人財育成編 物流改善ネタ出し講座 (その12)
2016-03-31
前回の第11回に続いて解説します。物流改善ネタ出し講座の最終回にあたり、物流という宝の山を掘るためにどうしても欠かせない要素となる「物流のプロ育成」について考えてみましょう。日本では物流のプロはそれほど多くないと感じています。製造業では、ものづくりに関わる人財は計画的にしっかりと育成していく文化がありますが残念ながら物流人財は、二の次であることは否めません。この事実は製造業の本業は「ものづくり」であるという考え方に立てばある意味仕方のないことかもしれません。しかし最近ではサプライチェーンマネジメントという言葉も一般的となり単なるものづくりにとどまらず、ものの調達から加工、運搬、販売にいたるまで「ものの流れ」を全般で効率化しようという風潮にあります。この中でものを動かしながらその管理を行っていく物流担当者は極めて重要な位置づけとなってきています。この事実に気づいた会社はサプライチェーンマネジメント部門を立ち上げ、その中に物流部門と物流担当者を置くようになりました。このシリーズをお読みいただいている会社の皆さんは多かれ少なかれ物流の仕事に携わっていると思われます。そこでこれからの将来を見据えさらなる物流のプロの育成について情報を共有していきましょう。
物流担当者が実施すべき仕事として狭義の物流管理が挙げられます。この仕事の対象範囲は物流の持つ5つの機能についてオペレーションと管理を行っていくことです。その機能とは「輸送、保管、荷役、包装、流通加工」の5つを指します。これらの機能について日々オペレーションと管理を行っていくことが必要となります。さらに物流には7つの領域があると言われています。その領域が「物流サービス、物流システム、物流生産性、在庫、物流コスト、安全管理、環境対策」の7つです。この内「物流サービス」の業務とは工場において生産工程に対する物流サービスを設計することが代表的です。単に生産工程にものを運ぶだけではなく生産工程の品質や生産効率を考慮した時にどのようなサービスを提供したらよいかについて物流自らが考え設計していくのです。「物流システム」の例を挙げると工場の中で運搬が発生した時にどのような機器を使って運ぶのか、完成した製品を顧客に届けるための物流はどのような方法で行っていくのかについて設計することが考えられます。
さらにサプライチェーンマネジメントの観点からは、図1、図2のような「生産管理」、「購買」、「IE」、「物流改善」、「現場管理」、「物流技術(レイアウト)」、「物流技術(荷姿設計)」、「物流会社管理」といった管理領域が必要となってきます。これらを含めた広義の物流管理こそが今後の物流のプロに求められでしょう。
図1.広義の物流管理スキル1
図2.広義の物流管理スキル2
まずは足元の狭義の物流管理スキルを固めておきましょう。この中にはオペレーショナルスキルとプランニングスキルがあります。順番として最初にオペレーショナルスキルを完璧にこなせるようにしていきましょう。それは標準作業として定められた仕事をきちんと行っていくことです。生産効率を考慮しジャストインタイムで部品供給を行うこと、生産工程にムダな動作が発生しないように供給荷姿を設計すること、つくりすぎが発生しないように必要以上の部品や容器を生産工程に届けないことなど、製造業として基本的な物流業務を行うためのスキルを身に付けさせる訓練が必要となるでしょう。これが完璧にできるようになるだけでも相当の訓練は必要となるはずです。
次にプランニングスキルの開発です。工場内の効率的な物流を実現するためのレイアウト設計を行っていくことや、高効率輸送を実現するための荷姿設計、完成品を顧客に届ける際の効率的な物流方法など、物流を最初から効率的に実施していくためのプランニングスキルを身に付けるのです。
そしていよいよ広義の物流管理スキルであるサプライチェーンマネジメントスキルを開発していきます。物流担当者の仕事としてこの領域まで取り組んでいる会社は少ないかもしれないが、将来的には確実に必要となるスキルであるため今から準備しておくことが望ましいでしょう。その効果を一つ考えてみます。たとえば物流担当者が「生産管理」...
や「購買」などのスキルを身に付けたとします。「物流」や「在庫」は何かしらの活動の結果として現れるので自らつくり方や買い方に関与することで在庫コントロールが可能となり、物流の効率化も図ることができます。与えられた条件で物流設計を行うだけではなく物流発生条件にまで関与することで更なる効率の良いサプライチェーンを構築することができるようになるのです。
皆さんの会社のサプライチェーン効率化のカギを握るのは物流担当者だと申し上げておきます。宝の山を掘りあてる物流のプロ育成の詳細について次回のシリーズで引き続き、取り上げて解説します。
この文書は、『日刊工業新聞社発行 月刊「工場管理」掲載』の記事を筆者により改変したものです。