現場同士の話し合いのみで契約内容を変更 荷主と物流事業者の関係(その3)
2018-11-01
荷主と物流事業者の間で、特に現場同士の話し合いのみで契約内容を変更してしまう傾向があるようです。しかしそう簡単に契約内容を変更してしまってよいのかというと、それには問題ありと言わざるを得ません。よくあるパターンが、契約内容に含まれていない細かい仕事を荷主が物流事業者に気軽に頼んでしまうことです。
たとえば在庫報告。契約には在庫報告を実施する旨含まれていなかったとします。しかし物流事業者に保管業務を委託している荷主からしてみれば在庫報告は常識であり、あえて契約書に明記しなかったということも考えられます。このような場合、荷主から物流事業者の現場(この場合倉庫)に対して電話で日々在庫報告をFAX送信で行うように依頼することがあります。小さなことかもしれませんが、これによって物流事業者側にコストが発生します。このケースであれば人件費と通信費ということになります。
物流事業者の現場サイドも「これくらいならサービスで(無料で)対応してもよいだろう」と考え、気軽に受けてしまうことが多いようです。でもこのようなことが重なると、物流事業者の収支にも影響が出てきます。ふたを開けてみたら儲からない事業所があり、その要因が追加業務を無料で行っていた、というようなことが起こりかねません。
日本は欧米に比べて「契約」に関する意識が薄いようです。ビジネスはすべてお互いの決め事である「契約」によって成り立っています。ですから、取引内容を変えることは契約内容を変えることです。そしてほとんどの場合、契約内容が変われば支払価格も変わるはずなのです。
仮にわずかな金額であったとしても、契約金額は変えなければなりません。現場サイドが勝手に無償で仕事を引き受けることなど、コンプライアンス上あってはならないことです。今見直すべき取引条件の中にこのような事象があればぜひ修正していきたい...
ものです。ただし一点判断が難しいことがあります。物流事業者側から「無償で安請け負いした仕事」が何年も、場合によっては10年以上にもわたって行われてきた場合です。
このようなケースでは今までも価格見直しの機会は多々あったわけですから、それを行ってこなかったということは、お互いの合意があったと考えられるのです。つまり今の取引価格にそのサービス分が含まれているという解釈です。
次回に続きます。