REACH規制:新環境経営(その11)
2017-03-07
新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、環境マネジメント/有害物質管理について紹介しています。前回ではRohs指令について解説しましたが、今回はREACH規制です。
EU市場における輸入者が欧州化学物質庁へ申請・登録を行うことになりますが、実質はEU市場に輸出する日本の企業が、現地の輸入業者を特定又は設立し、その業者に対して、申請・登録に必要なデータを提供することによって、初めて生産品の輸出が可能になります。
REACH規制で管理される化学物質は、2007年当時は3万点余りが対象ですが、実際に以下は様に順次追加されるステップを踏んでいます。欧州化学物質庁は、2008年10月28日に15物質を発表、続いて、2010年1月13日に15物質、2010年6月18日に8物質、2010年12月3日に8物質、2011年5月31日に7物質、2011年12月19日に20物質、2012年6月18日に13物質、2012年12月19日に54物質が追加され、本稿編集時では、SVHC物質は計138物質となっています。
物質名は、ジクロロコバルト、重クロム酸ニナトリウムニ水和物、五酸化ニヒ素、三酸化ニヒ素、ひ酸水素鉛、ひ酸トリエチル等々、一般の人にはなじみのない名称の化学物質です。これを受けて、日本では、株式会社:エコエンジェル等が、追加される化学物質の分析データ提供サービスを行っています。
欧州化学物質庁に申請された物質の認可は、より安全な代替技術への切り替えが困難で、かつ、産業活動上使用が不可避な場合にのみ下ることになっています。さらに、この認可を受けるためには、別物質への代替化検討の計画書の提出が求められます。
日本の化審法が、新しく製造・輸入される化学物質を規制するのに対し、REACHは、既存の化学物質についても、改めて新規物質と同等のデータの段階的な登録を求めています。これにより、新規物質と既存物質の区別をなくし、新規物質参入の機会を増大させ、より安全な物質と技術への代替の促進を図ることを狙っています。
事前届出(登録...
)のないものは製造や輸入ができなくなるという側面は、日本や米国との違いがありませんが、既存物質についてもあらためて新規物質と同等のデータを求めていることが新しいでしょう。
REACHの仕組みでは、REACH-ITへの登録が必要となり、世界で初めてITが必要不可欠な法律となっています。欧州当局は化学品管理のITシステムに多大な経済的・人的リソースを割いています。REACHが求めている化学安全に関わる情報の透明性と説明責任のために必要な多種多様なツール(ITツールも含む)は、当局負担で広く一般に無償で公開されています。
今回で有害物質管理についての紹介を終了し、次回からエネルギーマネジメントについて解説します。