1.オープンイノベーションに向けての主体的活動の限界
前回のその13 オープンイノベーションに続いて解説します。オープンイノベーションによって情報・知識を多様化するポイントはなんでしょう?オープンイノベーションのコンセプトは別稿でも触れたように、世界中に散らばる70億人の頭脳を活用することです。もちろん、全ての人が対象になるわけではありません。活用すべき頭脳はこの70億人の中に分散しています。ということは、こちらから能動的にそれらを探すのは、あまり効率的ではありません。それは藁の山の中から針を探す作業のようなものです。
また、意図しない所から面白い情報がもたらされ、イノベーションが起きるということも良くあることです。したがって、「思う所」だけを探していては十分とは言えません。イノベーションの研究者であるシュンペーターは、「イノベーションとは新結合だ」と言います。つまり、イノベーションは無から生まれるのではなく、既存の情報や知識が「今まで存在しなかった」新しい組み合わせで創出されるということです。「今まで存在しなかった」組み合わせは、「思わぬ所」に存在する可能性が高いので、自社が能動的に探すとなると、必然的に対象が絞られることになりますから、その意外性の効果は限定的になります。
2.世界中に向けて広く情報発信する
そこでこちらから70億人の人達を対象に、情報発信をすることが効率的と考えられます。基本的に先ほどのような頭脳を持った人達は、その分野に感度の高い人達です。まずはそのような頭脳の関心を引くような情報を常に発信し、自社の存在を知らしめて、向うからこちらにコンタクトをしてもらえるような状況を作ることが効率的です。この点において、インターネットという文明の利器は極めて効率的に情報発信することができます。
もちろんインターネット登場以前にも、情報発信の手段はたくさんありました。例えば、学会発表、展示会、自社技術紹介誌、業界誌等の方法です。しかし、そのような媒体でリーチできる領域は、限定されます。そして、これらの活動はかなりコストが掛ります。加えて、現在のオープンイノベーション対象は海外も含めた全世界の70億人の頭脳です。従来は欧米の一部の主要国を対象としていればよかったものが、今では発展途上国にも分野によっては優秀な頭脳が生まれつつあり、さらにそれらの国は有力な市場ですから、それらの国の頭脳も、重要な活用対象になります。しかし情報発信手段と...
3.オープンイノベーションに向けてのインターネット活用
インターネットの活用と言っても、オープンイノベーション特有の利用法があるわけではありません。まずは自社のウェブサイトやメルマガ、SNSを使って、活用したい領域に関する自社の活動を世界中に公開します。それによって、検索等を通じて、世界の頭脳は自社の存在を知り、彼らに関心があるトピックスに関して向うからコンタクトしてきてくれます。
もちろんそれを効率的に行うための工夫は必要です。それについては稿を改めて解説します。