工場物流の課題と解決策

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1. 生産工程への貢献度

 サプライチェーンのちょうど真ん中に位置するのが「モノづくり」プロセスです。サプライチェーンマネジメントの重要機能である生産管理がモノづくりを支えます。モノづくりといえば工場。そして工場といえば工場物流です。ここでは、工場物流の注意点についてお話したいと思います。また、工場物流の範囲についておさらいしておきましょう。まず工場に部品や資材が入ってくるところから。ここの物流を調達物流と呼びます。大抵の場合、サプライヤーがトラックを仕立てて納入してくれますので、皆さんが調達物流を意識することは少ないかもしれません。
 
 しかし、調達部品在庫は工場の効率に大きな影響を及ぼします。多すぎる在庫は場所を食うとともに、余分な管理が発生します。次に入ってきた部品等を加工しますが、そのために調達部品等を生産工程に届ける仕事があります。これを工場内物流又は構内物流と呼びます。構内物流は部品等を届ける供給業務以外に、容器を届けたり、完成品を引き上げたりし、出荷準備を行います。構内の在庫管理はもちろん、容器管理や物流機器管理など構内物流はさまざまな「管理業務」を担っています。
 
 では構内物流というと皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。日本では構内物流に限らず、物流全体が軽視される傾向にあります。したがって構内物流についてもあまり興味が示されず、肩身が狭い思いをされている担当の方もいらっしゃるかもしれません。そこで構内物流について、どのような仕事をしていくべきかについて確認をしておきたいと思います。
 
 まず何はともあれ「生産工程に貢献できているか」について確認する必要がありそうです。なぜなら工場の本業はモノづくりであり、それを行っているのが生産工程だからです。生産工程への貢献度を見るには、次のような定義をしてみるとよいと思います。「生産工手の仕事はモノの加工であり、それ以外の作業はムダ」、つまりこのような視点で生産工程を見てみればいろいろなことに気づくことでしょう。
 
 SCM
 

2. 物流のプロの対応

 生産工程を見ているといろいろなことに気づきます。モノの加工以外に次のような動作や作業を行っていることがわかります。
 
・部品の入れ替え
・空容器の処理
・部品取り時の「反転」
・部品取り時の「絡みほぐし」
・部品取り時の「歩行、振り返り、伸び上がり」
 
 これは一例ですが、いずれも物流作業または物流に起因するムダな動作です。もしこのようなムダな動作が生産工程に発生していたとしたら、構内物流は満足いく仕事ができているとは言い難いと思います。
 
 物流の関心度が低いという理由の一つはそもそも物流のことを良く知らないから、ということが挙げられます。しかし仕事のパフォーマンスが物流の地位を低めていることはあり得ます。たとえば上記のような状況を発生させているようでは、物流を評価して欲しいといってもそれは無理な話、ということになりかねません。工場物流での大きな課題が「生産工程への貢献」です。まずこの貢献の程度を調べ、その向上を図らなければならないのです。
 
 よくこれらのムダを解消しようとすると、構内物流の工数が増えるからやりたくない、という声が聞こえてくることがあります。たしかに部品の入れ替えや空箱処理、部品取り時のムダ解消に向けての施策を構内物流が行うと、今までより工数は増えます。構内物流部門も工数低減目標を課されている場合、特に反対の声が上がります。だからといって、今の生産工程のムダを放置しておいてよいかというと、それは「あり得ない」ということになるでしょう。
  
 もし、物流のプロを自称するのであれば、生産工程に物流作業を行わせることはないでしょう。いったん工数が増えたとしても、生産工程を改善しましょう。次に工場内の在庫について見ていきましょう。工場では常に在庫削減活動を推進していますが、その効果は着実に表れていますでしょうか。物流として対応すべきにもかかわらず、なかなかできていないのが「調達部品在庫削減」です。その理由は調達物流をサプライヤーに任せきりにしているからです。
 

3. 調達部品在庫削減のための調達物流

 工場物流において、調達部品は「届くもの」と考えた瞬間に思考停止に陥ります。日本の商習慣では買ったものは売り手が届けてくれるという考え方があります。工場でもこの例外ではなく調達部品はサプライヤーが物流を行い、皆さんの会社まで届けてくれます。皆さんが何をすることでもなく、です。日本で物流コスト調査を行うと、95%程度の会社が「調達物流コスト」を認識していません。なぜなら自分たちで物流コストを負担していないからです。
 
 しかし、工場では物流コスト削減や生産リードタイム短縮を目標とし、調達部品在庫を削減したいと思っているはずです。自分たちで物流を行っていないと調達部品在庫削減には限界があると思います。調達部品在庫を削減するには調達頻度を増やし、調達ロットを小さくする必要があります。これをやろうと思うと、一般的にサプライヤーにそれを依頼するでしょう。しかし、サプライヤーは物流コストが増えるという理由で渋るかもしれませ...

1. 生産工程への貢献度

 サプライチェーンのちょうど真ん中に位置するのが「モノづくり」プロセスです。サプライチェーンマネジメントの重要機能である生産管理がモノづくりを支えます。モノづくりといえば工場。そして工場といえば工場物流です。ここでは、工場物流の注意点についてお話したいと思います。また、工場物流の範囲についておさらいしておきましょう。まず工場に部品や資材が入ってくるところから。ここの物流を調達物流と呼びます。大抵の場合、サプライヤーがトラックを仕立てて納入してくれますので、皆さんが調達物流を意識することは少ないかもしれません。
 
 しかし、調達部品在庫は工場の効率に大きな影響を及ぼします。多すぎる在庫は場所を食うとともに、余分な管理が発生します。次に入ってきた部品等を加工しますが、そのために調達部品等を生産工程に届ける仕事があります。これを工場内物流又は構内物流と呼びます。構内物流は部品等を届ける供給業務以外に、容器を届けたり、完成品を引き上げたりし、出荷準備を行います。構内の在庫管理はもちろん、容器管理や物流機器管理など構内物流はさまざまな「管理業務」を担っています。
 
 では構内物流というと皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。日本では構内物流に限らず、物流全体が軽視される傾向にあります。したがって構内物流についてもあまり興味が示されず、肩身が狭い思いをされている担当の方もいらっしゃるかもしれません。そこで構内物流について、どのような仕事をしていくべきかについて確認をしておきたいと思います。
 
 まず何はともあれ「生産工程に貢献できているか」について確認する必要がありそうです。なぜなら工場の本業はモノづくりであり、それを行っているのが生産工程だからです。生産工程への貢献度を見るには、次のような定義をしてみるとよいと思います。「生産工手の仕事はモノの加工であり、それ以外の作業はムダ」、つまりこのような視点で生産工程を見てみればいろいろなことに気づくことでしょう。
 
 SCM
 

2. 物流のプロの対応

 生産工程を見ているといろいろなことに気づきます。モノの加工以外に次のような動作や作業を行っていることがわかります。
 
・部品の入れ替え
・空容器の処理
・部品取り時の「反転」
・部品取り時の「絡みほぐし」
・部品取り時の「歩行、振り返り、伸び上がり」
 
 これは一例ですが、いずれも物流作業または物流に起因するムダな動作です。もしこのようなムダな動作が生産工程に発生していたとしたら、構内物流は満足いく仕事ができているとは言い難いと思います。
 
 物流の関心度が低いという理由の一つはそもそも物流のことを良く知らないから、ということが挙げられます。しかし仕事のパフォーマンスが物流の地位を低めていることはあり得ます。たとえば上記のような状況を発生させているようでは、物流を評価して欲しいといってもそれは無理な話、ということになりかねません。工場物流での大きな課題が「生産工程への貢献」です。まずこの貢献の程度を調べ、その向上を図らなければならないのです。
 
 よくこれらのムダを解消しようとすると、構内物流の工数が増えるからやりたくない、という声が聞こえてくることがあります。たしかに部品の入れ替えや空箱処理、部品取り時のムダ解消に向けての施策を構内物流が行うと、今までより工数は増えます。構内物流部門も工数低減目標を課されている場合、特に反対の声が上がります。だからといって、今の生産工程のムダを放置しておいてよいかというと、それは「あり得ない」ということになるでしょう。
  
 もし、物流のプロを自称するのであれば、生産工程に物流作業を行わせることはないでしょう。いったん工数が増えたとしても、生産工程を改善しましょう。次に工場内の在庫について見ていきましょう。工場では常に在庫削減活動を推進していますが、その効果は着実に表れていますでしょうか。物流として対応すべきにもかかわらず、なかなかできていないのが「調達部品在庫削減」です。その理由は調達物流をサプライヤーに任せきりにしているからです。
 

3. 調達部品在庫削減のための調達物流

 工場物流において、調達部品は「届くもの」と考えた瞬間に思考停止に陥ります。日本の商習慣では買ったものは売り手が届けてくれるという考え方があります。工場でもこの例外ではなく調達部品はサプライヤーが物流を行い、皆さんの会社まで届けてくれます。皆さんが何をすることでもなく、です。日本で物流コスト調査を行うと、95%程度の会社が「調達物流コスト」を認識していません。なぜなら自分たちで物流コストを負担していないからです。
 
 しかし、工場では物流コスト削減や生産リードタイム短縮を目標とし、調達部品在庫を削減したいと思っているはずです。自分たちで物流を行っていないと調達部品在庫削減には限界があると思います。調達部品在庫を削減するには調達頻度を増やし、調達ロットを小さくする必要があります。これをやろうと思うと、一般的にサプライヤーにそれを依頼するでしょう。しかし、サプライヤーは物流コストが増えるという理由で渋るかもしれません。
 
 これを無理に押し付けることは問題があります。であれば「自分たちで調達物流を行う」という発想を持ったらいかがでしょうか。つまり工場でトラックを仕立ててサプライヤーに必要な分だけ取りに行くのです。実際、工場は荷主となり、運送会社に輸送をアウトソースすると思いますがやることは同じです。自ら引き取りに行くことで物流を行う。つまり自分たちで責任を持つことで初めて調達在庫を減らすことができるのです。
 
 工場では完成品を出荷し、得意先まで届けます。この時は皆さんが荷主になって運送会社に輸送を委託していることでしょう。つまりすべて自分たちで物流をコントロールしているので、自分たちが狙ったことはできていることでしょう。ただし得意先の要望を満たすことが容易でない場合もあります。ある時は得意先に自分たちの要望を伝えることも必要でしょう。少なくとも、出荷場の環境整備をしっかりと行うことで、出荷物流品質を向上させることは可能です。出荷トラックを待たせないように上手く生産コントロールを行うことも工場の役割です。
 
 いかがでしょうか。工場物流の課題を解決するために、すべてを自分たちのコントロール下に置くことは重要です。物流に責任を持ち、自らが改善していく体制を整備しましょう。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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