設計部門と組織政治の影響(その2)
2017-01-17
設計部門の仕組み構築に関係するシニアマネジャーをリストアップして、その立場(賛成か反対)を把握します。設計部門の仕組み構築ですが、関係するのは設計部門のマネジャーだけではないことに注意してください。投資や購入金額が大きいため、経理部門や購買部門のチェックが厳しくなることや、事業部長やその上の副社長や社長も直接かかわってくる可能性があります。それぞれの立場でどのように課題を認識し、仕組み構築に対する投資とその効果についてどのように考えているのか、そして、誰が賛成の立場となってくれるのかを把握しておく必要があります。
仕組み構築の対象となる設計部門からの賛同を得ることは当然のことですし、製造部門は設計部門と密接な関係にありますから、仕組み構築においても賛同してもらうことが大切です。これら開発現場の中心人物があからさまに反対の立場をとることになると、開発現場全体が仕組み構築に反対することにもなりかねません。したがって、開発現場の実質的なリーダーが誰なのか、そして、それぞれどのような考え方の持ち主なのかを把握する必要があります。
事業部が中期的にどのようなイベントを予定しているのかを把握します。今後の製品開発プラン、新しい設計拠点や製造拠点の計画、他社との協業予定、新規市場開拓の必要性、そして、役員やシニアマネジャーの退任などの今後の予定などは、その予定の確度も含めて情報収集しておく必要があります。設計部門の仕組み構築なのですから、事業部のビジネスプランやビジネス状況に影響を受けることになります。
システムやツールの導入に協力してもらうことを決めたベンダーやインテグレーターについては、関係している製品のロードマップや今後の開発、販売計画を十分に説明してもらう必要があります。また、ベンダーやインテグレーター自身の今後のビジネスプランについてもできるだけ把握しておく必要があります。システム化計画を作成している過程で確認できていると思いますが、バージョンアップなどの予定時期など含めて、具体的なことまで十分にコミュニケーションしておきたいところです。
仕組み構築を行うプロジェクトに参加するメンバーはおおよその目処がついていると思いますので、プロジェクトメンバーについて、仕事内容やキャリアについての希望、ライフプランなどをある程度把握しておく必要があります。プロジェクトメンバーとのコミュニケーションは非常に重要ですから、できるだけ早い時期から話をする機会を作ることが大切です。
上記1のような観点で情報収集やコミュニケーションを行うと、仕組み構築に影響する可能性がある懸案事項が明らかになります。それらについて、どのような対応が可能なのかを検討し、仕組み構築の実施スケジュールに反映させます。
たとえば、仕組み構築を推進している役員の退任時期が明確になっているときは、その役員に替わって強力に支援してくれる役員がいなければ、このプロジェクトは視界不良な状態に陥ってしまうでしょう。推進者である役員が在籍している間にその意志を引き継ぐ役員に目処をつけ、たとえば、改革委員会のような会議体を設けて事前にプロジェクトに参画してもらう計画にする必要があります。現実には、このような単純なことでさえも、適切な対応を計画しているケースは多くはありません。多くの組織で次のようなことが起きています。
設計部門を見ている役員の危機感から仕組み構築の検討がはじまり、その役員は責任者を決めてプロジェクトを任せたことで、もう大丈夫だろうと判断してしまう。その責任者は、推進者である役員の...
退任後のことはこの役員が考えてくれているだろうと思いこみ、仕組み構築やシステム化の実務で頭は一杯になってしまう。そして、トップの間での実質的な引き継ぎが行われないまま、その役員の退任時期を迎えてしまい、その後プロジェクトは自然消滅してしまう。
このようなことがないように、リストアップした政治的要因については、スケジュール作成の際に一つひとつ、その心配が現実になるときにとるべき対応を考えておくことが大切です。登山ルートが決まった後には、天候やチームメンバーの状態、スポンサーの期待など様々なことを考慮して日程を具体化することが、登山をはじめる前の最後の詰めです。