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ここのところ半導体製造の分野が盛り上がってきました。しかも、ナノメートルの世界を目指しています。しかしながら、その土台、基盤がしっかりしているのか、クリーン化の基礎をきちんと持ち合わせているかと言うことを心配しています。何事も基本、基礎がしっかりしていて、その上で高いレベルへの挑戦が可能だと考えています。行き詰まった時、基本に帰れと言いますが、その基本はどこなのかと言うことです。
高いレベルを目指すとき、開発、設計、技術がしっかりしていても、それを具現化する現場の力は追いついているでしょうか。良く、理論的には可能だが・・・と言う言葉も聞きます。ものが作れなければ、現場との乖離は大きく、理論、理屈の話で終わってしまいます。いずれの企業の成功をも願いながら、桁違いの投資額ですから、損益分岐点はどの当たりになるのだろうか。企業間の差は顕著に出るのかなど気になります。その危機感を感じているので、クリーン化の基礎の部分に立ち戻り説明していきます。
1. 継続のための仕掛け イベントの企画、実施について
クリーン化活動は、経営層の号令や命令だけでは維持、継続しません。そればかりか、管理監督者が興味を示さなくなると、衰退してしまいます。清掃の継続は面白いことではないので、本来の目的や意味を本当に理解していないと、面倒なことは手を抜きやすくなります。私も長い間現場を見て来ましたのでよくわかります。一旦、活動が途切れたり、止まってしまうと、その活動はなかなか元には戻りません。
何でもそうですが、止まったものを動かそうとするときは、相当なエネルギーが必要です。それでもなかなか動かないか、全く動かないことがあります。イベントの企画、実施は、活動が途切れる前に兆候を掴み、元の状態に引き戻す、あるいはさらに活発な活動にしていくための手段です。上図の5.継続のための仕掛けについて解説します。
クリーン化活動が定着しても毎日同じことの繰り返しになると、手抜きや意識低下が起きるのです。この状態を放っておくと、徐々に環境が悪くなり、品質、歩留まりが低下します。これは緩やかに変化していくので、気が付いた時には深刻な状態になっていたという場合があります。徐々に環境が悪くなると、何が、いつから変化したのか、その原因が掴めないことがあります。
そこで闇雲にあちこち突いてみても、真因の究明には届かず、適切な対応ができないのです。このような事態になる前に管理、監督者は日々良く現場を見て、活動に弱さを感じたら、そのタイミ...
先輩が後輩に伝えるのには限度、限界があります。イベントに参加しながら理論や理屈だけでなく、体験、経験から身に着け継承していくことも大切です。様々な会社から現場診断、指導、アドバイスを依頼され、訪問すると、依頼してくるところほど、色々な工夫やアイデアがみられます。人の知恵は無限だと考えさせられます。それでもさらに新たな考え方を求め、ものづくり基盤を高めていこうという気概を感じます。そのようになると、こちらも負けてはいけないと思い、さらに熱の入った指導になります。では、その一部を紹介しましょう。
(1) イベントの企画、実施について
・前回の クリーン化について(その158)クリーン化の基礎(その20)の続きです。
【活動板コンクール】
クリーン化活動は、活動事例や改善事例、品質レベルの推移など、様々な指標を掲示しておきましょう。1つだけではなく、幾つかの複合の成果と言うことが大きいでしょう。成果主義の時代ですが、単に数字、データだけでは表現できないメンバーの達成感などは評価できないでしょう。底に茶取り着くまでの苦労、葛藤など裏に潜んでいることも評価してやりたいものです。それを管理職、例えば課長以上、会社の規模によっては経営者にも声を掛け、コンクールの審査員をお願いした例を紹介します。経営者、管理職を意図的に現場に引き込んだ例です。
活動してきたメンバーは、活動そのものを現場でアピールできる機会になります。また上層部の方に見てもらうために、分かりやすい、綺麗な表示にしようと努力しますね。依頼された審査員は、何を評価して良いのか分からないのでは困るので、活動内容を理解しようとするでしょうし、活動板の前で発表する機会、そこで褒められると人も育ちます。そして、何よりも活動を理解して貰えることが大きいです。現場対経営者、管理職ではなく、相互に信頼を深める機会です。
上層部から、品質、歩留まりを向上させなさい、という一方的な号令、命令よりも、現場に足を運び、実態を把握する効果は大きいのです。もちろん褒められれば、更に活発な活動に繋がるでしょう。今まで大きなイベント例を紹介してきましたが、いろいろな会社を訪問すると、よくもこんなことを考えたなあと思うほど様々なイベントが催されています。それだけ上層部や管理監督者が、活動の継続の必要性や重要性を認識しているのでしょう。
【インドネシアのファイルの背表紙の例】
これは、インドネシアのある工場のファイル棚の写真です。基準、標準など様々な書類がファイルされ、保管されています。最初はこのような表示がなく、ファイルを取り出しても、戻す場所がまちまちで、探す時間もかかっていた。自分が困っても後の人のことは考えず、いい加減に戻してしまうのです。上司からの指示がない限り、勝手にルールを変えてしまうことはできませんから、指示があるまでは同じことが繰り返されます。
現場の人からの不満だけが増幅しているわけです。そこで職場ごとに競わせた結果、このようなアイデアが出て来ました。不満や愚痴を言う、人ごと、よそ事だったものを、自分たちがどうしたいかという当事者意識に変えた例ですね。職場ごとに発想が違うのですが、戻す場所や、現在使用中のものが明確にわかります。
現地の作業者が考え、作成したものですが、これではいい加減に戻すわけにはいかないと言う仕組みでもあるわけです。また探しやすいのです。この時は二つの案が出ましたが、どちらかに統一してしまうと、自分たちの案を採用されなかった片方の職場メンバーはがっかりしてしまうので、両方採用したと言います。ある意味、両方を評価、褒めたと言うことですね。褒められれば気持ちが高揚します。効率とは、手間を省く、探す時間の短縮だけでなく、機能も生かすことです。
良く、冷蔵庫の中の整理の仕方なども紹介されます。これも取り出しやすく、仕舞い易いだけでなく、冷やし方や省エネの工夫もされていますね。
【ある会社の大掃除】
ある会社では、盆前や年末の大掃除の時、通常の清掃に加え、必ず全員で窓ガラスを拭いていた。この時の掃除用具は雑巾や洗浄剤ではなく、新聞紙だった。なぜ新聞紙なのかを聞いたところ、「新聞の印刷に使われるインクが窓ガラスの汚れを落とす効果がある」 というのです。このことは一般的に知られているようですが、実際に活用しているところは初めて見ました。どうせ捨ててしまうものだが、捨てる前にもう一度活用できるわけです。お金をかけずに、知恵と工夫でできる例です。そして作業者は拭く前と後の違いを実感し、清掃の必要性を感じるというのです。
クリーンマットの考え方も同じです。汚れたら剥いで捨てるだけではなく、そこに含まれる汚れを観察し、奇麗さのバロメータとして活用していますね。拭いているガラスと、まだ拭いてない隣のガラスが直接比較できる、ビフォー、アフターが同時に観察できるわけです。そして拭き残しがないか、効果的な拭き方はどうするか。拭き終わるタイミングはいつにするかなど、自分たちで拭き方を工夫するのです。気が済まなければ何度でもやり直す。知らず知らずのうちに自分の心を磨く。そんな効果も出てくるのだそうです。その会社では、社員も生き生きしていました。常に成長しているのでしょう。
次回に続きます。
クリーン化のこと、活動の進め方、事例など個別に対応が必要でしたら、ものづくりドットコムを通じてご連絡ください。可能な限り対応致します。また、セミナー、講演会なども対応致します。
【参考文献】
清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
同 電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
同 「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年