市場でニーズを見つけ、そのニーズに向けて製品を実現するための技術があれば、製品・サービスを生み出せます。しかし、そこから自社が確実に収益を上げるには、潜在競合企業も含め競争に勝たなければなりません。そこで、自社が競合企業に勝ち確実に収益をあげるために、「自社の強み」すなわちコア技術が必要になります。
1.自社のコア技術発見のために
自社の強みは、無限に広がる市場知識などに比べれば、はるかに捉えやすいといえます。しかし、本当に自社の強みをきちんと捉えていない企業が多いものです。
自分自身のことを考えてみてください。他人の良さや欠点は、自分の価値観との相違という形で浮き彫りになるため、比較的簡単に理解することができます。しかし、自分の価値観と自分は全く同じものですから、自分の価値観を通して自分を見ても、何も浮き彫りにはなりません。自社の強みもそれと同じで、自社の価値観で自社を見ても、本当の強みは見えにくいものです。
経営の中で、オープンイノベーションがますます重要になってきているのは事実です。しかし、オープンイノベーションのネタを探り当て、自社に使えるようにするためには、膨大な作業が必要となるため、積極的にオープンイノベーションに取り組みづらい状況です。
しかし、自社にも多くの利用可能な強みがあり、それはすぐ足元にあるのです。その存在を知りさえすれば、今の場所から手を伸ばすだけで拾い上げ、使うことができます。このような強みを使わない手はありません。
2.競合に勝つためのコア技術
テーマを創出する面から考えると、自社の強みは技術とそれ以外に分けることができます。ここで技術は、テーマ創出に直接活用できます。
「技術知識」とは、最終的に製品を実現するための『手段』という観点からのもので、自社の技術かそうでないのかは問いません。一方、「自社の強み」の中の技術は、『勝つ』ためのもので、自社が保有する、もしくはその周辺のコア技術です。もちろん、ある特定の技術は「技術知識」であり、また自社のコア技術でもある、ということはありえますし、そのようになっていることが理想です。
3.自社技術の棚卸し
自社が保有する技術の棚卸しを行い、自社の強い技術を明らかにすることはとても有用です。自社の技術を積極的に、新事業、新製品の創出に活用しているのが、米国の3Mです。3Mでは、自社のプラットフォーム技術といわれる約40の技術分野を定義し、それらを必ず利用するというルールが徹底されています。したがって、3Mの製品すべてに自社の技術の強みが組み込まれています。
また、自社の主要製品である写真フィルム市場が突然蒸発するという経験をしてきた富士フイルムは、新たな事業を創出するため、写真フィルム事業で活用してきた様々な技術を洗い出し、自社が保有する技術を明らかにした上で、それら技術を活かした様々な新製品、新事業を生み出しています。象徴的な例が、化粧品の「アスタリフト」です。写真フィルムを生産する上でフィルムのベースとなっているゼラチン(コラーゲン)の技術を使って、アスタリフトを開発しました。
4.コア技術の定義とそのネーミング
自社の技術上の強みを明確に著す場合、自社の強みを最もよく表現する定義を選択する必要があります。
たとえば、自社の要素技術は、技術で実現できる機能(例えば界面活性技術)、その技術組成(たとえばポリマー技術)、ある機能を実現するための方法(内燃機関技術)、などの表現に言い替...