状態図から見る偏析:金属材料基礎講座(その159) わかりやすく解説

 

◆ 状態図から見る偏析

合金を液相から冷却すると状態図に従って凝固し、金属組織を形成します。状態図とは平衡状態を表します。これは各温度、各組成で原子が拡散するのに十分な時間がある時に、状態図通りの温度や組成になることです。

 

しかし、実際の凝固は平衡状態よりも早く行われるため、偏析が起こり状態図からのずれが生じます。液相から固相の凝固を平衡凝固と実際の凝固の比較を下図に示します。

 

図.平衡凝固と実際の凝固の比較

 

温度1から凝固が始まります。この時の固相の組成はどちらもaです。そして温度2になると、平衡凝固では固相の中で原子の拡散が起こり、固相全体の組成がbとなります。

 

しかし、実際の凝固では原子の拡散が十分に行われないため、温度1で出来た組成aの固相がそのまま残り、その周りにaよりもB元素が多いbが凝固します。

 

そして固相の平均組成はb’となり状態図からずれます。以下同様に凝固が進行し、平衡凝固は温度3で完了しますが、実際の凝固では温度4にて凝固が完了します。実際の凝固では上図のように固相中の組成が異なる偏析という現象が起きます。そして状態図としては固相線がより低濃度側にシフトします。

 

偏析による状態図のシフトの例を下図に示します。Al-Cuのような共晶型状態図の共晶線付近の組成sの合金を凝固する時を考えます。平衡凝固であれば、共晶反応は起こらずα固溶体となり、その後溶解度線に従ってβの析出がおこり凝固が完了します。

 

しかし、実際の凝固では偏析や状態図のシフトがおこるため、(2)の青線に状態図がシフトするため共晶反応が起こります。これはAl-Cu系の他にマグネシウム合金のAZ91系などにもみられる現象です。

 

図.共晶型状態図の偏析によるずれ

 

次回に続きます。

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