データで表層課題を見える化する:データ分析講座(その338)

【目次】

    仕事で難題に直面したとき、何かしら課題解決フレームワークを知っていると便利です。何をすべきか分からない状態から、少し解放されます。特に、前回のソラ・アメ・カサとデータサイエンスによる課題解決:データ分析講座(その337)にある「ソラ・アメ・カサ」フレームワークを活用することで、表層課題から深層課題までを的確に捉え、データ駆動の手法でこれらの課題を見える化し、解決に繋げるステップを探ることができます。今回は、このフレームワークとデータの役割、及びそれを最大限に活用するための手法やツールに焦点を当てて解説します。

    【記事要約】

    「ソラ・アメ・カサ」フレームワーク: 課題解決のステップを体系的に捉えるフレームワーク。今回はソラ×データ活用に焦点をあてました。表層課題と深層課題: 表層課題は即座に認識できるものの、真の解決策を見つけるには、背後に隠れる深層課題を探る必要があります。

    課題解決に向けての、より実践的な次のアクションへのつなげ方です。

    データは課題解決の強力な味方ですが、その活用方法や解釈が鍵となります。

     

    1. 表層課題の特性とその重要性

    課題解決の初めのステップ「ソラ」において中心的な役割を果たすのが「表層課題」です。しかし、この表層課題が具体的に何を指すのか、また深層課題との違いや関連性について理解していないと、適切な解決策を導き出すことが難しくなります。表層課題の特性とその重要性について掘り下げていきます。

    (1)表層課題とは何か

    表層課題は、文字通り「表面に見える課題」を指します。日常の業務やプロジェクト進行中に顕在化するトラブルや課題、関係者からのフィードバックや苦情など、目の前に現れる具体的な問題点がこれに該当します。しかし、これらの課題背後には、さらに深く隠れた原因や要因が存在することが多いため、これだけを解消するだけでは根本的な解決にはつながりません。

     

    (2)表層課題と深層課題の違いと関連性

    表層課題は、事象の「現れ」や「結果」として捉えられます。一方、深層課題はその背後に潜む「原因」や「根本的な問題」を指します。例えば、業務効率の低下(表層課題)の背後には、不適切な業務フローの設計やツールの不備(深層課題)が存在する可能性があります。この2つの課題は、密接な関連性を持ちます。表層課題を解消するためには、深層課題の特定と解決が必要となります。しかし、深層課題を特定するためには、まず表層課題を正確に理解することが前提となります。

     

    (3)表層課題を明確にすることの意義

    表層課題を明確にすることで、以下のようなメリットが得られます。

    さらに、表層課題を明確にすることで、問題の実態や緊急性、影響範囲を評価することが可能となり、課題解決の方向性を効果的に決定することができます。

     

    2. データの役割

    現代のビジネス環境では、データは課題解決の鍵となる情報源として不可欠です。表層課題の明確化と見える化において、データがどのような役割を果たすのかを見ていきます。

    (1)データが持つ情報の価値

    データは、事象や状態を数値やカテゴリーとして具体的に表現した情報です。そのため、データを適切に解析・評価することで、以下のような価値を得ることができます。

     

    (2)表層課題の特定におけるデータの活用方法

    表層課題を明確にするために、データを以下のように活用することができます。

    例えば、業務効率の低下という表層課題がある場合、各ステップの所要時間や作業ミスの発生率といったデータを収集・分析することで、どの部分に時間がかかっているのか、どのプロセスでミスが多発しているのかを特定することができます。

     

    3. データの収集方法

    データを効果的に活用するためには、適切なデータの収集が欠かせません。データ収集の方法、その際の注意点、及び表層課題に関連するデータソースについて詳しく解説します。

    (1)どのようなデータを収集すべきか

    データ収集を行う前に、以下のポイントを明確にしておくと良いでしょう。

     

    (2)表層課題に関連するデータソース

    表層課題を解明するためのデータソースは多岐にわたります。以下は、一般的なデータソースの例です。

     

    (3)データ収集の際の注意点

    データ収集を行う際の主な注意点は以下の通りです。

    例えば、リアルタイムの情報が必要な場合はストリーミングデータの収集を、定期的な報告が必要な場合はバッチ処理を選ぶなど、状況に合わせて方法を選びます。

     

    4. データ分析とビジュアル化

    データを効果的に活用するためには、収集したデータを適切に分析し、その結果をわかりやすく可視化することが必要です。データの分析ツール、ビジュアル化の方法、及びそのベストプラクティスについて解説します。

    (1)データ分析ツールや手法の紹介

    データ解析のためのツールや手法は多岐にわたりますが、以下は一般的なものです。

     

    (2)ビジュアル化の方法とその効果

    ビジュアル化の効果は明白で、複雑なデータや情報を一目で理解できる形にすることで、意思決定の速度や精度を高めることができます。

     

    (3)ダッシュボードやグラフの作成ポイント

     

    5. データを通したコミュニケーション

    データの分析やビジュアル化が完了した後、次のステップは関係者との認識を統一することです。データを活用した説得の方法や、データの提示・共有の最適な手法、そして認識統一のためのワークショップやセッションの提案について見ていきます。

    (1)データを用いた説得の方法

     

    (2)データの提示や共有の最適な方法

    書としてまとめる場合に使用します。

     

    (3)認識統一のためのワークショップやセッションの提案

    • データ解釈のワークショップ: 関係者が集まり、共同でデータを解釈し、その意味を討議するセッションを開催します。
    • フィードバックセッション: データの提示後、関係者からのフィードバックや質問を受け付け、それに応じてデータの見直しや再分析を行います。
    • ロールプレイ: 複数の視点からデータを考えるため、関係者が異なる役割を担当してデータについてディスカッションするアクティビティを実施します。

     

    6. ケーススタディ

    実際にデータを使ってどのように表層課題を明確にし、見える化してきたのか。具体的な事例をもとに、幾つか紹介します。

    【事例1: 飲食業界における客足の減少】

    とある飲食店が、客足の減少を懸念していた。月間の客数が前年同月比で10%の減少を示していた。

    データの活用
    POSシステムからのデータや、近隣のイベントや天気などの外部データを収集。これらのデータをもとに、来店のピークや減少のパターンを分析。

    見える化の結果
    週末や天気の良い日に客足が増える傾向が見られた一方、近隣での大規模なイベントが影響して客足が減少していることが明らかとなった。

    学び
    データにより、単なる直感や予感ではなく、具体的な影響要因を明確にすることができた。イベントスケジュールを事前にチェックし、プロモーション活動を計画することで対策を講じることが可能となった。

     

    【事例2: 製造業における製品の欠陥率の増加】

    製品の最終検査において、欠陥率が徐々に上昇しているとの報告があった。

    データの活用
    製造ラインのセンサーデータや、従業員の作業ログ、部品の購入データなどを分析。

    見える化の結果
    特定の部品の供給元が変わってから欠陥率が上昇していることが判明。さらに、その部品の取り扱いに関する作業ログにも問題が見られた。

    学び
    外部の要因だけでなく、内部の作業プロセスにも注意を払う必要があることが分かった。部品の購入先の見直しや、作業の標準化を行うことで欠陥率を下げる取り組みを開始。

     

    次回に続きます。

     

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