手直しは気が付いた作業者が行えばよい? 中国企業の壁(その11)
2018-05-31
一品物(いっぴんもの)の機械装置を製作していると中国企業のある工場では、機械装置の躯体となる鉄材を加工する工程が先頭工程となっています。その加工工程での品管部の検査で不具合が見つかることが少なくありません。
ものが大きいので、不具合=廃棄とはならないので、不具合品は手直しをすることになります。手直しは、その工程で実施するものもありますが、後工程に任せるものもあります。どの工程で手直しをするか、その基準は次のようになっています。材料加工工程でなければ手直しできない不具合に関してはその工程で行い、後工程で手直しができるものは、後工程で実施するとなっています。
品管部による工程検査の記録はきちんと取っているので、その記録を見れば、どこに不具合があったのかわかります。しかし、その検査記録は、加工された材料に付いていくことはなく、品管部にファイルされます。
後工程での作業記録を見ても手直しをした記録はありませんでした。また、後工程での品管部の検査記録を見ても、手直し箇所を検査した記録もありませんでした。作業者に「この材料は、どこを手直しすることになっていたのか?」と質問したところ、「そんなことは知らない。作業していて手直しが必要だと思ったところは手直しをする」との回答がありました。
この工場では、後工程で手直しをすることを条件として、検査不合格でも次工程にものを渡しています。言ってみれば特採をしている訳ですが、その特採の条件が履行されていません。
前工程の検査で不具合が見つかったものを後工程で手直しをするのであれば、手直し指示書などで手直しが漏れなく実施されるようにしなくてはなりません。また、後工程の検査でも、その手直し指示書に基づき、手直し箇所の不具合が修正されていることを確認することが必要です。
この工場の場合、後工程で不具合箇所を手直しするというルールが確立されていた訳ではなく、あとで直せるのだから取り敢えず合格扱いで処理するための言い訳となっていたのです。
今回は、シンセンにある韓国系企業について、紹介します。
TOPである総経理は、韓国の方でした。この総経理が非常にバイタリティーのある方で、従業員をぐいぐい引っ張っていました。我々への対応は非常にソフトでしたが、従業員には怒鳴ったりして檄を飛ばしていました。そしてこの工場を紹介しようと思った理由がこれです。 従業員は工場を靴下で歩いているのです。
この工場に入って先ず気が付き、驚いたのは、すべての従業員が会社内(工場内)では靴を履いていないことでした。従業員は、靴下で事務所はもちろん、現場も歩いていました。お客さんにだけが、サンダルを履きます。
さらに驚いたのは、事務所や現場だけでなく、トイレでも靴及びサンダルを履かずに靴下で行くことでした。トイレに靴下で行くというのは、日本のトイレでも抵抗があるのではないでしょうか。まして中国では尚更です。汚い話で恐縮ですが、用を足したときに便器の周りが濡れているのを見...
かけると思います。そのようなトイレに靴下で行けるでしょうか。私は行けません。使い方のマナーを皆が守らないと、トイレに行けなくなってしまいます。
総経理は、靴下で歩かせる目的は、5Sとおっしゃっていました。
靴下で歩くと言うことは、ある意味工場では危険を伴うことにもなります。床に部品などが落ちていて、それを踏めば怪我をすることになります。そうならないために清掃を徹底してやることが必要です。実際に工場の床は非常にクリーンでした。
最初は、中国の従業員もこの目的を理解できず、労働局に訴えた人もいたそうです。会社が労働局に目的を説明して、理解を得たそうです。この靴下で工場内を歩かせると言うのは、トップの意向を反映した従業員への強いメッセージですね。