1.オープンイノベーションとは
前回のその12に続いて、解説します。オープンイノベーションとは、ハーバード・ビジネススクールのヘンリー・チェスブローにより提唱された概念で革新的な製品やビジネスモデル構築において、外部のアイデアや能力を積極的に活用しようというものです。2003年に同名の書籍が出版されています。
この概念は世界中で企業や研究機関に大きなインパクトを与え、オープンイノベーションが企業でとるべき主要戦略として語られるようになりました。日本企業においては、その動きはまだ限定的ですが、欧米企業においては、オープンイノベーションは半ば、経営における常識となっています。
2.オープンイノベーションの価値
なぜこれほどオープンイノベーションが企業戦略の中で、重要な位置を占めるようになったのでしょうか?以下がその理由にあたるのではないかと思います。
(1)顧客は製品ではなく価値を買う
このメルマガの中で再三触れてきたことですが、顧客は自社の製品やサービスを買うのではなく、その顧客にとっての「価値」を買うということがその本質にあります。その「価値」は、自社が持つ知識や能力とは全く独立して決まります。なぜなら、「自社」ではなく第三者である「顧客」が、「価値」と認識して初めて「価値」になるからです。したがって、その価値を生み出し実現するには、自社の保有する知識や能力では不十分ということが必ず起こります。
(2)ゲームのルールは「ものづくり」から「価値づくり」へ
そして、今、世の中のゲームのルールが「ものづくり」から「価値づくり」に変わってきていることがあります。「ものづくり」とは、製品を作るに当たり自社が保有する知識や強みを利用して、そこに立脚して製品を生み出すという考え方とも定義できます。しかし「価値づくり」は、顧客が価値を感じてくれるものは何かから出発し、その価値を最適な形で提供できるものを、自社の知識や能力が活用できないところでも様々な工夫を重ねることによって、その「価値」を実現するということを意味します。
つまり「ものづくり」から生まれるものは、自社の専門領域の知識や強い能力という「制約」を前提としており、実現できるものが限定されます。一方「価値づくり」の前提は、「顧客が価値を認識してくれるものを提供する」ことであり、それは制約でもなんでもなく、むしろそれは企業活動の目的そのものとして、企業の行くべき正しい方向を広く差し示してくれるものです。すなわち「価値づくり」の...
(3)自社の知識・情報、活動範囲や能力に比べて世界は広い
自社のその分野での知識、活動、能力が仮に世界的に第一級だったとしても、必然的にそれは世界中に存在するうちの一部に過ぎません。したがって、今後の継続的な「価値」の創出や実現のために重要で自社にはない知識や能力が、世の中に広く存在する可能性が高いと言えます。
世界には70億人もの人が存在します。「価値づくり」に向けて、それらの人達の知識や能力を活用しない手はありません。