品質管理 中国工場管理の基本事例(その20)

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中国工場

 

◆ 品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その10)

1. 品質管理、中国工場の問題点を生産の3要素で捉える

 中国工場で生産するときにどの企業でも直面するのが品質問題です。

 日本で問題なく生産していたものでも中国生産では同じ品質になりません。中国工場の品質はなぜ悪いのかについて、生産の3要素(3M)を切り口として考えます。生産の3要素とは、ご存じの通り、人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)のことです。今回は、Material(部品・材料)要因について考えます。

 

 中国に進出した日系企業ですが、当初は生産に投入する部品や原材料を日本から送り込んでいました。しかし、日本からの運賃などの費用を考えると、思ったほどのメリットが得られません。中国人の加工賃だけでは競合と差別化できなくなってきたという事情もあります。自分のところが後追いで中国に出た場合もあるでしょう。

 そのようなことから中国現地で調達できる原材料や部品を使用することになったのです。これがいわゆる工場運営の現地調達です。

 現地調達も最初は日系中国工場から買いますが、段々と外注先を広げて香港系、台湾系、韓国系企業から買うようになります。しかし、顧客からのコストダウン要求は厳しさを増すばかりなので、それに対応するため中国企業から調達を実施します。ところが、中国メーカーの部品や材料には次のような問題点があります。

  • 中国メーカー製の部品材料の品質が悪い
  • 中国メーカー製の部品材料の品質改善が思うように進まない
  • 中国メーカー製の部品材料を使う側にも問題点がある

 中国製の部材は、今まで使っていた日本製のそれに比べるとコストは安いが、品質は悪い。日本製部材ではなかった不具合があります。中国メーカーの部材を使うことで、その品質の悪さを吸収しきれずに、自社の製品・部品の品質が悪くなるのが、部材による要因です。

 このように考えると中国メーカーの部材をいかに使いこなすかがポイントとなります。実際問題として日系企業の多くはそれで苦労している訳です。

 

2. 中国メーカー製の部品材料を使こなすポイント

(1)中国メーカー部材の品質改善

 中国メーカーの部材を使う目的はコストメリットです。日本製のそれと比べて品質が同等で価格だけが安いのであれば問題はありません。ところが実際にそのような場合は稀(まれ)で、価格が安い分品質が悪かったり、レベルの落ちるものだったりすることになります。

 この問題に関しては、中国メーカーに品質をよくしてもらえればよいのですが、簡単な話ではなく日系企業の多くがここで苦労しています。中には、いくら言っても改善してくれない、何もやってくれないと諦めてしまっている会社もあるくらいです。このように改善を諦めてしまっている企業の多くは、日系の取引先と同じ感覚で中国メーカーに臨んでいるのです。実際は、日系メーカーと同じように改善が進むことはありません。

 中国メーカーと付き合っていくときに考えるべきことは、相手にいかに動いてもらうか、対応してもらうかということです。品質指導をする場合でも、そうした考え方、付き合い方をしていくことが必要です。

 もう一つ中国メーカーと付き合う際に肝に銘じておくことがあります。それは、諦めないこと、言い続けること、そして停滞させないことです。

 つまり、一度に大きな前進を望むのは無理でも、小さな前進ならできるはずなので、小さなKPIの実現を繰り返していくことが大事です。小さな前進でも長い目でみれば、大きな前進になります。これからもずっと付き合っていくならそうした視点と覚悟が必要です。

(2)使う側の問題点

 使う側の問題点としては、次の二つがあります。

 

・品質管理力不足

 部材の不具合に起因して生産された不良品を工程検査や出荷検査ではじけずに流出させてしまうなど、自社の品質管理力にも問題があるのです。

・部材評価の甘さ

 1回評価しただけで採用を決めてしまうなど、その見極めが甘い。評価したサンプルがチャンピオンサンプルだったので、量産ではサンプルよりもレベルの低いものが納入された。サンプルはアベレージ品だと勝手に思い込みがちですが、そうとは限りません。

 このようなことで中国メーカー製の部品材料の不具合が、自社製品の不具合となって顧客に迷惑を掛けて...

中国工場

 

◆ 品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その10)

1. 品質管理、中国工場の問題点を生産の3要素で捉える

 中国工場で生産するときにどの企業でも直面するのが品質問題です。

 日本で問題なく生産していたものでも中国生産では同じ品質になりません。中国工場の品質はなぜ悪いのかについて、生産の3要素(3M)を切り口として考えます。生産の3要素とは、ご存じの通り、人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)のことです。今回は、Material(部品・材料)要因について考えます。

 

 中国に進出した日系企業ですが、当初は生産に投入する部品や原材料を日本から送り込んでいました。しかし、日本からの運賃などの費用を考えると、思ったほどのメリットが得られません。中国人の加工賃だけでは競合と差別化できなくなってきたという事情もあります。自分のところが後追いで中国に出た場合もあるでしょう。

 そのようなことから中国現地で調達できる原材料や部品を使用することになったのです。これがいわゆる工場運営の現地調達です。

 現地調達も最初は日系中国工場から買いますが、段々と外注先を広げて香港系、台湾系、韓国系企業から買うようになります。しかし、顧客からのコストダウン要求は厳しさを増すばかりなので、それに対応するため中国企業から調達を実施します。ところが、中国メーカーの部品や材料には次のような問題点があります。

  • 中国メーカー製の部品材料の品質が悪い
  • 中国メーカー製の部品材料の品質改善が思うように進まない
  • 中国メーカー製の部品材料を使う側にも問題点がある

 中国製の部材は、今まで使っていた日本製のそれに比べるとコストは安いが、品質は悪い。日本製部材ではなかった不具合があります。中国メーカーの部材を使うことで、その品質の悪さを吸収しきれずに、自社の製品・部品の品質が悪くなるのが、部材による要因です。

 このように考えると中国メーカーの部材をいかに使いこなすかがポイントとなります。実際問題として日系企業の多くはそれで苦労している訳です。

 

2. 中国メーカー製の部品材料を使こなすポイント

(1)中国メーカー部材の品質改善

 中国メーカーの部材を使う目的はコストメリットです。日本製のそれと比べて品質が同等で価格だけが安いのであれば問題はありません。ところが実際にそのような場合は稀(まれ)で、価格が安い分品質が悪かったり、レベルの落ちるものだったりすることになります。

 この問題に関しては、中国メーカーに品質をよくしてもらえればよいのですが、簡単な話ではなく日系企業の多くがここで苦労しています。中には、いくら言っても改善してくれない、何もやってくれないと諦めてしまっている会社もあるくらいです。このように改善を諦めてしまっている企業の多くは、日系の取引先と同じ感覚で中国メーカーに臨んでいるのです。実際は、日系メーカーと同じように改善が進むことはありません。

 中国メーカーと付き合っていくときに考えるべきことは、相手にいかに動いてもらうか、対応してもらうかということです。品質指導をする場合でも、そうした考え方、付き合い方をしていくことが必要です。

 もう一つ中国メーカーと付き合う際に肝に銘じておくことがあります。それは、諦めないこと、言い続けること、そして停滞させないことです。

 つまり、一度に大きな前進を望むのは無理でも、小さな前進ならできるはずなので、小さなKPIの実現を繰り返していくことが大事です。小さな前進でも長い目でみれば、大きな前進になります。これからもずっと付き合っていくならそうした視点と覚悟が必要です。

(2)使う側の問題点

 使う側の問題点としては、次の二つがあります。

 

・品質管理力不足

 部材の不具合に起因して生産された不良品を工程検査や出荷検査ではじけずに流出させてしまうなど、自社の品質管理力にも問題があるのです。

・部材評価の甘さ

 1回評価しただけで採用を決めてしまうなど、その見極めが甘い。評価したサンプルがチャンピオンサンプルだったので、量産ではサンプルよりもレベルの低いものが納入された。サンプルはアベレージ品だと勝手に思い込みがちですが、そうとは限りません。

 このようなことで中国メーカー製の部品材料の不具合が、自社製品の不具合となって顧客に迷惑を掛けてしまうことが多々発生しているのです。

(3)社内の意識を変える

 中国メーカー部材を使う理由はコストメリットです。前述したように、品質が同等でコストだけが安いといううまい話はありません。コストが安い分、品質レベルが落ちます。

 品質レベルの落ちた中国部材の使用を検討するときに中国部材を見つけてきた購買部門だけが一生懸命になってもダメです。会社全体で品質レベルの落ちた中国部材を使っていくという意識をもつことが必要です。特に技術・設計部門にその意識がないと進みません。彼らは、既存の部材と同等レベルという前提で評価をしているのでOKの評価が出る訳がありません。

 日系企業は、石橋を叩いてもなお渡らないところがあります。それに比べて、香港、台湾、韓国系企業は、使えるものは使うという姿勢で対応しています。中国メーカー製の部品材料を使うことでコストメリットを得るには、それなりの苦労と覚悟、そして多少のリスクを負う必要があると考えます。

 

 次回に続きます。

 

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この記事の著者

根本 隆吉

中国工場の改善・指導に強みを持っている専門家です。 社名の「KPI」は「Key Process Improvement」のことで、工場の最も重要な工程の改善・再構築を第一の使命と考え皆様を支援します。

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