【物流人財育成 連載目次】
明日の物流を支える物流人財の育成について、6回に分けて解説します。今回は、物流IEを育成するの前編です。
◆物流IEを育成するには
前回、「物流担当者は事象を科学的に分析できるようになる」ことが望ましい旨書かせていただきました。今までのKKDからの脱皮を図り、製造業並みに事象を分析・改善できるとともに、数字で話ができるようになろうではないか、ということをここでは言いたいのです。IEという言葉はお聞きになったことがあると思います。IEとはIndustrial Engineeringの略で日本語では経営工学と言われます。もともとはものづくり現場の作業改善を中心とした、ものの見方・考え方や科学的アプローチ手法の活用だったが、その真価が徐々に評価されるようになり、近ごろではものづくり現場のみならず、事務作業はもちろんのこと、デパートや病院、ホテルやレストランなどのあらゆる産業で広範囲に活用されるようになってきました。一方で物流現場ではどうでしょうか。比較的IE導入のしやすい梱包作業や入出庫作業でもまだ一般的ではないような気がします。
我々物流業界でもこの厳しい時代を乗り切るためには、生産性の向上は避けて通れない道です。そのためにもIE手法を活用できる人財を育て、一日でも早く改善できた会社が、勝ち残るのは当然の帰結と言えます。さて、この生産性向上では生産の3要素と言われる人・モノ・設備を最も効率的に活用し、時間あたりの出来高をできるだけ多くする活動が求められます。時間あたり運搬量や梱包量、入出荷量を最大にするための工夫が必要になるのです。これらを推進するのが物流IEです。
では、どうやって物流IEを育成するのでしょうか。確かにIEを体系的に学べる機会を与えることは最も望ましいことです。しかし、必ずしもすべての会社がこのような教育機会を付与できるわけではないでしょう。そこでまず、以下のような見方を物流担当者にさせていくことで自然とIE的思考ができるようにしていくことをお勧めします。
まず、自社の物流業務について主体作業・付随作業・ムダの三つに分類します。主体作業とは物流の核となる作業でこれ以上時間短縮することが困難なもの、例えば、ピッキング時の取り置きや梱包の釘打ちなどです。付随作業とは、主体作業を実施するにあたり発生する作業だが短縮が可能なもの、例えば、歩行や資材準備などです。ムダは主体と付随以外のものすべてです。例えばトラックの待ち時間や手待ちなどです。物流担当者は、ムダや付随作業をいかにして無くすかあるいは減らすかをとことん考えます。また、主体作業をいかに効率よく行うか知恵出しすることです。これを繰り返すことで、かなりIE的思考が鍛えられます。経営者は自社のスタッフに課題を与え...
ます。例えば自社の物流作業を半分の人員でやるためにはどうするかを考えさせるのです。
さらに、この三分類の比率を数値化し、主体作業の比率について目標値を定めます。この数値は高ければ高いほど良いので、物流現場ごとに比較できるように見える化し、各現場がこの数値向上を競い合います。物流スタッフがそれをサポートすることで改善の素養を身につけるしかけをつくることも良いのではないでしょうか。この続きは次回の後編に書かせていただきます。
この文書は、『月刊ロジスティクスIT』の記事を筆者により改変したものです。