前回、設計段階でのコストテーブルの活用事例 その1に続き、今回のその2では、コストテーブル活用で、注意すべきことなど、事例を更に掘り下げます。設計段階で要求される目標原価の達成度の確認は、開発ステップによってその精度に違いがあります。具体的に述べますと、製品開発の基本設計段階では、製品企画段階より目標原価が設定されています。したがって、製品設計プロジェクトのメンバーは、製品の機能や品質を満たし、なおかつ目標原価で達成可能な製品の構造を考えることになります。このとき、各構成要素(あるいはユニット)レベルに目標原価を割付けて、その構成要素に割付けられた原価の範囲内に抑えるための検討をすることになります。つぎに、割付けられた原価に対する達成可能度を評価するうえで、次のコストテーブルの種類で紹介しているような、機能-方式コストテーブルや機能-構造コストテーブル、条件コストテーブル、生産方式コストテーブルなどを用います。
1.コストテーブルの種類
コストテーブルには、活用目的に応じて、様々なテーブルがあります。ここでは、もの作りをする上で、一般に活用されているコストテーブルを述べます。
(1)機能-方式コストテーブル
製品、ユニットや部品の機能を明らかにして、その機能を達成する手段(方式)ごとにコストとの関係をテーブル化したもの。
(2)機能-構造コストテーブル
製品、ユニットや部品の機能をその機能を達成する機構、構造ごとにコストとの関係テーブル化したもの。
(3)条件コストテーブル
製品、ユニットや部品に要求する品質特性や性能をコストテーブル化したもの。たとえば、コンデンサをコストと容量の関係でまとめたもの。
(4)生産方式コストテーブル
生産方式ごとに重量あたり、あるいは体積あたりに、コストテーブル化したもの。7ページに紹介したようなケース。
(5)材料仕様別コストテーブル
材料の材質、サイズ、グレード(等級)などごとに、コストテーブル化したもの。
(6)部品仕様別コストテーブル
部品の精度、仕上げの程度ごとに、コストテーブル化したもの。
(7)商品別コストテーブル
商品別コストテーブルは、図面を見て、工程設計をして、各コストセンターを意識することなく、加工費を求められるようにしたものです。例えば、設計部門で、開発段階に、精度はラフでよいから、どの方式や形状がどのくらい有利かを、金額で知りたいときや購買部門が、工場からの要求で大まかな見積り金額をすぐに知りたいときなどに活用できます。
2.詳細設計段階での原価割付け
詳細設計段階では、各構成要素(あるいはユニット)レベルを各部品レベルに原価を割付けます。部品の形状や寸法、公差といった部分とコストの検討になり、部品仕様別コストテーブルや材料仕様別コストテーブル、商品別コストテーブルなどを用います。
事例に紹介しました打合せでは、製品開発のステップが一通り終えて、試作機の製作まで進んでいました。そして、量産化までの期間と大きな投資額、目標原価の達成を考えて、基本設計の段階から見直しを図ろうとしているわけです。その際に生産方式別コストテーブルを用いて、生産体制に応じた鋳造方法と目標原価の関係を検討したわけです。
以上のようにコストテーブルを活用することができます。
3.コストテーブル活用で注意すべきこと
コストテーブル活用で注意すべきことは、使用する各種コストテーブルの整合性です。たとえば、部品の形状や寸法、精度などをもとに作成された部品仕様別コストテーブルと機能-構造別コストテーブルの間の関連性が取れているかということです。各種コストテーブルの間の整合性が取れていないと、製品の基本設計段階での機能-構造別コストテーブルでは目標原価を達成しているのに、詳細設計段階の部品仕様別コストテーブルでいくら検討を進めても、目標原価を達成で...
きないとなってしまい、コストテーブルの信頼性を損ねるようなことになってしまわないようにするためです。
したがって、コストテーブルは、工法別コスストテーブルから部品仕様別コストテーブル、部品仕様別コストテーブルから機能-構造別コストテーブルや機能-方式コストテーブルに積み上げて、集約していくことが大切です。そしてもうひとつ、コストテーブルを作成している会社で陥りやすいことがあります。
それは、過去の実績データを活用してコストテーブルを作成していることです。この場合には、実績データ相互の間に設備機械の違い、作業者の技能レベルの違い、管理レベルの違いなど多くの要因が混在しています。このようなコストテーブルを用いますと、求められたコストのバラツキが大きくなり、信頼性に疑問を生じることが出てきます。したがって、管理レベルや技能、技術レベルの水準などの要因について、基準あるいは標準値を設定したコストテーブルを用いることが大切です。