設計部門と組織政治の影響(その2)

更新日

投稿日

 

1. 政治的要因のリストアップ

 
 R&D設計部門と組織政治の影響を考察する際に、最初にやるべきことは政治的要因のリストアップです。自分の力ではコントロールするのが困難だけれども、起こりうる事柄をリストアップします。次に示すカテゴリーごとに考えるとリストアップが容易でしょう。
 

・社内のシニアマネジャー

 
 設計部門の仕組み構築に関係するシニアマネジャーをリストアップして、その立場(賛成か反対)を把握します。設計部門の仕組み構築ですが、関係するのは設計部門のマネジャーだけではないことに注意してください。投資や購入金額が大きいため、経理部門や購買部門のチェックが厳しくなることや、事業部長やその上の副社長や社長も直接かかわってくる可能性があります。それぞれの立場でどのように課題を認識し、仕組み構築に対する投資とその効果についてどのように考えているのか、そして、誰が賛成の立場となってくれるのかを把握しておく必要があります。
 

・直接影響を受ける現場のリーダー

 
 仕組み構築の対象となる設計部門からの賛同を得ることは当然のことですし、製造部門は設計部門と密接な関係にありますから、仕組み構築においても賛同してもらうことが大切です。これら開発現場の中心人物があからさまに反対の立場をとることになると、開発現場全体が仕組み構築に反対することにもなりかねません。したがって、開発現場の実質的なリーダーが誰なのか、そして、それぞれどのような考え方の持ち主なのかを把握する必要があります。
 

・事業部の中期計画

 
 事業部が中期的にどのようなイベントを予定しているのかを把握します。今後の製品開発プラン、新しい設計拠点や製造拠点の計画、他社との協業予定、新規市場開拓の必要性、そして、役員やシニアマネジャーの退任などの今後の予定などは、その予定の確度も含めて情報収集しておく必要があります。設計部門の仕組み構築なのですから、事業部のビジネスプランやビジネス状況に影響を受けることになります。
 

・仕組み構築のパートナー

 
 システムやツールの導入に協力してもらうことを決めたベンダーやインテグレーターについては、関係している製品のロードマップや今後の開発、販売計画を十分に説明してもらう必要があります。また、ベンダーやインテグレーター自身の今後のビジネスプランについてもできるだけ把握しておく必要があります。システム化計画を作成している過程で確認できていると思いますが、バージョンアップなどの予定時期など含めて、具体的なことまで十分にコミュニケーションしておきたいところです。
 

・プロジェクトメンバー

 
 仕組み構築を行うプロジェクトに参加するメンバーはおおよその目処がついていると思いますので、プロジェクトメンバーについて、仕事内容やキャリアについての希望、ライフプランなどをある程度把握しておく必要があります。プロジェクトメンバーとのコミュニケーションは非常に重要ですから、できるだけ早い時期から話をする機会を作ることが大切です。
 

2. 登山をはじめる前の最後の詰め

 
 上記1のような観点で情報収集やコミュニケーションを行うと、仕組み構築に影響する可能性がある懸案事項が明らかになります。それらについて、どのような対応が可能なのかを検討し、仕組み構築の実施スケジュールに反映させます。
 
 たとえば、仕組み構築を推進している役員の退任時期が明確になっているときは、その役員に替わって強力に支援してくれる役員がいなければ、このプロジェクトは視界不良な状態に陥ってしまうでしょう。推進者である役員が在籍している間にその意志を引き継ぐ役員に目処をつけ、たとえば、改革委員会のような会議体を設けて事前にプロジェクトに参画してもらう計画にする必要があります。現実には、このような単純なことでさえも、適切な対応を計画しているケースは多くはありません。多くの組織で次のようなことが起きています。
 
 設計部門を見ている役員の危機感から仕組み構築の検討がはじまり、その役員は責任者を決めてプロジェクトを任せたことで、もう大丈夫だろうと判断してしまう。その責任者は、推進者である役員の...
 

1. 政治的要因のリストアップ

 
 R&D設計部門と組織政治の影響を考察する際に、最初にやるべきことは政治的要因のリストアップです。自分の力ではコントロールするのが困難だけれども、起こりうる事柄をリストアップします。次に示すカテゴリーごとに考えるとリストアップが容易でしょう。
 

・社内のシニアマネジャー

 
 設計部門の仕組み構築に関係するシニアマネジャーをリストアップして、その立場(賛成か反対)を把握します。設計部門の仕組み構築ですが、関係するのは設計部門のマネジャーだけではないことに注意してください。投資や購入金額が大きいため、経理部門や購買部門のチェックが厳しくなることや、事業部長やその上の副社長や社長も直接かかわってくる可能性があります。それぞれの立場でどのように課題を認識し、仕組み構築に対する投資とその効果についてどのように考えているのか、そして、誰が賛成の立場となってくれるのかを把握しておく必要があります。
 

・直接影響を受ける現場のリーダー

 
 仕組み構築の対象となる設計部門からの賛同を得ることは当然のことですし、製造部門は設計部門と密接な関係にありますから、仕組み構築においても賛同してもらうことが大切です。これら開発現場の中心人物があからさまに反対の立場をとることになると、開発現場全体が仕組み構築に反対することにもなりかねません。したがって、開発現場の実質的なリーダーが誰なのか、そして、それぞれどのような考え方の持ち主なのかを把握する必要があります。
 

・事業部の中期計画

 
 事業部が中期的にどのようなイベントを予定しているのかを把握します。今後の製品開発プラン、新しい設計拠点や製造拠点の計画、他社との協業予定、新規市場開拓の必要性、そして、役員やシニアマネジャーの退任などの今後の予定などは、その予定の確度も含めて情報収集しておく必要があります。設計部門の仕組み構築なのですから、事業部のビジネスプランやビジネス状況に影響を受けることになります。
 

・仕組み構築のパートナー

 
 システムやツールの導入に協力してもらうことを決めたベンダーやインテグレーターについては、関係している製品のロードマップや今後の開発、販売計画を十分に説明してもらう必要があります。また、ベンダーやインテグレーター自身の今後のビジネスプランについてもできるだけ把握しておく必要があります。システム化計画を作成している過程で確認できていると思いますが、バージョンアップなどの予定時期など含めて、具体的なことまで十分にコミュニケーションしておきたいところです。
 

・プロジェクトメンバー

 
 仕組み構築を行うプロジェクトに参加するメンバーはおおよその目処がついていると思いますので、プロジェクトメンバーについて、仕事内容やキャリアについての希望、ライフプランなどをある程度把握しておく必要があります。プロジェクトメンバーとのコミュニケーションは非常に重要ですから、できるだけ早い時期から話をする機会を作ることが大切です。
 

2. 登山をはじめる前の最後の詰め

 
 上記1のような観点で情報収集やコミュニケーションを行うと、仕組み構築に影響する可能性がある懸案事項が明らかになります。それらについて、どのような対応が可能なのかを検討し、仕組み構築の実施スケジュールに反映させます。
 
 たとえば、仕組み構築を推進している役員の退任時期が明確になっているときは、その役員に替わって強力に支援してくれる役員がいなければ、このプロジェクトは視界不良な状態に陥ってしまうでしょう。推進者である役員が在籍している間にその意志を引き継ぐ役員に目処をつけ、たとえば、改革委員会のような会議体を設けて事前にプロジェクトに参画してもらう計画にする必要があります。現実には、このような単純なことでさえも、適切な対応を計画しているケースは多くはありません。多くの組織で次のようなことが起きています。
 
 設計部門を見ている役員の危機感から仕組み構築の検討がはじまり、その役員は責任者を決めてプロジェクトを任せたことで、もう大丈夫だろうと判断してしまう。その責任者は、推進者である役員の退任後のことはこの役員が考えてくれているだろうと思いこみ、仕組み構築やシステム化の実務で頭は一杯になってしまう。そして、トップの間での実質的な引き継ぎが行われないまま、その役員の退任時期を迎えてしまい、その後プロジェクトは自然消滅してしまう。
 
 このようなことがないように、リストアップした政治的要因については、スケジュール作成の際に一つひとつ、その心配が現実になるときにとるべき対応を考えておくことが大切です。登山ルートが決まった後には、天候やチームメンバーの状態、スポンサーの期待など様々なことを考慮して日程を具体化することが、登山をはじめる前の最後の詰めです。
 
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

石橋 良造

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!

組織のしくみと個人の意識を同時に改革・改善することで、パフォーマンス・エクセレンスを追求し、実現する開発組織に変えます!


「技術マネジメント総合」の他のキーワード解説記事

もっと見る
体感で思考する 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その162)

    これまで五感を一つ一つとりあげ、それぞれの感覚のイノベーション創出における意義と、そこに向けての強化の方法について解説して...

    これまで五感を一つ一つとりあげ、それぞれの感覚のイノベーション創出における意義と、そこに向けての強化の方法について解説して...


魅力的なアイディアは簡単に潰さない 新規事業・新商品を生み出す技術戦略(その24)

         今回は「魅力的なアイディアは簡単に潰さない」というテーマで記事を進めます。ブレイ...

         今回は「魅力的なアイディアは簡単に潰さない」というテーマで記事を進めます。ブレイ...


体感で思考する 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その163)

    これまで五感を一つ一つとりあげ、それぞれの感覚のイノベーション創出における意義と、そこに向けての強化の方法について解説してきました。...

    これまで五感を一つ一つとりあげ、それぞれの感覚のイノベーション創出における意義と、そこに向けての強化の方法について解説してきました。...


「技術マネジメント総合」の活用事例

もっと見る
ソフトウェア開発の成果物による進捗管理 プロジェクト管理の仕組み (その16)

 前回は、計画時の見積もり精度を上げるための基準モデルと、進捗を見える化するための基本ツールである基本メトリクスセットのひとつ、作業成果物メトリクスについ...

 前回は、計画時の見積もり精度を上げるための基準モデルと、進捗を見える化するための基本ツールである基本メトリクスセットのひとつ、作業成果物メトリクスについ...


追求するのは擦り合わせ能力を活かすマネジメント(その2)

 前回のその1に続いて解説します。それでは、まず「調整」の仕組みについて考えたいと思います。最初に質問です。調整の仕組みが欠如した製品開発はどのような状態...

 前回のその1に続いて解説します。それでは、まず「調整」の仕組みについて考えたいと思います。最初に質問です。調整の仕組みが欠如した製品開発はどのような状態...


富士フィルムにおけるコア技術の活用戦略

 本業であるフィルム事業がなくなることを経験した、富士フィルムの技術の棚卸活動は注目に値します。アスタリフトや液晶用フィルムは、フィルム事業で培ったコア技...

 本業であるフィルム事業がなくなることを経験した、富士フィルムの技術の棚卸活動は注目に値します。アスタリフトや液晶用フィルムは、フィルム事業で培ったコア技...