赴任者のために 中国工場管理の基本事例(その10)

 

1、赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その8)

 前回の赴任者のための現地・中国人社員のマネジメント(その7)に続いて解説します。

◆ 労務管理・リスクマネジメント(その4)

 このシリーズの最後である今回は、通訳に関するリスクについて書きたいと思います。

 

 中国で仕事をする上で「通訳にもリスクがある」と認識することが必要です。

 異国の地での仕事には、大なり小なり言葉の壁というものが存在します。その存在をしっかり認識しましょう。多分みなさんには通訳が付くと思いますが、それで言葉の壁がなくなるということではありません。もちろん中国語がペラペラで通訳不要という方もいるでしょう。それは全体としてみれば少数だと思います。

 繰り返しますが、通訳を使っても言葉のリスクや問題は存在します。それは通訳側の問題の場合もありますし、通訳を使うこちら側の問題の場合もあります。そういう意味では、通訳を使いこなすのも中国で仕事をする上で大事なノウハウの一つです。

 

 伊藤忠商事は中国で成功を収めていますが、その要因の一つはこの言葉の壁・通訳リスクを正しく認識して対処したためといわれています。

 こちらの言うことが正確に伝わるか伝わらないかは通訳の技量によって決まる部分もあります。皆さんが頭に入れておくべきことは、通訳は万能ではない、通訳を100%信用するのは危険だということです。80%伝わっていれば御の字で、通常は60%くらいと考えるべきです。ですので、常にこちらの意図が相手である中国人に正しく伝わっているかに注意を払う必要があるのです。

 

 こちら側に起因する通訳リスクの代表的なものは、日本人同士で話している感覚で通訳に対して話をしてしまうことがあります。日本でよく使われている口語を何気なく使ってしまいがちですが、通訳は全く分かっていません。

 例えば「ハードルが高い」、「パクる」などは理解していないので使ってはいけません。また、日本人独特の曖昧(あいまい)な表現「検討の余地がある」なども、そのニュアンスを通訳が理解するのは難しいと考え、使わないようにします。

 

 他にも通訳を使った会議で中国人に評判の悪いことの一...

つに、日本人は議論が白熱してくるとつい通訳と議論をしてしまいます。本当の議論の相手は通訳ではなく、その先にいる中国人であることを忘れてしまうのです。また、こうした議論をしている時に通訳が自分の意見を入れて訳してくることがありますので、これも注意が必要です。
 中国に赴任した方は、このシリーズで紹介したリスクがあることを頭に入れた行動をぜひ心掛けてください。


 次回は、品質管理-中国工場の品質がよくないのはなぜか(その1)です。

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