企業のCSRとクリーン化
2016-10-06
監査を活用したクリーン化技術の蓄積について、解説します。
ところが肝心の大手メーカーが検査基準を逸脱し続け、会社の信用を損ねたり信頼を裏切るような事例が最近目立ちます。取引先に厳しい要求をしながら、自社、或いは部門によっては監査対象外なのでしょうか。一般には内部品質監査の仕組みがあると思います。全体に見直して、仕組みに落ちが無いかの検証が必要です。
自社製品を良く見せようとルールを逸脱した結果、社会的な信頼を損ねるだけでなくお客様も逃し、仕事も減り、取引先の経営も圧迫してしまいます。中には倒産に追い込まれた企業もあります。企業倫理的な問題は繰り返し起き、その結果、取引先だけでなく我が身までも滅ぼすことになるのです。今や日本の企業は色々な面で危機に直面していると感じます。その危機意識が足りないか、感覚が麻痺しているのでしょう。また上層部と中間層、現場が遊離していると感じることもあります。
日本のものづくり体質強化のため、今一度、CSRや企業倫理、PL法(製造物責任法)などの面で見直しが必要です。どの会社もCSR活動は経営の中心に掲げていても、機能不全、または連動していないところもあるのです。“勝って兜の尾を締めよ”良い時ほど気を引き締めておきたいものです。乱れ始めると収拾がつかなくなります。
机上監査では、品質システム全般が確認されます。作業者の教育、訓練の仕組みやその記録なども監査の対象になります。現場監査では机上監査の内容が現場で確認されます。清掃関連をはじめとした現場の環境、作業方法、製品の保管、品質問題の対応など他多面的に見られます。ものづくり企業の品質問題はゴミ、異物起因が多いためクリーン化視点で観察されます。机上監査で指摘されたことに対策が取られると指摘が減ります。ところがボロが出るのが現場です。毎回指摘され改善や対策を取ってもまた出て来てしまいます。その場凌ぎではなく、日常的な改善の繰り返しによって不具合を減らす努力が大切です。
監査者の中にクリーン化に詳しい人がいれば、その視点で観察、厳しい指摘があるでしょう。また、品質の専門家がいれば、標準通りの仕事がされているか、品質問題発生時の原因究明の仕方はどうなっているのか。つまりトレーサビリティ(原因遡及容易性)が確立されているかなどを多面的に見られます。そして、管理部門が入っていれば、納期に関する確認がされるでしょう。工程に在庫の山があれば確認の対象です。“現場はその場に現れる”と書くように、多様な見方をされると沢山の指摘がされます。監査で指摘されたことは改善し、その証拠(エビデンス)を添えて報告します。改善前後の写真や標準変更などです。
ところが、報告してOKを貰うと安心してしまい、定着しないなど一過性に終わることが案外多いと思います。すると、次の監査や他社の監査でも同じ指摘がされるかもしれません。それではその企業の成長はありません。指摘されたことはきちんと改善、定着させ、次に指摘される前にどんどん改善していく。指摘されたからやるという後追いではなく、攻める姿勢が会社の成長に繋がります。現場は営業や管理、技術、品質部門などの思いが具現化されるところであり注目されています。目指す姿を描き自信と誇りを持って仕事が出来る環境にしたいです。
私も国内、海外の現場から事前監査に呼ばれたことが何回かありました。事前に問題を拾い改善することで当日の指摘項目を減らしたい。背景には良い工場を見てもらい仕事が続くようにとか、褒められたいという意識があるようです。それでも、対応事項が沢山ありすぎて当日までに間に合わないこともあり、結局、その場凌ぎということもよくありました。 事前監査そのものがその場凌ぎでもあります。こういう方法は定着しません、ボロが出るので良いとは思いませんが、多くの人の考えや知恵を集めることは有効です。どこでも同じことをやっているのなら自社でも当然やっておかないといけないのです。監査者としては会社全体が清々しく、そして、社員が生き生きしていると感じることで単に現場だけでなく、会社全体に良い印象を持つと思います。これも評価です。
現場監査では環境面などクリーン化の指摘は多々あります。“現場とは、その場に現れる”と書くと前述しましたが、問題が偶然発見されるのであって、いつもあるとは限りません。“昨日良かったので今日も良いはず”という認識でなく“状態が変化する”というこ...
とも意識する必要があります。
監査や纏めの会議にはクリーン化担当も参加させることです。質問対応だけでなく、クリーン化の情報を得る良い機会です。クリーン化技術は企業の競争力であり他社には開示しないのが普通です。門外不出と言われる所以ですが、監査の時は他社レベルの把握や考え方の取り込みが出来、ノウハウや指導が得られる場合があります。それらはクリーン化担当にとって貴重な情報源です。
幾つもの監査の受審から得られた情報は、聞きっ放しでなく蓄積とその活用です。それが企業体質の体質向上に繋がります。この継続と、スパイラルアップは企業存続のためには貴重で、手を抜いてはいけないのです。
監査対応がその場凌ぎの繰り返しでは、監査を何度行っても改善・定着が確認できず、やがて期待されなくなり信頼を損ねてしまいます。それが原因で受注が停止した例もあります。ものづくり企業は監査対応で更なる信頼を得て、監査結果から、企業の成長や基盤強化はどうすれば良いのか、今一度見直すきっかけにして、企業統治を万全にすることです。