設計部門の仕組み改革(その1)

【設計部門の仕組み改革 連載目次】

 前回まで、「擦り合わせ型」と「組み合わせ型」の視点から開発体制や開発マネジメントについて解説してきました。今回からは、システムやツールの導入を伴う設計部門の仕組み改革の進め方について考察したいと思います。

 製造部門における設備投資は、設備稼働によって得られる効果を比較的予想しやすいため、生産設備の投資判断はわかりやすい面があります。製品のマーケットや需要の予測が間違っていないという前提のもとでの話です。しかし、設計部門では、設計者という「人」がもっとも影響の大きなリソースであることや、設計業務はブラックボックスである傾向が強いこと、それに、大きな設備投資に慣れていないことなども絡んで、投資効果の判断は比較的難しい面があります。個別には様々な事情があり十把一絡げに扱うことはできませんから、あくまでも傾向としてです。

 このような傾向からだと思いますが、設計部門でのシステムやツールなどの設備投資を伴う仕組み改革(構築)は、理想追求型のアプローチとなることが多いようです。これは、システムやツールがどのような機能を提供し、それによって、設計部門の業務がどのように変わるのか、その理想像で判断するアプローチです。コストや期間、実現性なども判断材料にはなりますが、基本的に、ベンダーが提供するあるべき姿(理想像)の魅力度によって、どのシステムやツールを採用するのかを決めます。

 一方で、課題解決型アプローチがあります。現状の業務実態を明らかにした上でどのような課題を抱えているのかを分析し、その課題を解決するための具体的な方策をリストアップし、それぞれの費用対効果にもとづいて投資判断を行うアプローチです。システムやツールも、費用対効果の大きさによって選択することになります。しかし、課題解決型アプローチを採っているケースは稀のようです。現状分析を行うという場合でも、その実態は、理想追求型アプローチでシステムベンダーやコンサルティング会社を決めた後で、決まったシステムやツールを運...
用するための現状調査になっている場合がほとんどです。設計部門にとっては数年に1度の大規模設備投資であり、測定器やサーバーの購入や、定型業務自動化のための CAD 導入とは違い、設計業務全体の仕組み構築を行うのですから、計画作成(プランニング)が非常に重要なステップとなります。理想追求型アプローチでは少々心許ないと言わざるをえないでしょう。

 次回は、現在地点の確認とゴールまでのルート選択について解説します。
 
 
◆関連解説『技術マネジメントとは』

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