければと思います。
2. 熟練定年者の内訳と対応
定年を迎えた熟練社員は、熟練内容によって次の四種類に分かれます。
- ①作業者としての熟練者
- ②管理職としての熟練者
- ③特殊技能者としての熟練者
- ④技術職者としての熟練者
一般的な定年延長制度での対応では、①と②は問題ないのですが、③と④については、持てる技術を活かすことが出来ないケースが出てきますので、別途対応が必要になるのですが、それが次項でご説明する「FSF制度」です。
3. 「FSF(フェロー・サポーター・フレンド)制度」とは
定年者、もしくは会社側の事情により、一般的な定年延長制度での受け入れが出来ないケースに対する対応制度で、下記3種類の受け入れ態勢を準備します。
1)フェロー
持てる技能、技術が必要となった時に就業する立場で、それ以外の時は、①又は②の立場で就業もしくは自宅待機。
2)サポーター
プロジェクトチームメンバーとして就業する立場で、それ以外の時は、上に同じ。
3)フレンド
立場はサポーターと同じだが、社外のメンバー
それぞれの名前は、相応しい名前が見当たらず作り出したものですので、会社によってよりふさわしい呼び名がある場合はそちらを採用されればよいと思います。ただ、この制度は、単独で存在しても有効な機能を果たすことは出来ず、次項でご説明する企業としての総合的組織「100年企業を支える組織」の一環として初めて機能するものであるという認識が必要です。
4. 「100年企業を支える組織」とは
企業の理念経営基本体系は、トップ事象(企業経営の目的)を展開することによって「理念経営基本体系」と言う形でご説明しましたが、その基本体系を的確に推進するための組織が図24-1 理念経営基本体系推進組織で、FSF制度の位置付けをご理解頂けると思います。
図24-1 理念経営基本体系推進組織
5. おわりに
この一連の発言のベースにあるテーマは、筆者のライフワークテーマ「100年企業を目指す中小企業の理念経営体系」なんですが、鍵を握るのが「100年企業」、即ち、企業の永続性です。その100年企業を目指すには、“現業の維持・深化”と“新規事業の開発”と言う両輪が必要なのですが、その双方を支えるのが、長年培ってきたその企業ならではの独自のコア・コンピタンスであり、それを体現している人材の活躍の場としてこの「FSF制度」を、各社の事情に合わせてご活用願い、成果につなげて頂ければと思います。
【連載終了のご挨拶】
2022年10月から連載の「快年童子の豆鉄砲」が今回で終了することになりましたので、終了に際してのご挨拶を申し上げる次第です。
筆者は、現役時代、大企業の多角化経営の一環として立ち上げた中小企業規模の一部門の成長をつぶさに経験する中で、世の中に存在する解決手段は、中小企業規模のマンパワーではとても手に負えないことから、常に手元のマンパワーで解決できる手段を開発して来て、その内容を縁あってご支援した中小企業2社にご紹介して好結果を享受出来ましたので、何とかこの内容を、現役中の皆さんにご紹介する手談を探していたところ、このものコムサイトを知り、賛同を得て発言させて頂いたのです。
その内容は、筆者なりに認識している「中小企業が抱える喫緊の課題12」に対する課題発生要因17それぞれに対する解決手段(①~⑰)を基本的な考え方を付して提示した上で、掲載場所を明...
表2-1 中小企業が抱える喫緊の課題12と課題発生要因17に対する解決策の概要