BtoBの請負型製品開発の改善事例として、開発上流での取り組みや、全体最適となる取り組みについて解説しています。前回のその1に続いて解説します。
4. コア技術開発プロセスの効果
今回、取り組んだ改善では、まだ目に見える効果は出ていませんが、他社での取り組みでは、個々のモデル開発にかかる期間と工数を大幅に削減することや、製品ラインナップ全体の大幅な開発効率アップを実現することができました。
たとえば、ある複合機メーカーではコア技術開発プロセスを確立することによって、平均100人月かかっていた製品開発を平均48人月にすることができました。また、3つの主要顧客向けにそれぞれ約100人(合計300人)の技術者で年間3機種の開発を行っていたあるマルチメディア端末メーカーでは、開発機種数を減らすことなく全体の技術者を約200人にすることができました。
図69.コア技術開発プロセスの効果
5. コア技術開発プロセスの概要
それでは、コア技術開発プロセスの概要を紹介しましょう。主要なインプットとアウトプットを示した全体は次のようになります。技術コアは、もっとも重要なアウトプットなのですが、当たり前なので省略しています。
図70. コア技術開発プロセス
定期的にアップデートするテクノロジー・ロードマップの他に、他社動向や顧客動向などその時々の最新状況をもとに、これから開発する製品がどのようなユーザー環境下でどのような使われ方をするのかを分析し、要求・要件として整理します。さらに、その要求・要件を実現するために必要な機能要素を設計し、要求・要件(ユースケース)と機能要素の関係を分析して、コア技術となる共通部分と、モデル個別部分とを定義します。同時に個別製品も含めた全体開発計画を作成します。
全体開発計画には、自社開発ではなく協業開発にするなどの基本戦略、個別のモデル開発に先だって実施すべき先行開発の有無やその内容、実現する要件(ユースケース)の優先順位、開発の基本単位となるモジュールとその開発方針が含まれます。コア技術となる共通部分だけでなく、モデル個別の開発基本計画になっています。
コア技術開発プロセスの中の3つのサブプロセスについて解説すると長くなってしまうので、ここではポイントだけをお伝えしておきたいと思います。
テクノロジー・ロードマップ作成サブプロセス:ユニット(技術要素)ごとにテクノロジー・ロードマップを作成する。定期的なローリングをワークフローとして定義する。開発ロードマップの作成責任とフォーマットを明確にする。
ユースケース分析サブプロセス:要求と要件を分離し相互に関連づける。要件をその理由(要求)と製品群での共通性における観点で整理する。後工程担当と共同で要求・要件を分析する。要件ごとに非機能要件とワークフローの分析を行う。
システム設計サブプロセス:ユースケースとモジュールの関係から開発方針や優先順位を決める。計画におけるトレードオフの判断基準を作る。
6. コア技術開発プロセス確立の方法
コア技術開発プロセスを確立するには、ここで紹介した手法・技法をそのまま導入するのではなく、それぞれの組織に合った形にカスタマイズして導入することが大切です。その組織がもともと持っている強みをなくしてしまっては大きな効果を期待することができなくなるからです。
また、新しい手法・技法を早く定着させるには、タスクフォースや...