高齢者依存の鋳造プロセス標準化 作業分解事例 (その3)
2016-05-18
前回のその2に続いて解説します。鋳造業のC社は、従業員20名弱の平均年齢が50歳後半と高齢化が進展している中小企業です。また、同社は外国人研修生と定年再雇用の高齢従業員で事業を継続している状況で、事業推進の核となる若手社員も40歳後半の2名と高齢化が進展している状況でした。そのため、40歳の二代目社長から、『外国人と高齢者を活用し、事業を継続していくための環境作り』の依頼があり、支援を開始しました。
鋳造業は典型的な3K職場であり、日本人の若手社員の採用は難しいため、外国人を採用したり、外国人研修生を活用し事業を推進していくことが必要でした。しかし外国人研修生は、3年たてば帰国してしまうため、効率的かつ安全に鋳造作業に取り組んでもらうための作業の標準化が必要な状況でした。
一概に鋳造といっても、会社ごとに作業手順や作業内容に違いがあり、日本人若手社員にとっても今後事業を継続していくためには必要な状況でしたが、今までは高齢の熟練作業者が中心となり作業を推進していたため、日本人若手社員にも熟練ノウハウが伝承されていない状況でした。、そのため、作業マニュアルなども整備されておらず、熟練者の協力を得る必要がありましたが非協力的な熟練者が多く、最初は活動自体もうまく進みませんでした。
スムーズな協力を得られなかったため、本来熟練者から作業ノウハウを抽出するべきなのですが、まずは、40歳代の日本人若手社員を中心に、鋳造ノウハウを抽出し、それを比較的協力的な熟練者にみせて意見をもらい、不具合点を見直し整理(標準化)していくことにしました。作業内容が整理された段階で、作業動画や作業写真を撮影し作業分解した結果に貼り付け、C社版の鋳造作業マニュアルを完成することができました。
作業マニュアルを整備するに当たって、一番大変だったのが、熟練作業者の協力を取り付けることにありました。熟練作業者にしたら、定年はとうに過ぎてるし、何時でも辞めていいと考えている方が多く、技術や技能を伝承してしまうと自分の居場所がなくなると考えている方もいました。そもそも、技術・技能伝承などは必要ないといった考えが大半を占めていました。
そこで比較的協力的な熟練者に対して、技術・技能伝承を実施する趣旨を納得いくまで説明し、協力をとりつけることにしました。例えば、鋳物業を長く続けるためには、熟練作業者の支援・協力は不可欠であること、そのため高齢者の方々にも長く働いてもらいたいが体力は衰える一方であるため、今まで通りの仕事を続けてもらうのは難しい。そこで、外国人研修生や日本人若手社員などと作業を分担し、熟練作業者には付加価値の高い仕事に集中...
してもらうなど、外国人を含めた働く環境作りが重要ということを説明して、納得してもらうことが出来ました。
このように熟練者の協力を取り付けるには、技術・技能を伝承することでトラブルが減少したり、安心して作業を任せられるなどの熟練者視点に立ったメリットを説明し、納得してもらうことが特に重要となります。