1. ヒューム・ロザリーの法則
2元型合金の溶解度や金属間化合物についてウイリアム・ヒューム=ロザリーが発表した法則をヒューム・ロザリーの法則と言います。内容は4項目あります。
- 原子容積効果
- 電子濃度による固溶限
- 化学的親和力効果
- 相対原子価効果
原子容積効果とは原子の大きさについてです。元の金属原子と固溶する原子の大きさが約15%以内になると固溶限が大きくなるというものです。そのため原子の大きさが15%以上大きくなると固溶限は小さくなります。大きさの近い原子は固溶しやすいと言えます。
電子濃度による固溶限とは価電子の数と原子の数の比率についてです。これは固溶体よりも金属間化合物に注目して考えます。金属間化合物にも固溶限のある化合物はあります。その時の価数/原子数の比率です。値としては価数/原子数=1.4程度まで固溶できます。そのため、価数が増えると固溶限が少なくなっていきます。
化学的親和力効果とは電気陰性度に関する法則です。電気陰性度とは原子が電子を引き付ける力のことです。電気陰性度は周期表の右上ほど大きく、左下ほど小さくなります。なお、電気陰性度の最大値はフッ素です。電気陰性度の差が大きいと固溶体ではなく金属間化合物を形成しやすくなります。
相対原子価効果とは原子価の大小によって固溶限が変わることです。相対的原子価効果以外の条件を満たしている時に原子価の小さい金属の中に原子価の大きい金属は固溶しやすいですが、反対に原子価の大きい金属の中に原子価の小さい金属はあまり固溶しないことです。
2. スピノーダル分解
全率固溶型のような固溶限が大きい状態図では温度が低下すると1相から2相に分離する現象が起こります。この状態図を模式的に下図に示します。下図(1)の組成Cの合金を考えます。温度T0ではα単相ですが、温度T1になるとαのなかからB濃度の高いα’が析出します。温度が下がりT2になるとαとα’はそれぞれA1からA2、B1からB2に濃度が変化します。そして室温まで温度が下がり、溶解度に従ってαとα’が形成されます。2相分離が始まる点を臨界点と言います。
2相分離の過程はスピノーダル分解とバイノーダル領域という2種類があります。下図(2)の内側の点線内がスピノーダル分解の領域であり、点線と実線の間がバイノーダル領域となります。スピノーダル分解とは通常の核生成理論ではなく、自発的にわずかな濃度変化が連続的に起こり2相に分離することです。バイノーダル領域では核形成-成長型の分離が起きるとされています。
図.スピノーダル分解の模式図
次回に続きます。