析出がある共晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その167) わかりやすく解説 

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析出がある共晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その167) わかりやすく解説 

 

◆ 析出がある共晶組織の量的計算

共晶反応を起こしてから室温に温度が低下する時に溶解度の減少が多くの状態図に見られます。この時の析出量を計算します。共晶反応の状態図の模式図を下図に示します。T合金(A-50%B合金)の凝固、冷却について考えます。温度T1(共晶反応直上)までは全て液相Lの状態です。温度T2(共晶反応直下)になると共晶反応が起こり液相Lから共晶αと共晶βが晶出します。共晶反応におけるαの比率はVT、βの比率はTS、分母はVSで表されます。共晶α(α1とします)と共晶β(β1とします)の量は式(1)、(2)となります。

 

析出がある共晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その167) わかりやすく解説 

図.共晶反応の状態図の模式図

 

温度がT2からT3(室温)に低下すると組織上は共晶αからβの析出、共晶βからαの析出が起こります。組織図では共晶α(赤丸)からβの析出を白い点、共晶β(白地)からαの析出を赤い点として表しています。共晶βからのα析出量はVを起点としたてこの原理となります。分子はYV、分母はYUこれに共晶βの量をかけて析出αを計算します。これが式(3)です。そして、室温における共晶βの量は析出αの量を引きます。これを式(4)で表します。これが室温における共晶βの量です。

 

同様に共晶αからβの析出量も計算します。β析出量はSを起点としたてこの原理となります。分子はSU、分母はYUです。これに共晶αの量をかけて析出βを計算します。そして析出βの量を引いて室温の共晶αの量を計算します。これを式(5)、(6)に示します。

 

最終的なαは共晶αと析出αの2種類です。βも同様です。それぞれを合計するとα、βの総量が求められます。これを式(7)、(8)に示します。また検算としてT3におけるα、βをT組成から直接てこの原理で計算すると式(9)~(12)となります。この結果が等しいことが検算成功です。

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次回に続きます。

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析出がある共晶組織の量的計算:金属材料基礎講座(その167) わかりやすく解説 

 

◆ 析出がある共晶組織の量的計算

共晶反応を起こしてから室温に温度が低下する時に溶解度の減少が多くの状態図に見られます。この時の析出量を計算します。共晶反応の状態図の模式図を下図に示します。T合金(A-50%B合金)の凝固、冷却について考えます。温度T1(共晶反応直上)までは全て液相Lの状態です。温度T2(共晶反応直下)になると共晶反応が起こり液相Lから共晶αと共晶βが晶出します。共晶反応におけるαの比率はVT、βの比率はTS、分母はVSで表されます。共晶α(α1とします)と共晶β(β1とします)の量は式(1)、(2)となります。

 

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図.共晶反応の状態図の模式図

 

温度がT2からT3(室温)に低下すると組織上は共晶αからβの析出、共晶βからαの析出が起こります。組織図では共晶α(赤丸)からβの析出を白い点、共晶β(白地)からαの析出を赤い点として表しています。共晶βからのα析出量はVを起点としたてこの原理となります。分子はYV、分母はYUこれに共晶βの量をかけて析出αを計算します。これが式(3)です。そして、室温における共晶βの量は析出αの量を引きます。これを式(4)で表します。これが室温における共晶βの量です。

 

同様に共晶αからβの析出量も計算します。β析出量はSを起点としたてこの原理となります。分子はSU、分母はYUです。これに共晶αの量をかけて析出βを計算します。そして析出βの量を引いて室温の共晶αの量を計算します。これを式(5)、(6)に示します。

 

最終的なαは共晶αと析出αの2種類です。βも同様です。それぞれを合計するとα、βの総量が求められます。これを式(7)、(8)に示します。また検算としてT3におけるα、βをT組成から直接てこの原理で計算すると式(9)~(12)となります。この結果が等しいことが検算成功です。

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次回に続きます。

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この記事の著者

福﨑 昌宏

金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

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