「経済性工学」とは、キーワードから、わかりやすく解説

 

1. 経済性工学とは

経済性工学とは複数の計画案を経済的に比較、評価する方法です。 経済的に有利な方策を探し、比較し、選択するための理論と技術の総称であり、採算計算や経済性分析などのいわば“損得計算”です。 発生コストの最小化だけでなく、機会損失の最小化をも含めて原価の極小化したり、製品価値を損なわずにコストを最小化させるVE/VA、技術の経済性を分析してその経済的有効性を判断する方法などが含まれす。 財務会計が過去、管理会計が現在の活動状況を表すのに対して、将来に向けた意思決定のための計算です。

2. 経済性工学の意味

企業価値(株価)や投資価値とは、将来のキャッシュ獲得能力であり、その現在価値を分析するのにDCF法が用いられます。DCF法とは、将来のキャッシュフローを時間とリスクを考慮した割引率で現在価値に換算して評価するものです。生産技術の世界では周知の事実ですが、設備投資のDCF実践手法としては経済性工学しかないと考えられます。企業の最終目的は、現金の正味増加額(儲け)の最大化であり、P/L利益や生産性指標は目的ではなく手段となります。

経済性工学とは、経済的に有利な方策を探し、比較し、選択するための理論と技術の総合されたものに対する呼び名であり、経営科学の1分野とされています。簡単にいうと、採算計算や経済性分析などの“損得計算”の意味です。財務会計が過去、管理会計が現在の活動状況を表すのに対して、経済性工学(損得計算)は、将来に向けた意思決定のための計算なのです。

3. 経済性工学の活用場面

経済性工学は、経済性の評価を行うあらゆる場面で活用できます。マーケティング部門では、商品の需要動向からどの商品をどこで投入したら儲かるか、値下げによって拡販すべきかなどの評価に使えます。購買部門では、購入資材の選定や購入量の決定、過剰在庫の処分方法、資材の先行手配の可否、倉庫の活用方法などきわめて多様です。製造部門では、内外製区分の判断、作業方法や工程不良率の低減、生産性の向上、設備の更新、段取替えの判断、安全性や環境対策などです。人事部門でも、総人件費の削減や教育費の効果算定などが避けられない状況となっています。最後に、技術部門の技術者や設計者には損得計算にうとい人が意外に大勢います。目先の改善に目を奪われては、大きな魚を逃がす可能性が高くなります。お客様のニーズと製品の製造コストの両者を把握して具現化するために、図面に表す役割をもつ技術部門の責任は大きいのです。

4. 経済性工学と技術者

経済性工学は、費用対効果、損得計算、意思決定のための経済性分析などとも表現されており、不確実性の時代には、技術者が成果を確かなものにするための差別化スキルとなることでしょう。一本釣りした研究開発テーマだけを計算しても意味がありません。いくつかの代替案を示し、どの案の利益が大きいかで判断するところに価値があります。さらに、不確実性が高い場合には、感度分析で条件を変えてみることで最適な意思決定に繋がります。


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