人的資源マネジメント:予測精度を高めるメトリクス基準モデル(その3)

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 メトリクスによる実践的進捗管理の仕組みは3つの仕組みで構成されているのですが、今回は「基準モデル」について解説します。基準モデルは見積もり作成のための数値モデルで、精度の高い見積もり、予測を実現するための手法です。前回のその2に続いて解説します。
 

6. リスクを見える化するシナリオ作成

 
 もうひとつの利用方法は完了予測です。図121「基準モデルによるシナリオ作成」は、開発がある程度進んだ段階で、開発完了までに必要となる工数を「ドリーム(楽観)」「ベース(基本)」「悪夢(悲観)」の3つのケースで予測したものです。どの程度の遅れを想定しておくべきなのかが明らかになるので、とくに新規開発の場合に有効な情報となります。
 
 図121「基準モデルによるシナリオ作成」は、この設計部署が従来にない大規模な開発を行うことを決めた際に作成したもので、構想・システム設計が完了したというプロジェクト・リーダーからの報告を受けて、基準モデルを使って開発完了を予測した事例です。
 
人的資源マネジメント図121. 基準モデルによる完了予測
 
 最初の工程である構想・システム設計工程が完了した時点で、実績工数を基準モデルと照らし合わせます。構想・システム設計完了の時点で機器設計や評価も進んでいるのですが、計画と比較して進捗確認するだけでなく、プロジェクト完了までの工数を予測します。予測を3つのシナリオとしてマネジャーに提供しているところがポイントです。とくに上位マネジメントからわかりやすいという声をもらっています。
 
 基準モデルから作成した計画では構想・システム設計は20人月かかるとなっているのですが、プロジェクト・リーダーからの構想・システム設計完了報告時点ではその実績工数 15人月です。
 
 最初のシナリオは、本当に計画よりも小さな工数で構想・システム設計を終えたと考えたものです。その後に続く各工程も同じ比率で短縮できると考え、総工数200人月と計画していたのが150人月ですむのでドリームシナリオとよびます。
 
 次のシナリオは、プロジェクト・リーダーは完了と報告しているものの、計画通りに構想・システム設計完了までにあと5人月、合計20人月かかるはずというものです。これは当初の計画通りですからベース・シナリオとよびます。この場合は、その後の機器設計や評価、不具合対応など工程ごとに計画と比較して進捗を確認することになります。
 
 最後は、基準モデルではなく失敗モデルの工数比率を使って見積もるというものです。この場合は過去の失敗からの見積もりですから、本当に構想・システム設計が完了しているとしても、その後の各工程にかかる工数を見積もると当初の計画よりも大きな工数になります。このプロジェクトの場合は300人月となりました。このシナリオは悪夢ケースとよんでいます。
 
 このように定量的な3つのシナリオで開発完...
 メトリクスによる実践的進捗管理の仕組みは3つの仕組みで構成されているのですが、今回は「基準モデル」について解説します。基準モデルは見積もり作成のための数値モデルで、精度の高い見積もり、予測を実現するための手法です。前回のその2に続いて解説します。
 

6. リスクを見える化するシナリオ作成

 
 もうひとつの利用方法は完了予測です。図121「基準モデルによるシナリオ作成」は、開発がある程度進んだ段階で、開発完了までに必要となる工数を「ドリーム(楽観)」「ベース(基本)」「悪夢(悲観)」の3つのケースで予測したものです。どの程度の遅れを想定しておくべきなのかが明らかになるので、とくに新規開発の場合に有効な情報となります。
 
 図121「基準モデルによるシナリオ作成」は、この設計部署が従来にない大規模な開発を行うことを決めた際に作成したもので、構想・システム設計が完了したというプロジェクト・リーダーからの報告を受けて、基準モデルを使って開発完了を予測した事例です。
 
人的資源マネジメント図121. 基準モデルによる完了予測
 
 最初の工程である構想・システム設計工程が完了した時点で、実績工数を基準モデルと照らし合わせます。構想・システム設計完了の時点で機器設計や評価も進んでいるのですが、計画と比較して進捗確認するだけでなく、プロジェクト完了までの工数を予測します。予測を3つのシナリオとしてマネジャーに提供しているところがポイントです。とくに上位マネジメントからわかりやすいという声をもらっています。
 
 基準モデルから作成した計画では構想・システム設計は20人月かかるとなっているのですが、プロジェクト・リーダーからの構想・システム設計完了報告時点ではその実績工数 15人月です。
 
 最初のシナリオは、本当に計画よりも小さな工数で構想・システム設計を終えたと考えたものです。その後に続く各工程も同じ比率で短縮できると考え、総工数200人月と計画していたのが150人月ですむのでドリームシナリオとよびます。
 
 次のシナリオは、プロジェクト・リーダーは完了と報告しているものの、計画通りに構想・システム設計完了までにあと5人月、合計20人月かかるはずというものです。これは当初の計画通りですからベース・シナリオとよびます。この場合は、その後の機器設計や評価、不具合対応など工程ごとに計画と比較して進捗を確認することになります。
 
 最後は、基準モデルではなく失敗モデルの工数比率を使って見積もるというものです。この場合は過去の失敗からの見積もりですから、本当に構想・システム設計が完了しているとしても、その後の各工程にかかる工数を見積もると当初の計画よりも大きな工数になります。このプロジェクトの場合は300人月となりました。このシナリオは悪夢ケースとよんでいます。
 
 このように定量的な3つのシナリオで開発完了までを示すことで、どのような対応が必要となるのかを具体的に想定することができます。
 
 以上、基準モデルの考え方や利用方法についてでしたが、いかがだったでしょうか。紹介している実践的メトリクス管理は、できるだけ手間をかけずに効果的なプロジェクト管理ができるところに特徴があるのですが、基準モデルも自分たちの実績をもとに帰納的に作成することで、手間をかけずに見積もり精度が高いものにすることができるところがメリットです。参考にしていただければと思います。
 

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この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

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