今回は、次のような事例により、現場改善活動について解説します。
現場改善活動はマネジメントの課題が大きく、改善活動をノルマや義務、押しつけではなく、改善をいかに自主的活動にするかが、マネジメントの重要な役割です。チームで楽しい改善を実施できるような職場風土を作る手法・手順・組織改革などを解説します。
1. 事例とする工場
工場は約80名の規模、最近、現場の改善活動で士気が上がらず、作業者へのアンケートで次のような内容が戻ってきました。
- 仕事が忙しい時に改善提案の提出期限が近づくと憂鬱になる。
- 改善が楽しいと思ったことはない。
- 改善は自分たちに課せられた試練だと思っている。
- 仕事と改善を両立するのは至難の業だ。
2. 現場改善の第1歩
現場を見たり、その雰囲気に浸ってみないと適切な答えが出ないのが、現場改善です。現場には、地域性、会社の文化・風土などいろいろなものが絡み合っていますので、士気を上げるためには、そのことも意識することです。
事例では、会社のマネジメントの部分が大きいというところで、TOPダウンの指示命令を感じます。マネジメントの部分の課題では、会社経営への反映を期待されていると思いますが、それに終始すると硬直化、あるいはマンネリ化してしまうます。そして義務的になり、柔軟的な発想、考えが出て来ない、こうなると組織も硬直化し、成長できません。
3. 現場改善の具体策
(1) 改善提案は従業員の経営参加の場という意識
改善提案は、何らかの形で会社に貢献する。つまり、従業員が改善提案を通じて経営に参加するという意識があるかどうか。これは、社員に仕事の一環ということも含め教育しておくことも大切です。
(2) 着眼点
着眼点としては、合理化、効率化、原材料の節減、コスト削減、疲労軽減、工程削減、品質向上、短納期化、クレーム削減、あるいは仕事上でやりにくいことや困っていることなど多々あります。いずれもQCDに繋がることで、会社の利益貢献、お客様、あるいは次工程を意識した生産活動になるはずです。併せて安全の向上にも着眼しましょう。こういうことを社員の皆さんは意識しているかですが、多面的に物事を見たり考えたりすることができれば楽しく活動できる。そして真剣に取り組むことができると思います。作業者皆を巻き込む、あるいは皆に考えてもらいたいという場合は、ブレインストーミングでやっても良いかもしれません。
(3) 評価とフィードバック
次に、どんな評価をされているのか、提案されたものは結果を必ずフィードバックしているかですね。個人やグループの改善効果を金額、時間など数字で評価しているか。その大きさで表彰する、またそれらの累積により、ある目標点に達したら表彰するなど。
これは、提出された改善を効果金額(時間も)に換算し、ランクにより得点を与える。それを毎月表彰する。またその累積点や提案件数で年間表彰するなど。そして表彰時は、より上位職の方に表彰式に参加してもらう。そうすれば、励みになったり継続的な活動になるでしょう。レベルの高い内容は、技術的な評価、あるいは、特許(実用新案、意匠含む)などへの出願をすることです。
(4) 褒めるということ
人は褒められると良い気がします。そこで、また褒められたいという意識が生まれ、継続性が出てきます。まずオーバーに褒めることです。評価が高いものは、掲示するなどして開示や周知する。その人は評価された気持ちもあり、また提案するようになります。
私は、クリーン化の現場診断・指導を国内海外の現場で数多くやってきました。国内でも、改善された箇所に“改善事例”などと表示がしてあり、何をどうしたのか、その成果は、などとポイントが簡潔に説明されているところがありました。暫く立ち止まってそれを見ていると、その改善をした人が出て来て説明してくれました。
自分がやったことですから、自信をもって発表できる。そこで、相手に理解してもらえるような説明の仕方、プレゼンテーション力がついていきます。
そこで、私も、素晴らしいですね。とか、なるほどなどと褒める。そして、ここはこんな風にするともっとよくなりますね。つまり褒めながら知恵をつけるとまた違う考え方、見方ができるようになり、多面的にモノを見る人に育ち、改善も完成度を高められます。改善活動を続けながら、人を育てるという人財育成の例です。
繰り返しになりますが、表彰時になるべく上位の方、例えば社長が立ち会うと良いです。そしてその改善現場を社長が巡回し、実際に見て話しかけたり褒める。そのようなことをしているうちに、改善の常連も出てくると思います。
東南アジアにも何度も指導に行きましたが、どこでも褒めることは効果があると言っていました。褒...
めることは、ある意味認められるということですから、一度褒めると、次から次へと報告してくるようです。社員との関係が近くなりますから、現場にアンテナを張ることも意識せずにできますね。
(5) 安全について
安全については、安全教育も必要です。ハインリッヒの法則などを説明し、ヒヤリ、ハット段階で未然に防止する必要がありますが、これは作業している人が一番よく分かっていますから、それらを改善提案として拾い、即対策しておきたい。
これは、事故・災害の未然防止だけでなく、拾った改善に会社側がすぐ反応してくれたということで、さらに沢山出てくることが期待できます。そうこうしているうちに、働く環境が徐々に向上し会社と社員の関係も良くなり、やがて何でも言える関係が出来てきます。会社対社員ではなく、一体化してくる。いろいろなもののベクトルが合う、風通しの良い会社になるでしょう。
(6) 事例の活用
さらに他社事例が入手できれば、それらを紹介するとか、社内の優秀な事例は、冊子にして、社員教育に使っても良いと思います。記録に残すことは、過去の内容が又提案された場合、前の内容が継続されていないということもわかります。