経営方針と生産技術の相互関係 中小メーカ向け経営改革の考察(その10)
2016-03-02
前回のその9に続いて解説します。品質、納期、コストに関する日常業務の中で発生している問題の再発防止に関する生産技術の開発に取り組まずに、新規の技術・製品開発に取り組むことは根本的に間違っています。日常発生している問題処理が的確にできないのに、新規技術の開発に取り組むと、新しい問題が上積みされることになり、混乱を増幅させて採算性を悪化させている例が多いです。
多品種少量の生産の場合、表面的に見ると段取り替え作業、生産方法はその都度異なっているように見えます。そのため、その都度図面や仕様を見て考えながらの作業となり、「考える時間+段取り」等の準備時間が正味作業時間を上回っている事は珍しいことではありません。しかし、その作業について詳細に生産工程の内容を観察すると、類似工程が少なくないことが判るので、その点に着目して対策を講じるように経営方針を明確にします。
経営方針を確認し将来の方向性を意識して、蓄積してある要素作業、要素技術の記録を即座に取り出せる仕組みを創り上げます。設計業務での技術資料の蓄積、再利用を図ることは品質の安定とコストダウンに最も有効な方法です。その要領は次の通りです。
(1)利用度が高いと思われる技術項目・作業に絞る。設計・開発等の技術部門の場合にはプロジェクト
チームを編成します。
(2)複数のキーワード(要素技術・工程の名称、製品名、客先名、図面No、年月日など)の組合せ方
をソフトの制約を考慮して決め、検索が簡単にできるようにします。
(3)記録をパソコンに登録する方法とルールを決めます。
(4)図面、文書は顧客別、年月順に目次をつけてファイルし、ファイルの名称を表紙と背表紙に記載す
る。パソコンでキーワードで検索すると収納されているファイルが分かるようにする。記録した内
容を1年以上修正せずに放置しない。放置は改善が停滞していることを意味します。
(5)既存の図面・技術資料に関しても同様の方法で実施することになるが、利用度の高い要素作業・技
術に関する直近の資料から順次遡っていく。以前の資料を全て取り上げて登録するような完璧な事
を考えて実施している事例では行き詰まっている場合が多いようです。
プロジェクトチームの編成は、技術部門では欠かす事ができません。その理由は、受注の動向、今後力を入れる必要のある技術分野などについて、代表者、営業部門、購買部門、技術部門の関係者が同じ方向の考え方になっていることが重要なことです。技術資料の蓄積についてもその方向に沿っ...
て優先的に記録を残し、再利用できる仕組みを創ります。それらの活動内容を代表者及び営業部門、購買部門、技術部門の幹部が理解していることで、事業活動の整合性が図られます。全ての技術資料を記録し、再利用できるようにする活動を一度にすることは無理であるから、優先順位を決めるためにもプロジェクトチームの編成は重要です。下表に、組織横断的チ-ム編成を必要とする技術的事項を示します。
小規模の企業で部門別の担当が明確になっていない兼任の場合でも、業務上の役割分担に基づき、議題に関連する情報の提供を行い技術蓄積の進め方について検討します。