たかがWord、されどWord
2016-02-02
MOS資格などについて議論する以前に、Wordの利用状況はお寒いと感じています。公的機関や大会社で作成される長大な文書も、スタイル、クロスリファレンス(相互参照)程度の機能さえ使っていない例が沢山あります。
それ以前に、段落の始めを字下げするために全角スペースを手入力したり、自分で「・」(なかぐろ)を入力して箇条書きを書いたりしている人をよく見ます。こうして書いた箇条書きでは2行目以降のレイアウトが崩れてしまうため、自分で改行して行頭に全角スペースを入れていることもあります。手作業で行っているので、当然ながら、字下げしていない段落ができたり、箇条書きの内容が増減したことで、左右両端が揃っていない、ガタガタの箇条書きができたりすることがよくあります。
このような状況ですから、目次を手作業で作成して、それが当然と思っている人が多いという事実をお話ししても驚かれないでしょう。「ページ番号が狂うから、目次は最後に作成しよう」というベテランも少なからずいます。目次を自動生成しても明示的にフィールドの更新をしないといけませんが、この発言はそういう意味ではなく、本当に手作業でページを拾うということです。このような理解の下では文献リストの作成は困難で、索引となると夢のまた夢です。
活用できない5分間が定常的にあるのなら、それを活用するのに2時間かけるのは安い投資だということです。投資回収の観点から時間の使い方を考えれば、1日5分活用できるなら、投資の2時間は24日間で回収でき、25日目以降はプラスになります。
Wordの個々の機能を学ぶことには、2時間もかかりません。箇条書きやスタイルなどの基本的な機能だけでも身につければ業務を効率化できますし、文書の出来映えもよくなること請け合いです。
Wordに限ったことではありませんが、そもそもなぜ力業で済ませようとしてしまうのでしょうか。理由はケースバイケースでしょうが、ふたつはありそうです。ひとつめは、知っていることで対応するなら労力が見積もれるのに対して、新しいことを身につける労力が見積もれないためでしょう。つまり、リスクを取らないということです。
見積もりができない理由が、調べ方が分からないためだとすると、調べ方を調べるのが有効な対応となります。ソフトウェアに関して言えば、マイクロソフトOfficeに限らず、全般にマニュアルが分かりにくいので、なおさら有効な対策となるでしょう。
ふたつめは、一回限りの作業であれば、多少効率が悪くても知っている方法で対応した方が、新たに調べるよりも少ない労力で対応できると踏んでいるからで...
しょう。
しかし、仕事においては1回だけしかやらないことはあまりなく、多少形を変えて何度も似通った作業を行うことが多いと思います。「一回限りの作業」という前提が外れるならば、少し腰を据えて対応することも視野に入ります。
これらふたつは、いずれも局所最適な対応です。リスクを取らない、繰り返し行う作業だという前提を置かないので、今後の改善よりも目の前の対応を優先しています。その結果として、力業で済ませてしまうのでしょう。
かくして、Wordを使いこなしていない人が蔓延する状態が続いていきそうです。共同編集では成果物が大部になりがちなので、Wordの機能をきちんと使いたいところですが、変化を好まない人が多く、提案しても聞き入れてもらえないことがほとんどなのが残念です。