デザインによる知的資産経営:「ブランドづくり」(その2)
2016-09-12
前回のその1に続いて解説します。
この拒絶理由を覆すためには、出願商標が使用されていて、需要者の間に広く知られていることを、証拠を示して主張しなければなりません。ところが、「無印良品はブランドではない」という位置づけなので、商品のタグなどに表示されていません。特許庁が認めるような「使用の実績」がないのです。
西友の商標担当者は堤社長、そしてデザイナーの田中氏に掛け合い、「無印良品」を「タグ」に表示することの許可を得ました。ここで、二つ留意点があります。
(1)「『無印良品』はブランドではないのだから『商標』のように表示するな」という指示が徹底
していたこと。
(2)商標担当者が「商標登録」の重要性を理解し、社長に伝えて交渉したこと。
この結果、各種商品に商標として「無印良品」を表示し、ほとんど全分類で商標登録され、「小売り」分野では証拠の提出を要求されることなく、全分野、防護標章登録(第3211951号)されています。
拒絶理由通知を受けていたころ、「無印良品」は「ノーブランド商品」を意味する「普通の言葉」としては有名だったのです。1986年の弁理士試験の「商品学」において...
、「無印良品について説明せよ」という趣旨の問題が出題されており、いわゆる新語辞典にも掲載されていたと筆者は記憶しています。有名ではあるが「商標」(出所表示)としては有名でなかった。これを放置していたら、「無印良品」は誰もが使える名前になってしまい、今の「無印」の世界は築けなかったのではないかと思います。
次回のその3では、2、ブランドづくりから、解説します。