プラント建設業者の効率的・効果的な探し方とは
2018-10-16
今回は、配管、土木建築、電気・計装、機器の設計を担当する設計業者に設計を注文する事例で、大型プラント建設に対応できるような業者を効率的・効果的に探すにはどうすれば良いのかを解説します。
大型プラント建設に対応できる業者であれば、設計のスキルも備えています。そこで、設計・製造・施工を一括して受注できる(一括して見積もりできる)プラント建設業者の探し方ですが、まず最初に、「性能仕様書」なるものを作ってみて下さい。「性能仕様書」とは、受注(希望)業者が、製造と施工に先立つ詳細設計を行う上で欠かせない情報(設計条件)を、機能要件及び性能要件として示すものです。「あるか無いか」は、機能要件です。「どれくらい」は、性能要件です。
難しく考える必要はありません。業者に実現を求めたい結果(ご質問では、何かのプラントでしょうか)をしっかりとイメージして、「このようなものを創り上げて欲しいんだ。」ということを、わかり易く伝えようとする工夫が大事です。「性能仕様書」には特段の様式などありませんから、機能要件と性能要件を、思い浮かんだ順に箇条書きで並べればOKです。
例えば、ご自宅を新築される場合には、建設業者に、「このような立地条件でこのような広さの土地に、住宅を建てたい。坪数は、これくらいにしたい。二階建ての洋風でクラシックな感じにしたい。二階には、バルコニーを設けたい。明るくて開放的なリビングにしたい。木造、鉄筋(鉄骨)コンクリート、のどちらでも良い。玄関は南向けにしたい。2台分の車庫を設けたい。・・・」などの希望を伝える必要があります。建設業者は、この「希望」に基づいて詳細設計を行います。詳細設計上、まだ足りないところについては、「ここはどうしたいですか?」と、更に「希望」を聴いてきます。
このような「発注者としての希望」を箇条書きにしたものが、「性能仕様書」です。ここで、「二階にバルコニーを設けること」は、機能要件(あるか無いか)です。また、リビングを「明るくて開放的にすること」は、性能要件(どれくらい)です。このように、「性能仕様書」については、難しく考える必要はありません。繰り返しになりますが、業者に実現を求めたい結果をしっかりとイメージして、「このようなものを創り上げて欲しいんだ。」ということを、業者にわかり易く伝えようとする工夫が大事です。
「性能仕様書」を作った次は、業者探しです。「◯◯プラント建設工事」などのキーワードで、インターネット検索してみて下さい。大小とり混ぜて、業者がリストアップされますから、各業者の得意分野や所在地・規模などを考慮して、複数の業者を選んで下さい。そして、選び出した業者に電話して、「性能仕様書」を郵送又はFAXして、見積もり(工期と費用)を依頼して下さい。関心を示した業者は、「現場を見たい。」などの反応がありますから、業者がしっかりとした見積書を作成できるまで、現場を見せるなどして、設計の前提条件を満たしてやって下さい。
最後には、複数の業者から徴収した見積書(見積もりの日付、件名、有効期間、責任者の署名捺印が漏れていないことを確認して下さい。)を比較検討することにより、慎重に業者を決めることが大事です。
大型プラントにも、化学プラント、清掃プラント等々、色々あります。どのようなプラントであっても設計・施工できる業者は、見つけられない(存在しない)と思います。そこで、清掃プラントを例としてお話ししますと、一昔前までは、設計と施工を分離して発注していました。すなわち、建設コンサルタント会社やエンジニアリング会社に、清掃プラントの建設に必要な詳細設計図面と詳細施工図面の作成を (見積もり合わせや競争入札により、最も安価に設計してくれる業者を選定した上で) 委託していました。この成果物をまとめた発注仕様書により、競争入札を実施して施工業者(清掃プラントメーカー)を選定していました。
このように、設計と施工を分離して発注しますと、一見すれば、設計発注段階と施工発注段階の二段階にわたって競争原理が働くように思えます。しかし、これは幻想に過ぎません。と、言いますのは、設計委託(この委託金額は、施工請負金額に比べて桁違いに少額です。)の成果物が詳細設計図面と詳細施工図面であるため、施工発注時には、特定の施工業者(清掃プラントメーカー)が圧倒的に有利となる場合が多く、これでは、設計委託金額に比べて桁違いに多額な施工請負金額の縮減が、叶わなくなるからです。
次に、大型プラントではないのですが、大規模プロジェクトにおける設計・施工分離発注が悪しき結果を招いた実例を二つご紹介します。
一つ目は、新国立競技場建設計画です。設計と施工を分離発注する前提で進めた当初の計画は、設計段階における工事費概算見積額が増加する一方となり、2年間にわたる設計期間と60億円もの設計委託費用を全てドブに捨てる形で白紙撤回されました。この後、「性能仕様書」を発注者自らが(外部委託することなく)非常に短期間で作成し、この「性能仕様書」に基づき、設計と施工を一括して(しかも、発注者が希望する...
予算額の範囲内で、また、発注者が希望する工期内で)受託できる業者を募って選定しました。その結果、現在、何の滞りもなく建設工事は進捗しています。
二つ目は、豊洲新市場建設です。市場棟の建設では、設計と施工を分離発注しました。結果はご存知のとおり、ひどいとしか言えません。発注の元締めである中央市場長が知らない内に地下空洞が設計・施工されたり、建設費用が当初予定の三倍近くに膨らみました。今となってはタラレバの話ですが、豊洲新市場建設が、白紙撤回後の新国立競技場建設計画のように「性能仕様書」で設計と施工が一括発注されていたならば、このようなひどい結果には絶対にならなかったと思います。
この二つの実例から、大型プラントについて、品質を確保した上でできる限り安価に実現するには、設計・施工分離発注ではなく、「性能仕様書」に基づく設計・施工一括発注をされることを、是非お勧めします。
なお、設計・施工一括受注業者の一発選定には非常に不安が残るかと思いますが、「性能仕様書」により見積もり提出を依頼する際に、見積もり金額と予定工期に加えて、概要設計の提出を求められたら良いのではと思います。「性能仕様書」を見てヤル気を出した業者であれば、無償でわかりやすいビジュアルな概要設計書を提出してくれるはずです。