技術戦略 研究テーマの多様な情報源(その32)

 
 
前回の『価値づくり』に向けての三位一体の技術戦略 第2回では、『価値づくり』に向けての三位一体モデルのスパーク(新結合)の原料について、議論しました。今回の第3回では、このスパークをどういう仕組みの中で起こすのか、すなわち個人単位なのか、組織単位なのか、について議論をしたいと思います
◆関連解説『技術マネジメントとは』
 

◆スパークを起こす単位:まずは個人単位でのスパークを目指す

 
 セミナーなどで、革新的なテーマ(大きな顧客価値を実現するテーマと定義)の創出のためのスパークの話をすると良く受ける質問に、スパークは個人単位で起こすのが良いのか、組織単位で起こすのが良いのかがあります。現実には、両方で起こすことが良いのです。
 
 なぜなら、全体としてスパークは数多く起きれば起きるほど良いですし、また、革新的なテーマ創出できれば、そのメリットは大きく、それだけの投資をする価値は十分にあるからです。しかし、個人単位か組織単位かと問われれば、マネジメントの視点からは、まずは個人単位でスパークを起こすことに多くの時間とエネルギーを注ぐことが必要です。理由は3つあります。
 

(1)個人単位でスパークを起こすことが重要な理由:

         スパークの頻度

 
 まず、個人単位の方がずっとスパークの頻度が高まるからです。個人の頭の中にスパークの原料である市場と技術の知識が詰まっていれば、スパークは通勤途上、風呂の中、トイレの中、睡眠中ですら起こる可能性があり、時間と場所を選びません。極論すると24時間スパークが起こる可能性があります。
 
 しかし、組織単位となると、ある人の頭の中にある原料と他の人の頭の中にある原料が新結合(スパーク)する必要性があり、複数の社員が一同に会し、議論する機会が求められます。そのような機会を始終持つことは、現実的にはほとんど不可能です。
 

(2)個人単位でスパークを起こすことが重要な理由:

         スパークが起こる場の数

 
 加えて、組織単位でスパークを起こすとなると、スパークの回数はスパークのための議論の機会の数によって規定されてしまい、そのような場を公式、非公式に沢山持つにしても、限定的です。
 
 しかし、個人単位であれば、関連する社員一人一人の頭の中でスパークが起こる可能性がある訳で、その数は組織単位での議論の場の数よりも相当多くなるでしょう。
 

(3)個人単位でスパークを起こすことが重要な理由:

   これまで多くの企業が個人単位でスパークを体系的に起こすことに工夫をしてこなかった

 
 もちろん多くの企業で、これまでは個人単位で良いテーマを出すことが期待されてきたわけですが、そのためのマネジメントが不在であったとい事実があります。スパークには前回議論したように、市場知識、技術知識(自社内に存在する技術に限定せず広く世の中に存在する技術)が必要となりますが、自社に存在する技術は置いておいて、その他の市場知識や社外に存在する技術を集め、個人単位で共有する仕組みとその運用には、多くの企業において経営資源が使われてきていません。
 
 しかし、言い換えると、だからこそそのような活動をこれから積極的に行えば、革新的テーマが数多く創出できる余地が大きいと言えます。
 
 以上より、個人単位でスパークを起こすため、すなわち自社の多くの社員を対象...
として、それら社員の頭の中でスパークを起こし、テーマの創出量を増やすことに向けた大胆な工夫を含む様々な施策や、そこへの経営資源(社員やマネジメントの時間と資金)の投入が、極めて重要となります。
 
 しかし、組織単位でのスパークの機会を持つことも、個人単位でのスパークを期待することと同様に重要です。また、組織単位でテーマ創出するには、テーマ創出専任部門という組織的なアプローチもあります。
 
 

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