前回の、失敗を罰しないの前編に続いて後編です。革新的創出に向けた環境として「失敗を罰する」意味について議論を続けます。
3.失敗をどうマネジメントするか?
失敗を罰する事は避けなければなりませんが、一方相当の高い確率で起こり得る失敗をただそのまま受け入れることも、正しいマネジメントとは言えません。革新的テーマでの失敗は、本質的にある一定の確率で起こりますから、失敗の自社へのインパクトが低い段階でそれを明らかにし、早期に中止することが重要となります。まさにこの部分においてステージゲートプロセスが効果的に機能します。
不確実性には大きく分けて二つの種類があります。事前に想定が可能な不確実性と、事前に想定が不可能な不確実性です。ステージゲート法を用いたプロセスにおいては、両者に対して適正に対応する仕組みを組み込みます。
3.1 事前に想定が可能な不確実性への対応
自社の活動により、事前に想定が可能な不確実性への対応としては、以下のような工夫を講じます。
(1)積極的市場との対話
自社のアイデアを初期の段階から積極的に顧客にぶつけて、反応を見ます。その時に、できるだけ自社のアイデアが顧客にとってありありとわかるような工夫、たとえば仮想カタログをいったものを用意します。
(2)フロントローディング
早い段階から市場や技術の情報を集め、仮説で構わないので計画を策定します。その気になれば、相当のことがわかるものです。
(3)英知を集める
社内を探せば、仮に一部であってもその分野の知見や経験を持つ社員がいるものです。もしいなければ、社外の経験者や専門家を利用する手もあります。
3.2 事前に想定が不可能な不確実性への対応
自社の事前の活動では、想定が不可能な不確実性には、以下のような工夫を行います。
(1)テーマの多産多死
不確実性があふれる自然界で生物が繁栄できるのは、多産多死というメカニズムがあるためです。革新的テーマも同じアプローチをとります。つまり、多くのテーマを創出し、後のプロセスで筋が悪いと判明したテーマを積極的に中止する方法です。
(2)多段階プロセス
少しでも調査すれば、それが失敗プロジェクトかそうでないかは、かなり想定できるものです。初期には少額の経営資源を投入し、できるだけ早い時期に失敗テーマを見極めて中止し、仮に失敗という結論になっても、自社への損失を最低限に抑えるようにします。
(3)段階的評価
初期に投入する経営資源は少額とし、ステージを進めるに従い投入経営資源を増やしていきます。したがって、初期において知ることができる情報は限定されるため、それを前提として、初期の評価は抽象的・定性的にします。