PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)とは? 意味や問題点について分かりやすく解説

1. PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)とは

企業が展開する複数の製品、事業の現状を把握し、自社の事業資金の配分を最適に行うための経営理論の事を、「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(Product Portfolio Management)」と言います。

例えば、ある部品メーカーが自動車部品、自転車部品、農機具部品、建築部品の4つの製品、事業を手がけているとして、自動車部品に関しては初期投資の時期は終わり、投資金額があまり必要としない事業もあれば、自転車部品部門に参入したばかりで、設備投資、広告費他、大幅な初期投資を必要とする事業もあります。

また、農機具部品に関してはこれ以上の市場の成長が見込めない、また市場の占有率が低いとなれば、市場からの撤退も考えられます。

このように、効率的な優先順位を設定し、経営戦略と事業資金・資源の運用を図り、最大限の利益を得るために、「プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)」の指標が重要となってきます。

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2 PPMの事業類型

「プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)」において、縦軸「市場成長率」と横軸「市場占有率」の2つを軸に、「問題児(Question Mark)」、「花形(Star)」、「金のなる木(Cash Cow)」、「負け犬(Pet)」の4つの事業をマトリクス図の中に分類します。
下記にそれぞれ4つの事業類型の解説をしていきます。

①問題児(Question Mark)

(市場成長率:高い 市場占有率:低い)
占有率まだまだ低い状態ですが成長性は高く、今後売上、利益を多く見込めます。
しかしこの分野は新規参入事業が想定され、ライバルの競合他社が溢れており、占有率拡大のために資金を継続して投資する必要があります。
市場占有率を高めて「花形」へと移行していく事が望ましいですが、「負け犬」へと転落する危険性も秘めています。

②花形(Star)

(市場成長率:高い 市場占有率:高い)
成長性も占有率も高い状態です。市場競争が激しい為に積極的な投資が必要となりますが、利益に関しては非常に出やすい環境と言えます。
市場占有率を維持、拡大させながら、「金のなる木」へと移行させることが目標となります。

③金のなる木(Cash Cow)

(市場成長率:低い 市場占有率:高い)
占有率は高い状態ですが、成長性は低い事業で、成熟市場と言えます。投資は必要最低限で利益を得ることが可能となり、収益性は良い事業と言えます。自社の占有率は高いですが、競合他社がひしめき合っている状態でもあり、占有率の維持が重要となります。
出た利益に関しては、「問題児」「花形」へ投入する事が得策と言えます。

④負け犬(Pet)

(市場成長率:低い 市場占有率:低い)
成長率、占有率共に低い状態です。今後の発展よりも衰退の可能性が高く、状況を見極めての撤退、売却も必要とされる状況です。
多くの事業の目標として、「問題児(question)」から始まり、「花形(star)」、そして「金のなる木(cash cow)」を目指していきます。
「負け犬(pet)」に関しては市場の成長も、占有拡大の見込みが無く、事業の整理が必須の状況であり、投資資金を他の事業へ分配する必要性があります。

このように、プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)のフレームワークを利用し、状況に応じて維持、収穫、拡大、撤退などの戦略を効果的に行うことができます。

 

3 PPMの問題点

事業を成長率と占有率の2軸、4象限で分類するのは、明確で分かりやすく使いやすい反面、単純すぎて細部までの分析が困難です。
昨今の市場はニーズの多様化により日々変化、成長している状況下で、市場における事業の成長に至るプロセス、アプローチ、タイミングはより重要であると考えられます。

しかし、プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)のフレームワークでは限界があります。成長を見込めないと思われていた市場が活性化することもあり、「負け犬」と思われていた事業が「花形」に移行する場合もあります。
プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)を活用するに際し、それらの例外があると認識する事が必要です。

 

4 PPMの課題

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)は1970年代に、ボストン・コンサルティング・グループが提唱したマネジメント手法であり、現代の市場において単純化しすぎている問題が指摘されています。

自動車産業のようなイノベーションが起こり、エンジンがHV、EVに切り替わる極端な例も、今後は多数の分野で発生する可能性もあり、それにより市場成長性が目まぐるしく変化します。「負け犬」や「問題児」であっても、「花形」や「金のなる木」の占有率に影響を及ぼしている、補完材としての役割を成している場合もあります。

それらを踏まえ今後の経営戦略において、各事業のポテンシャルを最大限に見極められるように、市場価値評価だけではなく経済価値評価も判断材料に加え、バランスよく、より高度な資金配分が行える環境構築が必要とされます。
 


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