品質管理 中国工場管理の基本事例(その19)

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中国工場

 

◆ 品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その9)

1. 中国工場、品質の問題点を生産の3要素で捉える

 中国工場で生産するときにどの企業でも直面するのが品質問題です。

 日本で問題なく生産していたものでも中国生産では同じ品質になりません。中国工場の品質はなぜ悪いのかを生産の3要素(3M)を切り口として考えます。生産の3要素とは、ご存じの通り、人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)のことです。前回は、機械(Machine)について考えました。今回は、設備・機械のオペレーションノウハウの続きです。

 

(1)消耗品や摩耗品の管理

 消耗品や磨耗品の管理も重要です。特に摩耗品の部品管理が不十分で不良になったという事例を中国で数多く経験しました。日本の工場では問題なくできていた摩耗品の部品管理が、中国工場ではできていませんでした。この管理ノウハウが落し込まれて、指導できていないのです。今一度、自社工場での摩耗品の検査管理体制をチェックしてみてください。

(2)メンテナンス管理

 機械の可動率(べきどうりつ)を上げる、品質不良を発生させないためには、メンテナンスがとても重要な要素になります。特に最近は日系中国工場でもコストの関係で中国製の設備や機械を導入するケースが多くなっています。

 日本製の設備や機械を入れることができれば問題の発生は少ないのですが、中国製機械の信頼性は日本製のそれと比べるとまだまだ劣っています。こうした中国製の機械を使いこなすには、日頃のメンテナンスが余計に重要になります。

 ところが、中国工場では、日常点検や定期点検を含むメンテナンスをやっていない、その重要性を理解していないために省略してしまうこともあります。

 これは中国企業に多くみられますが、日系企業でも起きています。日本人駐在員は日常点検やメンテナンスの重要性を認識していたとしても、実際の作業は中国人が行いますので、日本人はそれがちゃんとやっているかまで確認できないのが実態です。

 ある日系中国工場で実際にあった話ですが、油圧機械のオイル定期交換が会社全体の経費削減を担当していた総務部の中国人経理の指示で実施していないことが分かりました。その総務部の中国人経理は、油圧機械に特に問題が起きていなかったので、コストのかかるオイル交換を見送らせていたのです。日本人駐在員はそんな細かいことまでは見ていないので、その事実に気が付いていませんでした。

 メンテナンスは故障を予防するために行うもので、この中国人経理はその意味を理解できていなかった訳です。問題が起きたら対処する、これは中国の人でもやりますが、未然防止をKPIとすることは、中国の人は苦手といえるでしょう。

 

2. 中国工場にノウハウをどこまで持っていくか

 中国に生産を移管するときに先ず考えなければならないことのひとつが、機械の技術的・生産技術的なノウハウをどこまで中国に持っていくかということです。こうしたノウハウは、日本で生産していたときには10年20年かけて培ったもので容易に伝えられるものではないでしょう。

 極論してしまうと、日本で育った職人や匠(たくみ)といわれる人たちと同じレベルの中国人を育成するのは、難しいと言...

中国工場

 

◆ 品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その9)

1. 中国工場、品質の問題点を生産の3要素で捉える

 中国工場で生産するときにどの企業でも直面するのが品質問題です。

 日本で問題なく生産していたものでも中国生産では同じ品質になりません。中国工場の品質はなぜ悪いのかを生産の3要素(3M)を切り口として考えます。生産の3要素とは、ご存じの通り、人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)のことです。前回は、機械(Machine)について考えました。今回は、設備・機械のオペレーションノウハウの続きです。

 

(1)消耗品や摩耗品の管理

 消耗品や磨耗品の管理も重要です。特に摩耗品の部品管理が不十分で不良になったという事例を中国で数多く経験しました。日本の工場では問題なくできていた摩耗品の部品管理が、中国工場ではできていませんでした。この管理ノウハウが落し込まれて、指導できていないのです。今一度、自社工場での摩耗品の検査管理体制をチェックしてみてください。

(2)メンテナンス管理

 機械の可動率(べきどうりつ)を上げる、品質不良を発生させないためには、メンテナンスがとても重要な要素になります。特に最近は日系中国工場でもコストの関係で中国製の設備や機械を導入するケースが多くなっています。

 日本製の設備や機械を入れることができれば問題の発生は少ないのですが、中国製機械の信頼性は日本製のそれと比べるとまだまだ劣っています。こうした中国製の機械を使いこなすには、日頃のメンテナンスが余計に重要になります。

 ところが、中国工場では、日常点検や定期点検を含むメンテナンスをやっていない、その重要性を理解していないために省略してしまうこともあります。

 これは中国企業に多くみられますが、日系企業でも起きています。日本人駐在員は日常点検やメンテナンスの重要性を認識していたとしても、実際の作業は中国人が行いますので、日本人はそれがちゃんとやっているかまで確認できないのが実態です。

 ある日系中国工場で実際にあった話ですが、油圧機械のオイル定期交換が会社全体の経費削減を担当していた総務部の中国人経理の指示で実施していないことが分かりました。その総務部の中国人経理は、油圧機械に特に問題が起きていなかったので、コストのかかるオイル交換を見送らせていたのです。日本人駐在員はそんな細かいことまでは見ていないので、その事実に気が付いていませんでした。

 メンテナンスは故障を予防するために行うもので、この中国人経理はその意味を理解できていなかった訳です。問題が起きたら対処する、これは中国の人でもやりますが、未然防止をKPIとすることは、中国の人は苦手といえるでしょう。

 

2. 中国工場にノウハウをどこまで持っていくか

 中国に生産を移管するときに先ず考えなければならないことのひとつが、機械の技術的・生産技術的なノウハウをどこまで中国に持っていくかということです。こうしたノウハウは、日本で生産していたときには10年20年かけて培ったもので容易に伝えられるものではないでしょう。

 極論してしまうと、日本で育った職人や匠(たくみ)といわれる人たちと同じレベルの中国人を育成するのは、難しいと言わざるを得ません。

 

3. 品質管理、中国の人へどこまで指導するべきか

 前述のように日本で育った職人や匠(たくみ)のレベルを目指すのか、逆にスキルに頼らない生産方法を取り入れることで外注先を見つけて、最低限のスキルが身に付けばよいようにするのか。これを決めることが必要です。そのレベルを決めたら、どのようにして求めるレベルのスキルを中国工場、中国人スタッフに落とし込んでいくのかを考え、実践していくことになります。ここで会社の技術力・生産技術力が問われます。

 こうしたスキルや技術の落し込みをただ漠然と行って思うようにいかず、品質を落としている日系工場は少なくありません。

 

 次回に続きます。

 

 

 

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この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

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