マシニング加工:リーマの下穴加工について

 
  
 
 普段当たり前に加工されているリーマの下穴加工ですが、いろんな会社さんを回っておりますと、実は皆さんバラバラな方法をとっていることが多いです。そこで、今回は、リーマの下穴加工についてまとめてみたいと思います。
 

1. リーマの下穴加工

 
 私の拠点であります、ここ中部地方の加工屋さんでは、主に下記の4つ、いずれかの方法でリーマの下穴加工を行っているようです。
 
 例えば、φ10リーマの下穴加工を例では
 
 
 上記の4番目をやっているところは稀ですが、何とか高い位置精度を出したいとき、苦肉の策で何とか対応している加工メーカーを見たことがあります。やはり最も多いのは、1番目のパターンではないでしょうか。
 
 この方法で怖いのは、ハンドリーマよりも切削性の良いブローチリーマを使ったとき、しかも下穴ドリルの穴が曲がって加工されているときに、それに倣いリーマの位置精度がズレて加工されてしまうことです。そのドリル穴の曲がりを矯正するために、上記の2番目や3番目の方法がとられています。実際に、それを行っている方から、そうした意図だと聞いたこともあります。
 
 特に上記の3番目は、2番目のように、矯正するためのφ9.8の穴加工を続けてドリルで行ってしまうと、曲がった穴がまっすぐ矯正されず、追従して曲がったまま追加工をするだけになってしまうことを懸念し、切削機能を持つエンドミルの方で追加工するという意図があります。では、下穴の矯正加工をドリルとエンドミルで行うことに違いはあるのでしょうか。
 
 近所の公設試験研究機関に確認したところ、ほとんど違いはないとのことでした。ただし、ドリルよりもエンドミルの方が、芯の太さが太い分だけ、径方向の加工負荷による工具たわみが少なく、下穴曲がりが少なくなるのではないか、とのことでした。実際には、ハイスドリルの場合118°の先端角があり、軸方向と径方向の負荷をバランスしているドリルと、フラットエンドミルで縦突きして行う穴加工の場合では、切削負荷のかかり方も異なります。
 
 直進的な穴加工について、フラットエンドミルによる穴加工は、ドリルよりも直進方向の切削機能は劣ると思いますが、下穴曲がりの矯正という点においては、ドリルよりも縦方向(軸方向)の負荷(背分力)を中心に加工する分、先に加工されている下穴の曲がりに追従していくことは少なくなると思われます。これは、旋盤の内径の中ぐり加工においては、ワークの軸方向に直角な刃先形状で切削したほうが、バイトの倒れ・ビビリが少ないことと同様の考え方だと思います。(外形旋削のように、45°形状の刃を使うと、背分力が大きくなり、ワークやバイトのビビリが起きやすくなる)
 

2. 位置精度を配慮したリーマの下穴加工法

 
 リーマ径よりも1ミリほど小さい径で、ドリル加工を行う方法です。下穴曲がりの矯正のための追加工は、できるだけ芯の太いフラットエンドミルで穴加工を行います。この場合の工具径は、使用するリーマが推奨するものを使います(通常は直径でマイナス0.2~0.5ミリ)。
 
 ここで使っているフラットエンドミルは、2枚刃よりも4枚刃のエンドミルの方が、芯は太いので、切りくずの出方、刃が多くなることによる過度な切削抵抗の問題がなければ、下穴曲がりの矯正の点では、優れているということになります。
 
 しかし、超硬のドリルがよく使用されるようになった現在、上記2番目の工程は、超硬ドリルを使用することで、上記1番目の工程に集約できると考えられます。超硬ドリルのヤング率、巧折力を考えると、ハイスドリルと比較して、圧倒的に下穴曲がりが少なくなると考えられるためです。いきなり上記1番目の加工で済ませるということですので、φ10リーマの下穴ということなら、φ9.7もしくはφ9.8の超硬ドリル一発で済むということになります。
 
 複数の工具を使わない分、加工時間、段取り時間、マシニングセンタ...
ーのマガジン数の制約などについて、多くのメリットがあります。リーマ加工の品質は、下穴で8割決まると言った工具メーカーの方もおられましたが、実際、特に位置精度については、下穴加工の影響は大きいと思われます。
 
 そもそもリーマは、バニッシュ効果や、穴をきれいな形で仕上げる機能を重視しており、下穴の曲がりを切削で直しながら、ガシガシ切削していくものではないと思われます。ですので、下穴の加工の段階で、しっかり位置精度と穴形状を出しておくことは重要だと思います。
 
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