世界をリードするモノづくり中小企業の人づくり
2016-02-08
以前、東京国際フォーラムで東京理科大主催のパネルディスカッションが開催されました。テーマは「ニッチトップで世界をリードする日本のモノ作り企業」。株式会社浅沼技研と株式会社木村鋳造所の社長が行ったプレゼンの結論を一言でいえば、「中小企業の人づくり」となります。2社のトップは、それぞれ次のように断言しています。「安易な海外展開はせず、人を育てることが最優先である。」「不況でも、解雇するくらいなら会社を潰す。」その本気度が伝わってききました。つまり、モノづくり中小企業の人づくりノウハウのエッセンスが溢れる内容でした。偶然にも、筆者も20数年前から同様な具体案を、元の勤務先や支援先で提案していました。
浅沼技研は、アルミ鋳造に特化した事業を展開している約60名の企業です。素材にこだわり、0,3ミクロンの加工精度まで保証できる素材開発と計測技術力を保有しています。モノづくりの基本は、素材にありとのこだわりを持っています。社長自ら自由な社風を醸成し、自社での勉強会や大学院への派遣などを通じて人材育成を図ってきました。また、木村鋳造所は、木型を使わない鉄鋳物のフルモールド鋳造法に特化した約800名の企業です。木型鋳造を主体とした従来の職人主体の技能集団を捨て、フルモールド鋳造法という職人でも手に負えない技術にチャレンジしてきました。若者のIT技術と連携させた技術開発で、社員の若返りを図り、成長軌道に乗せてきました。
ニッチ分野で事業を成長させている両社の成功の秘訣を整理すると、次のようになります。図1は、それらを他の中小企業に展開する場合の施策を一般化したものです。
(1)従来から積み重ねた強みの技術・技能に加えて、大学等と連携し、若者を動機付けられる魅力的技術開発にチャレンジしていること。
(2)社長のリーダーシップの下、大学院等への留学も推奨し、社員の行動の自律化を促していること。
(3)自由闊達な社風を創出し、情報の視える化を図り、上司部下の区別なく意見を言い合えること。
図1. 中小企業の人づくりの方策
この文書は、 2015年12月24日の日刊工業新聞掲載記事を筆者により改変したものです。