当たり前のことも知らなければできないことを認識せよ 中国企業の壁(その8)

1. 当たり前のことも知らなければできないことを認識せよ

 ある時取引先に品質が良くないと言うクレームの文書を一斉に配布することになりました。文面はこちらで作成し、各担当者が取引先名を記入して配布する手順としました。担当者が作成後、確認印を押すときにエッと思った。相手の会社名を正式な名称で書いていないのです。
 
 お互いの担当者同士がEメールでやり取りをする場合には、会社名を略称で書くことはよく行っていますが、今回の文書の位置付けは、取引先に自社品質状況を認識してもらい、対応を促すためのものです。気軽な連絡文書ではないので、礼を尽くして出すことが必要です。
 
 どのように書いてあったかというと、有限公司や(株)が抜けているのが多かったのですが、会社名を略称で書いてあるものもありました。対外的な仕事をしている部門だけに、この辺は気を使うところです。最初は、「何だこんな初歩的なこと、常識的なことも知らないのか」と思ったのですが、冷静になって考えてみると日本人でも、入社後に新入社員研修や部門研修などの教育を受けていなければわからないし出来ないと気付きました。
 
 ひょっとしてこの中国人スタッフたちは、きちんと教育されていないのではないか?また、自分はスタッフに教育しただろうか?自分は教育した覚えがなかった。それなのにスタッフに対して怒ってしまったことを猛省した。しかも結構強烈な勢いで怒ってしまったのです。
 
 このことに限らず、実はきちんと教えていない、教育していない、でも出来て当たり前、知っていて当たり前と思って、出来ない知らないと「何で出来ないんだ、知らないんだ」と責めてしまうことは、たくさんあると思われます。実はこれは、わたしがいた会社だけでなく、日系中国工場ではどこでも起きていることではないでしょうか。
 
 日系企業や日本人の当たり前を中国人スタッフ自身で勉強し、身につけることを期待するのは間違いです。もちろん、自分で身に付けられる人もいるでしょう。でもそれはごく一部の超優秀な人です。普通に採用できる人たちに、それを期待してはいけないのです。誰が何を教育するのか、したのか。これを明確にしておくことが大事です。ただし、今日の事例のように細かいところまでとなると大変なので、1年に1回ないし2回、常識と思われることの繰り返し教育を実施することをお勧めします。
 
 
 

2. 不具合対策が引き起こした不具合

 よかれと思って実施したことが、裏目に出てしまった失敗経験をお伝えします。
 
 日系の中国工場から購入していた部品で、重大不良が発生しました。不良の内容は、加工寸法の規格外と加工不良(形状不良)でした。この不良が厄介だったのは、それを使っている当社(当時)では、その顧客が使う部分に一切手を加えていないことだった。つまり、部品メーカーの不良がそのまま、顧客に流出してしまうことでした。
 
 最初に顧客クレームになった時に、この部品メーカーに出向いて工程をチェックし、問題点を一緒に協議し、対策を実施してもらいました。しかし、対策後に再び同じ不良が発生したのです。再対策の回答が提出されたので、内容をチェックしたところ、何点か気になる点があったので、再度部品メーカーに行って対策内容について協議しました。
 
 その結果、先の対...
策が逆に不良を誘発する要因となっていると、双方で認識が一致したのです。よかれと思った対策を見直してみると、作業の流れを止めることになり、そのために加工時の送り寸法を勘違いさせてしまう可能性があることが分かりました。この会社では、作業確認のためにそうしたのだが、結果は裏目に出てしまいました。
 
 誰も悪くしようと思ってはいません。でも結果としてこうなってしまいました。しかし、今回の対策立案時の確認に問題があることが分かりました。それは、対策を考えた時に、その工程の作業者の意見や考えを聞くことなく、管理者の側だけで対策を立てていたことです。作業者の知らない不具合対策は意味がないのです。対策効果の確認は、結果だけでなく工程での作業検分も行うことが必要であることが、今回の例から言えのではないでしょうか。
 

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