冗長設計とは?冗長性設計の具体例やメリット・デメリットを紹介
1. 「冗長設計」とは
冗長設計とは、万一事故があった時に機能や情報などに冗長度を持たせることで、事故やトラブルを防止したり、被害を低減したりする設計方法です。 並列装置が自働で切り替わる「常時冗長」、待機装置を異常時のみ切り替える「待機冗長」、n系統のシステムのうちk系統が正常であれば動作を継続できる「koutofnシステム」、動作原理の異なるシステムで補完しあう「ダイバーシティ」などの方式があります。
(1)冗長設計とミラーリング(二重化)の違い
冗長設計とミラーリング(二重化)は、どちらもシステムの信頼性や可用性を向上させるための手法ですが、アプローチが異なります。
①冗長設計
冗長設計は、システムの重要なコンポーネントを複数用意することで、1つのコンポーネントが故障してもシステム全体が機能し続けるようにする方法です。例えば、サーバーやネットワーク機器を複数用意し、故障時には自動的に別のコンポーネントがその役割を引き継ぐ仕組みです。冗長設計は、通常、負荷分散やフェイルオーバーの機能を持っています。
② ミラーリング(二重化)
ミラーリングは、データやシステムの状態をリアルタイムで複製する手法です。例えば、データベースのミラーリングでは、主データベースの内容が別のデータベースにリアルタイムでコピーされ、主データベースがダウンした場合にミラーリングされたデータベースが即座に使用されることができます。ミラーリングは、特にデータの整合性を保つことに重点を置いています。
どちらも重要な手法ですが、目的や実装方法が異なるので、システムの要件に応じて使い分けることが大切です
(2)冗長設計と可用性の違い
冗長設計と可用性は、システムの信頼性や耐障害性に関連する重要な概念ですが、それぞれ異なる意味を持っています。
冗長設計は、システムやコンポーネントが故障した場合に備えて、予備の要素を追加することを指します。例えば、サーバーの冗長化では、複数のサーバーを用意しておき、一つが故障した場合でも他のサーバーが機能を引き継ぐことで、システム全体の稼働を維持します。冗長設計は、故障時の影響を最小限に抑えるための手段です。
一方、可用性は、システムが正常に稼働している時間の割合を示す指標です。可用性は通常、パーセンテージで表され、例えば99.9%の可用性は、システムが年間で約8.76時間しかダウンしないことを意味します。可用性は、冗長設計を含むさまざまな要因によって影響を受けます。
要するに、冗長設計は可用性を高めるための手段の一つであり、可用性はシステムの信頼性を測る指標です。冗長設計を適切に行うことで、システムの可用性を向上させることができます。
2.冗長化が必要な理由
- ・信頼性の向上: 冗長化により、システムやデータの障害が発生した場合でも、他のバックアップや代替手段が機能するため、全体の信頼性が向上します。
- ・可用性の確保: サーバーやネットワークの一部がダウンしても、冗長化されたシステムは引き続きサービスを提供できるため、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。
- ・データ保護: データの冗長化により、データ損失のリスクを減らすことができます。例えば、データを複数の場所に保存することで、1つの場所で問題が発生しても他の場所から復元できます。
- ・メンテナンスの容易さ: 冗長化されたシステムでは、メンテナンスやアップグレードを行う際に、他の部分が稼働し続けるため、サービスの中断を避けることができます。
- ・パフォーマンスの向上: 一部の冗長化手法では、負荷分散を行うことで、システム全体のパフォーマンスを向上させることができます。
これらの理由から、冗長化は多くのシステムやサービスにおいて重要な要素となっています。
3.冗長性設計の具体例
(1)データセンターの冗長化
データセンターでは、サーバーやネットワーク機器の冗長化が行われます。例えば、重要なサーバーが故障した場合に備えて、同じ機能を持つバックアップサーバーを用意します。これにより、1台のサーバーがダウンしても、バックアップサーバーが稼働し続けることでサービスの継続性が保たれます。
(2)航空機のシステム冗長性
航空機では、重要なシステム(例えば、操縦系統やエンジン)に冗長性が設けられています。多くの航空機は、複数のエンジンを搭載しており、1つのエンジンが故障しても他のエンジンで飛行を続けることができます。また、操縦装置も二重化されており、万が一の故障時にも安全に操縦できるようになっています。
これらの冗長性設計は、システムの信頼性や安全性を高めるために非常に重要です。
4.冗長化のメリット
(1)信頼性の向上
冗長化により、システムの一部が故障しても他の部分が機能し続けるため、全体の信頼性が向上します。
(2)可用性の向上
冗長化されたシステムは、ダウンタイムを最小限に抑えることができ、常にサービスを提供できる可能性が高まります。
(3)負荷分散
複数のリソースを使用することで、トラフィックや処理負荷を分散させ、パフォーマンスを向上させることができます。
5.冗長化のデメリット
(1)コストの増加
冗長化には追加のハードウェアやソフトウェアが必要になるため、初期投資や運用コストが増加します。
(2)管理の複雑さ
冗長化されたシステムは構成が複雑になるため、管理やメンテナンスが難しくなることがあります。
(3)リソースの無駄遣い
冗長化によって、使用されないリソースが増える可能性があり、効率的な運用が難しくなることがあります。
6.冗長化の構成
冗長化の構成を4つ挙げ、それぞれの特徴や種類について説明します。
(1)ハードウェア冗長化
特徴・・ サーバーやネットワーク機器などのハードウェアを複数用意し、1台が故障しても他の台が機能を引き継ぐ仕組みです。
種類
・デュアル電源: サーバーに2つの電源ユニットを搭載し、片方が故障してももう片方が稼働する。
・RAID(冗長独立ディスク構成): 複数のハードディスクを組み合わせてデータを冗長化し、1台のディスクが故障してもデータを保護する。
(2)ネットワーク冗長化
特徴・・ ネットワークの接続経路を複数用意し、1つの経路がダウンしても他の経路で通信を維持できるようにする手法です。
種類
・スイッチの冗長化: 複数のスイッチを用意し、リンクアグリゲーションやスタンバイ構成を利用して冗長性を持たせる。
・ルーティング冗長化: HSRP(Hot Standby Router Protocol)やVRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)を使用して、ルーターの冗長化を図る。
(3)ソフトウェア冗長化
特徴・・ アプリケーションやサービスを複数のインスタンスで稼働させ、1つがダウンしても他のインスタンスが処理を引き継ぐ仕組みです。
種類
・クラスタリング: 複数のサーバーをクラスタとして構成し、負荷分散やフェイルオーバーを実現する。
・コンテナオーケストレーション: Kubernetesなどを使用して、コンテナ化されたアプリケーションの冗長性を確保する。
(4)地理的冗長化
特徴・・ データセンターやサーバーを異なる地理的な場所に配置し、自然災害や地域的な障害からシステムを保護する手法です。
種類
・データバックアップ: 異なる地域にデータのバックアップを保持し、メインサイトがダウンした場合に迅速に復旧できるようにする。
・マルチサイト構成: 複数のデータセンターでアクティブ-アクティブまたはアクティブ-スタンバイの構成を取り、地理的な冗長性を持たせる。
これらの冗長化手法を組み合わせることで、システムの可用性を高め、障害発生時の影響を最小限に抑えることができます。
7.冗長化する可能性があるシステム
(1)高可用性が求められるシステム
サーバーやネットワークが常に稼働している必要があり、ダウンタイムを最小限に抑えるために冗長化が行われる。
(2)データの安全性が重要なシステム
データベースやストレージシステムなど、データの損失を防ぐためにバックアップやミラーリングが必要とされる。
(3)負荷分散が必要なシステム
ウェブサーバーやアプリケーションサーバーなど、トラフィックが集中する場合に、複数のインスタンスを用意して負荷を分散する。
(4)ミッションクリティカルなシステム
金融システムや医療システムなど、システムの停止が重大な影響を及ぼす場合に、冗長化が必須となる。
8.まとめ
冗長とは、重複していたり不必要に長かったりするなど無駄が多いという、普段はネガティブな意味で使われることが多いワードです。一方、コンピュータシステムなどでは、耐障害性を高めるためにネットワークを含むシステム全体を二重化して予備システムを準備することを指し、信頼性と安全性を確保した状態であるというポジティブな意味で使われます。冗長設計を理解するには、まずエラープルーフ ( Error Proof)との関係性を理解する必要があります。