内発的動機づけにつながりやすい目標に対する考え方では、「チームの中で打率一番になる」というような明確なゴール設定をするのは「遂行目標」とよばれ、これは自分に限界を定めることになり内発的動機づけになりにくいのです。
一方、「苦手な内角低めをもっと打てるようになりたい」というようなゴール設定は「学習目標」とよばれ、上達するたびにさらに高い目標を設定するため内発的動機づけにつながりやすいということでした。このような自分で限界を設定しない姿勢が、内発的動機づけのために必要となる「熟達」です。
1. 学習の在り方や人生の在り方を決めるマインドセット
このような「熟達」のためのマインドセット(心の持ち方)は、教育心理学者キャロル・S・ドゥエックの人間の能力についての研究が有名です。
彼は、心の在り方がその人の学習の在り方、人生の在り方を決めると言い、その心の在り方には「固定的知能観 (fixed-mindset)」と「拡張的知能観 (growth-mindset)」という2通りがあるとしました。
「固定的知能観」を持つ人は、人間の能力は固定的であり変わらないと信じています。そのために努力を重視せず新しいことを学ぶことを避ける傾向があります。また、他人からどう評価されるのかを大切にします。
一方、「拡張的知能観」を持つ人は、自分の能力は拡張的であり変わると信じています。能力は努力次第で伸ばすことができ、たとえ難しい課題であっても学ぶことで解決できると考えます。
2. 大きな成果につながる「拡張的知能観」
彼の研究によると、大きな成果を上げる人は、能力は努力次第で伸びるという「拡張的知能観」を持った人が多いということです。
能力を伸ばせると考えるマインドセットを持つ人にとっては、がんばって新しいことを習得し、自分を成長させることができれば成功であり、成長できなければ失敗です。
一方、能力を固定的に考えるマインドセットを持つ人は、自分の才能や賢いことを証明できたり、自分の価値を確認できれば成功であり、つまずいたらその時点で失敗です。このような人にとっては、悪い点数を取る、試合に負ける、人から拒絶される、そうしたことはすべて、才能がなくて頭が悪い証拠となります。そして、能力を固定的にみる人は、努力するということは頭が悪くて能力に欠ける証拠と考えてしまうことなります。「頭がよくて才能があれば、そもそも努力する必要なんてないはずだ」と考えるからです。
このような考え方(マインド)の違いから、成長に終わりはないと考え、そのために努力を継続できるマインドセット(拡張的知能観)を持つことが、「熟達」のカ...