研究開発の進め方とは

    

1. 研究・開発の流れ

 私の行っている技術分野では以下のような流れで商品化されます。

材料研究
      ↓
プロセス研究(材料を作るための製造技術)
      ↓
デバイス化研究/開発(材料をデバイス化してそれなりの形にする)
      ↓
システム化研究/開発(他の部分と組み合わせて一つの商品としてくみ上げる)

 例をあげると、新しい透明導電材料の研究開発 → それを作るためのプロセス研究 → それを用いた液晶素子の開発 → その液晶素子を用いたディスプレイ のような流れです。

 材料研究から商品が出るまで10年ぐらいかかります。私の経験で短いのものは、まったく新しい材料の開発をスタートしてから4年でした。気の遠くなるような時間がかかります。私の専門は材料とそれを作るプロセスの開発です。しかし、デバイスやシステムのイメージがないと、初期の段階から間違った方向に研究を進めてしまいます。

 以前、書いた「石ころからネックレスが想像できるか?」ということが重要となってきます。

 基礎研究とはいえ、最終製品のイメージを持って研究開発することが、間違いの少ない(寄道しなくていい)研究開発になります。また、イメージを持つことで、課題が明らかになり、研究の立ち位置がわかります。場合によっては全く別の商品につながる場合もありますが、イメージを持つことで別のイメージが膨らむこともあるのです。

 工学系の研究開発は比較的上記のような考えで進めやすいのですが、理学系の場合もできるだけ広い出口のイメージを持ち、さらに具体化して研究することがいいのではと私は思います。

2. 材料研究の面白さ醍醐味

 モノづくりの研究の流れとして、材料研究→プロセス開発→デバイス開発→システム化→商品 という流れになるという話を前述しましたが、材料研究はその開発の流れの最も川上にあり、すごい材料ができてしまえば、その後の流れ、市場が大きく変わる可能性があります。少し、山師のようですが一発逆転のだいご味があります。

 中村修二先生のGaNに関しても、ひとつスゴイ材料が出来上がると、その新しい用途が生まれ、新しいデバイス開発やシステム(たとえばブルーレイや照明など)開発がおこなわれ、さまざまな大きな市場が生まれます。

 緑色レーザーに関しても、光の波長変換素子やその材料開発が不要となり、小型化や低コスト化が可能となると予想されます。すなわち、これまで緑色のレーザーを作っていた人たちは、波長変換素子を使ってデバイス化していたのが、材料で緑色が実現されたため、その部...

分の仕事がなくなってしまいます。デバイス化で苦労していた部分が一気に解消されるようなイメージです。

 このように、新しい材料はそのあとの工程を丸ごと変えてしまうようなインパクトを持つことがあります。さらには、従来にない市場が開ける可能性もあります。一方で、世界を変えるような新材料の開発というのは容易ではありません。

 

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