PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)を活用した経営戦略

1.PPMによる事業・商品の分析

 
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)は、その名のとおり、プロダクト(製品・商品)のポートフォリオを管理し、経営資源の最適配分を目指する経営管理手法です。「プロダクト」と名前に入っていますが、製造業だけでなく、サービス業などほとんどの業界で適用できます。
 
PPMでは、縦軸に市場成長率、横軸に相対的市場占有率(マーケットシェア)をとり、それぞれ高低二つの領域に分け、市場成長率と相対的市場占有率を組み合わせた2×2=4通りの象限に事業を分類して分析します。図1
 
                           
図1.PPM分析図
 
製品や事業は、一般に、導入期、成長期、成熟期、衰退期という経緯を辿ります。これを製品ライフサイクルといいますが、製品ライフサイクルの前半である導入期や成長期では市場成長率は高く、後半の成熟期や衰退期では市場成長率は低くなります。また、製品ライフサイクルの前半では高水準の先行投資が必要となり利益はまだ少ない状態ですが、後半では投資が抑制されて利益が期待できます。このことから、PPMの4つの象限に属している事業は、それぞれ次のように分析することができます。
 
【問題児】市場成長率:高、相対的市場占有率:低
 
 導入期、成長期にある事業ですが、市場占有率はまだ低い状態にあります。充分な投資をして競争力を強化することができれば、シェアを拡大して「花形」になることができます。しかし、競争力を獲得することができなければ、市場が成熟してもシェアが小さい状態にとどまり「負け犬」となります。
 
【花形】市場成長率:高、相対的市場占有率:高
 
 導入期、成長期にあって成長率が高く、かつ、相対的市場占有率も高い事業です。高い市場占有率を背景に利益は拡大局面にありますが、競争力を維持、強化するための投資も必要です。競争力を維持し、高い市場占有率を保てば、「金のなる木」に移行できますが、競争力を失うと「負け犬」となります。
 
【金のなる木】市場成長率:低、相対的市場占有率:高
 
 成熟期から衰退期にあるため投資は減少する一方で、相対的市場占有率が高いために収入は維持され、利益が高くなる事業です。
 
【負け犬】市場成長率:低、相対的市場占有率:低
 
 成熟期、衰退期にあって成長率は低く、相対的市場占有率も低いために利益も見込めない事業です。一般的には、撤退を考えるべき事業とされます。
 

2.PPMに基づく経営戦略

 
多くの新規事業は、市場成長率が高く、相対的市場占有率が低い、「問題児」の状態から始まります。ここでは、「花形」を目指して、競合他社と差別化を図り、競争力を強化するための投資を積極的に行う必要があります。しかし、市場成長率が鈍化しても、なお、十分な市場占有率を確保できない場合には、「負け犬」になるリスクを避けるため、早めの撤退に踏み切ることも必要です。
 
「花形」のポジションを確保できた事業は、相対的市場占有率を維持するための投資を継続する一方、規模拡大や効率化によるコスト削減を行い、利益率の向上を目指します。
 
市場成長率が鈍化してくるまで高い市場占有率を維持し、「花形」から「金のなる木」に移行できれば、さらなるコスト削減を進め、利益の拡大を図ります。逆に、市場占有率を失って「負け犬」になった事業は撤退を検討することになります。
企業全体の事業ポートフォリオとしては、「問題児」、「花形」、「金のなる木」に事業がバランスよく配置されていることが重要です。「金のなる木」の事業だけに偏ると将来の成長が見込めませし、「問題児」の事業だけでは投資のための資金調達が困難になります。「金のなる木」の事業があげる利益を「問題児」や「花形」の事業に投資し、企業全体の継続的な成長を目指す必要があります。
 
また、新規事業は必ずしも「問題児」からスタートするとは限らないことも留意しなければなりません。革新的な技...
術や過去にないビジネスモデルを武器にして、新市場を開拓する場合などは、事業の最初から相対的市場占有率の高い「花形」に分類される状態にあります。しかし、事業規模は小さく、大きな投資が必要ですから、事業の実態は「問題児」に近いとも言えます。PPMによる分析が経営戦略について与えてくれる示唆は一般的なものと理解して、実際の戦略立案では、その事業の特性も加味して分析することが重要です。
 
 

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