中小製造業のウェブ戦略
2016-06-03
中小製造業がウェブサイトを立ち上げる際、その目的として「自社の信用力を高めるための会社概要的な役割」と考える経営者も少なくない。しかし、当社のクライアントの多くがウェブサイトの活用によって自社が抱える経営課題を解決することができており、経営戦略とウェブ戦略に整合性を持たせる、ということの重要性を痛感する。
具体的な事例をいくつか紹介する。ある精密板金加工業者は大口取引先の倒産により、売上が急減し「取引先の数を増やし1社当たりの売上依存度を減らし共倒れリスクを減らす」という経営課題を抱えていました。そこで試作板金の仕事で最もニーズの多い短納期案件に的を絞り多くの顧客を獲得しました。ウェブサイト開設3年後には売上の6割がウェブ経由で獲得した仕事となり、経営が安定しました。
次は、試作金型製造業者の事例です。同社は機械加工から金型製造まで幅広く事業展開してきた同社の経営課題は「利益率の向上」でした。そこで最も市場性がある「試作金型」という分野に特化したウェブサイトの構築を行い、狙い通りの利益率の高い仕事を多く獲得。1年後にはウェブ経由の売上効果により前年売上が3割増となりました。
三つ目の事例は表面処理(各種コーティング)業者です。多くの要素技術を持っている同社は経営課題として抱えていたのが「技術の用途開発」でした。そこで、メーカー側が用途を発想しやすいように技術寄りの言葉だけではなく機能や市場性などを分かりやすくコンテンツ化しウェブサイトに掲載しました。その結果、様々な業種のメーカーから開発パートナーになって欲しいという引合いを獲得することに成功しました。結果、眠っていた技術を幅広く展開する良いきっかけとなりました。
上...
記事例が語るように、ウェブ戦略は経営戦略に沿った目的を課すことで様々な経営課題解決につながる良い手段となることが分かっていただけると思います。単にウェブサイトを作るだけでなく、下図のように経営課題を意識したウェブ戦略を考えてみてはいかがだろうか。
この文書は、 2016年5月19日の日刊工業新聞掲載記事を筆者により改変したものです。