掃除のおばさんの持つ貴重な情報
2016-10-07
二次更衣室からエアシャワーを通り、クリーン廊下に入ります。その後別なエアシャワーを浴びてクリーンルームに入るという経路です。この廊下で掃除をしているおばさんに会うと、邪魔にならない程度にご苦労様などと話しかけていました。するとそのおばさんが、この職場の入り口のクリーンマット(除塵マット)はこんなゴミが多いとか、ここの職場の管理職はクリーンマットの汚れを見ながら時々剥いでいる。
あるいは、クリーンマットの汚れを指摘しても、私の職場ではないと無視されたとか、実にたくさんの情報を持っていました。或いは、エアシャワーを浴びずに通過する人がいるとか、エアシャワーは何のためにあるのか聞かれたり、ここにあるはずのないこんなゴミがあるなど、日頃から興味を持って、集めていたんですね。いつか誰かに見せたいと思って保管していたとのことです。それらを貰って観察してみると、確かに異常なゴミであったり、そのおばさんの推測はこうだというのを聞くと、感心することばかりでした。
普段掃除しているだけのおばさんかと思うと、自分の仕事にも興味を持ってやっているのだということが分かりました。単なる掃除ではなく立派な仕事なんですね。日頃から私たちは掃除している傍を急いで通過し、折角集めたごみを散らかしてしまったり、除去する前にその上を歩いてしまったりと、無関心な行動をしていることもありました。意地悪をしていた訳ではないのですが、意識が足りないのです。
“捨てればゴミ、分ければ資源”という言葉がありますが、まさにその通りで、拾い集めて区分けし良く観察してみると、様々なゴミが含まれているのに気が付きます。これらはクリーン化担当にとっての貴重な情報です。現場を良く観察するきっかけになります。
もしかしてこのゴミとあの作業は繋がっているのか、あの作業はこの繊維状のゴミの発生原因かなどと色々な推測が出来ます。それを一つ一つ裏付けを取って行けば真因に近づきます。良くそこまで推測して原因究明したねとか、あのゴミを退治したことでこの工程の歩留まりが向上したよ、などと上司に褒められたこともありましたが、実は背景に掃除のおばさんの存在、情報源の存在があったということです。この掃除のおばさんには感心しました。
クリーンルームの中の掃除も40年近く前は業者に入って貰っていたのですが、集塵ホースなどの掃除用具をひっかけて製品を落下させてしまい、廃棄になってしまうことが時々ありました。その頃から自分たちの職場は自分たちで掃除するように変更されました。多くの企業でも同じだと思います。
ある外注さんに行きましたら、廊下が埃だらけで人が歩くだけでも埃が舞い上がるところがありました。これでは作業エリアにもこの汚れが入ってしまうことは容易に推測できるので、そのことを指摘し掃除をするよう促しました。
暫くしてその外注さんに行ったところ、女性の、やはりおばさんという感じの方が廊下をモップで掃除していました。モップはびっしょり濡れていました。会社の管理職に聞いたところ、前回の訪問時掃除をするよう言われたので近所のおばさんを頼んだ。午前と午後の2回来てモップで拭いて帰るとのことです。掃除を依頼しただけでやり方などは特に指示していなかったのです。やったらどう変化したのか、埃は減ったのかは確認していないということでした。
これでは、滑って転ぶこともあります。腰や頭を打つような事故が起きるかも知れない。労働災害になりますと言って、きちんとポイントを指導するように言ってきました。言われたからやったという回答がありましたが、自分の会社への愛着が感じられずがっかりしました。何をしたのか、その結果どうなったのかも確認せず、費用...
は支払っていると言われると、その経営者には寂しさを感じます。作業者は作業するだけだと言わんばかりでした。
たかが掃除、されど掃除ですね。その一つにも思いを入れたいのです。特に中小企業の中には、業者に掃除を委託しているところもあるかも知れませんが、こういうこともきちんと指導して欲しいものです。厳しいことを言うと嫌がられるかもしれませんが、清掃はどうして必要なのか、安全はどう確保するかということも重要なことです。
頼んでやらせておけば良いというだけでは、掃除費用を払って効果が出ないということにもなります。前述のように、掃除のおばさんでも考えながら清掃をし、情報を沢山持っている人もいます。その情報も貴重ですし、清掃も工夫してくれますので綺麗になります。上手く活用したいですね。