1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その5)
前回の赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その4)に続いて解説します。
◆ 労務管理・リスクマネジメント(その1)
今回は、中国に赴任した方が知っておくべき基本的な労務管理、そして注意すべきリスクマネジメントについて書きたいと思います。
はじめは労務管理についてです。労務管理で覚えておくべきことは、中国の労働法や自社工場のある地域に適用される労働契約条例の主だった部分を理解することです。特に中国の場合、省や市、鎮で労働契約に関する決まりが異なるので注意が必要です。
中国でも労働者の権利意識が高まってきており、法律も労働者側に立ったものに変わってきています。これは良いとか悪いとかの問題ではなく時代の流れで、中国は日本や欧米の後を追っているに過ぎません。こうした時代の流れを汲みとり、法律の改正内容をしっかり把握して対応していかなくてはなりません。
みなさんご存じだと思いますが、従業員との雇用契約において有期契約の場合、3回目には無期契約にしなくてはならなくなりました。1年契約であれば、3年目には無期契約となります。駐在員の中には、従業員との契約期間は1年が普通で、それしかないと思っている人が多いようでした。実はそんなことはなく2年や3年という期間とすることもできます。契約期間をどうするかは、会社としての方針を持つことが必要です。
また、解雇にも十分注意してください。中国は日本に比べて簡単に解雇できるようなイメージを持っていると思います。確かにそのような面はありますが、気をつけないとストライキに繋がるなど思わぬトラブルを引き起こすことになります。ストもそうですが、社内の人間ではなく外部の人間が煽(あお)るケースが多いので、そうした人間に付け込むスキを与えないようにすることが大事です。
具体的には、法令に則(のっと)った処置とすること。そして、そのことを従業員に十分周知することです。可能であれば、解雇ではなく契約更新をしないことで対応したいところです。解雇する場合、中国人の人事労務責任者に処置に問題がないことをよく確認するようにしてください。
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少し前の話になりますが、ある日系工場ではリーマンショックによる受注の急減に対応するために従業員のリストラを実施しました。実施にあたっては事前に関係政府機関にも説明をするなどしていましたが、大幅な人員整理だったために解雇通告をきっかけとして大規模な労働争議に発展してしまう事態になりました。幸い事前に政府機関に説明していたことで、地元政府が調整役を果たしてくれ、大きな被害が出ることなく収束できたことは幸いでした。
次回に続きます。